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【WORLD】ウィニングパットの恐怖

Golf World(2012年2月13日号) GW voice

実際にプロゴルファーが試合を締めくくる様子を見た人は、ゴルフというスポーツを構成する要素が、恐ろしいまでに小さいことに気が付くだろう。小さなボール、長いシャフトの先に不釣り合いなものが付いた道具、縮こまったホール。中でも最も小さなものは、「誤差の許容範囲」だ。

ストレスが、自然に見えていたことを台無しにした時、プロゴルファーですら「何でも出来るのではないか」という恐ろしい考えを抱くがことがある。だからこそ、先日のフェニックス(ウェストマネジメント フェニックスオープン)でのスペンサー・レビンや、トーリー・パインズ(ファーマーズ・インシュランスオープン)でのカイル・スタンリーのように、日曜日にすべてが崩壊して優勝を逃してしまうことだってある。理性のある人は、どうしてそんなことが起きたのかではなく、どうしてもっと頻繁に起きないのかを疑問に思うべきだ。

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ゴルフトーナメントを美しく締めくくることは、あらゆるスポーツの中で、最も難しいことのひとつだ。ミスター・クラッチの異名を執るジェリー・ウェストも、それにつよく同調する。NBAの殿堂入りを果たしているレジェンドは2007年に「比較するものがないくらい」と言う。「ゴルフは戦いの中の戦いだ。特に、最後に最も大きなプレッシャーがかかるんだから。タイガー・ウッズは今まで見たアスリートの中で最も目を見張るべき存在だ。彼がプレッシャーの下で見せる度胸は、桁外れだからね」。

PGAツアーのイベントにおいて、3日目までの54ホールで首位、あるいは首位タイだった52トーナメントのうち、48勝を記録しているウッズは、この条件下で通算92パーセントという平均勝率を誇る。これは歴代最高記録だ。1980年以来、PGAツアーは記録を保存しているが、全プレーヤーのこの平均勝率は40パーセントをやや上回るだけだ。首位のまま締めくくれる能力が、他のプレーヤーに対する最大のアドバンテージかと尋ねられたウッズは、「おそらくね」と答えている。

だが、スタンリーやレビンのように、ウッズですら、1996年のクワッド・シティ・クラシックでは、3ラウンドでリードしながらも、エド・フィオリに逆転勝利を許してしまったこともある。また、PGAツアーのイベントではない場所で、最近2度、同じような状況にありながら優勝を逃している。直近では、先月のアブダビだ。ウッズにとっても、リードを保ったまま優勝することは諸矢の刃なのだ。

ジェイ・ハースは、プレーヤーとして、父として、この事実を知り尽くしている。「(息子の)ビルが初めてツアーで優勝した時、72番ホールでしっかりボールを打てるか確信が持てなかった、という話をしていた」と息子の談話を語った。「だから、言ったんだ。“そういうものだ”って。自分の肩に誰の腕がついているのか分からないような時ですら、フェアウェイやグリーンにボールを運ばないといけない」。

レビンはまだ学んでいる最中だ。緊張にまみれていたこの愛煙家は、内省的でありオープンであるが故、興味深く共感の持てる存在になっている。残念ながら、彼の特性は日曜日の熱気に最適なタイプではなかったようだ。「なんだか、ホールを本当に早くさっさと終わらせてしまいたいって感じがしたんだ」と、気落ちした27歳は、ウェストマネジメントの試合後の会見で認めた。「早く終わらせようって急ぎすぎたんだ」。

レビンは仲間たちの姿を参考にするといい。そこには、崩壊から学ぶことがたくさんあるという証拠がある。昨年、ウッズは1997年以来続けてきたような、ツアーの公式ストロークプレーで第3ラウンドでのリードを持っていた44回のトーナメントのうち22回に優勝したという勝率を上げることはできなかった。ロリー・マキロイはマスターズで大乱調となったが、全米オープンでは完全優勝した。長らく最終ラウンドでもろさを見せていたダレン・クラークは、ロイヤル・セント・ジョージズで行われた全英オープンで優勝した。ルーク・ドナルドがPGAツアー年間最優秀選手となったのは、より強い精神力を身につけたからに違いない。

そして、フェニックスでスタンリーがそれを成し遂げた(注:カイル・スタンリーはファーマーズ・インシュランスオープンで最終日に逆転負けした翌週、ウェストマネジメント フェニックスオープンでスペンサー・レビンを最終日に逆転しツアー初優勝を飾った)。無口であることを選ぶクリント・イーストウッドのように、ただ目を細める子供がそこにいた。

それでも、レビンがリードを失い、24歳のスタンリーがリードを奪った後ですら、その後のプレーはスタンリーにとって容易いものではなかった。72番ホールでの最大の使命は、18フィートを2パットで決めることだったが、この時彼の腕は、文字通り、誰か別の人物の腕が肩に付いているような状態となり、ボールを3フィート11インチオーバーさせてしまった。その前週(ファーマーズ・インシュランスオープン)には、(最終ホールで)3フィート8インチを沈めていれば勝っていたのだが。

パットに戻った時、スタンリーが何を考えていたのか、誰もわからない。だが、ホールが小さく見えたことは間違いない。彼は何かを学んだ。しかしレッスンはこれから先も続く。

リードを保ったまま、逃げ切って優勝をすることに関して言えば、「できる時もあるが、できない時もある」という事実を受け入れるのが最良の方法のようだ。タイガーですら、それを知っている。

米国ゴルフダイジェスト社提携
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