「難しいコースは私に有利」 申ジエの永久シード獲得を生んだ日本女子オープンと悪天候
◇国内女子メジャー◇日本女子オープンゴルフ選手権 最終日(4日)◇宝塚ゴルフ倶楽部旧コース(兵庫)◇6185yd(パー70)◇雨(観衆8539人)
プレーオフ3ホール目、4.5mのバーディパットが決まると、申ジエ(韓国)は脱力し、パターを足元に落とした。両手を握り、体を極限までのけぞらせ、天を仰いだ。「私はうれしくて泣く意味がずっとわからなかったです。でも、やっとわかりました」。2008年、12年のメジャー「全英女子オープン」を含む米ツアー10勝、韓国ツアー21勝、過去の日本ツアー29勝…。世界中で60勝以上もしているのに、勝って初めて泣いた。38歳の勝負師が我を忘れた。
昨年5月の国内メジャー「サロンパスカップ」で永久シードの30勝にリーチをかけた。次の1勝は「近いと思っていたのに、こんなに長くかかるとは思わなかった」。何度もチャンスはあったが、ダメだった。それが31試合目に勝てた。なぜ“国内最高峰大会”の「日本女子オープン」だったのか―。
「ずっと獲りたい大会でした。難しいコースは私には有利と思っていた」。周りが苦労するセッティングでもスコアをまとめる自信がある。おまけにこの日は雨。快晴続きだった前日までの3日間がウソのようなコンディションも「悪い天気の方がいい」という申には追い風だった。年間ポイントランク50位までのシードでなく、30位までしか出られないナショナルオープンに、体力面から年間出場試合数を絞る38歳が今大会は出場者中最長タイの15年連続出場を果たした。完全に狙って、史上初の国内メジャー4冠との快挙を射止めた。
最終日は執念がほとばしった。「今一番輝いている桑木選手と回りたかった」と望み通り最終組で「ゴルフというより勝負がしたかった」と2サムの真っ向対決に挑んだ。奪った5バーディだけでなく、6mのパーパットを沈めた16番(パー3)など何度もガッツポーズを見せた。仏のような顔つきと裏腹に要所で見せた鋭い眼光。サンデーバックナインでは3打あったビハインドを3バーディで追いついた。
「桑木さんはとても強かった。勝つにはバーディをとらないとダメと思ったし、私自身、バーディで終わらせたかった」。最後のパットでは「チャンスだ。大丈夫。入る、入る」と自分を励ました。
自分一人ではたどり着けなかった。「感謝の気持ちが一番大きいです。今ここにいられることを感謝したい。支えてくださっている人に感謝したい」。勝負の鬼はライフワークの一つを達成して、いつもの優しい素顔を取り戻した。(兵庫県宝塚市/加藤裕一)
<申ジエの日本ツアー30勝>
2008年/ミズノクラシック、09年/マスターズGCレディス、10年/サイバーエージェントレディス、14年/ニチレイレディス、meijiカップ、ニトリレディス、マンシングウェア東海クラシック、15年/サイバーエージェントレディス、ニチレイレディス、☆ツアー選手権、16年/ほけんの窓口レディス、ニチレイレディス、三菱電機レディス、17年/ニトリレディス、大王製紙エリエールレディス、18年/☆サロンパスカップ、ゴルフ5レディス、☆日本女子プロ選手権、☆ツアー選手権、19年/スタジオアリス女子オープン、フジサンケイレディス、アース・モンダミンカップ、20年/富士通レディス、TOTOジャパンクラシック、21年/ニチレイレディス、大東建託・いい部屋ネットレディス、23年/ダイキンオーキッドレディス、アース・モンダミンカップ、25年/☆サロンパスカップ、26年/☆日本女子オープン
※☆は国内メジャー。日本ツアー単年登録前の08年「ヨコハマタイヤPRGRカップ」、米ツアーメンバー資格で出場の10年「ミズノクラシック」は除く