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【WORLD】怖かった優勝インタビュー S.グスタフソン〈1〉

Golf World(2012年1月30日号)texted by Ron Sirak

人が前に進むことを邪魔したり、人を孤独に追いやる壁には、目に見えるものもある。しかし、輝かしい笑顔や、会話が始まらないように立ち去りながらも愛想よく手を振る姿の裏に隠れているバリア(壁)は、より気付きづらいものだ。

彼女はシャイなのか、それとも無礼なのか。これをどう解釈するかは、ソフィー・グスタフソンに出会った人それぞれの寛大さによるだろう。ソフィーは38年間、事実上“言葉のない世界”の中に囚われている。才能あるゴルファーで、キレのいいウィットを持つ聡明なグスタフソンだが、彼女は吃音(どもること)があまりに強く、一つのセンテンスが止まることなく続くことがほとんどないため、その個性を人々と共有することができなかった。

プロアスリートとして20年、この間にはメディア対応やファン交流など重要な仕事の一部もあったが、グスタフソンは、ボブ・ディランの歌う“マギーズ・ファーム”に登場する労働者のような生活をしていた。「私の心を狂わせる考えで、頭がいっぱいになってしまった」。ただ立ち去ってしまうことを何度も考えたが、一体、何ができるだろう?この吃音症が何をさせてくれるだろう?

身長178センチのグスタフソンは、コース上で数々の成功を収めてきた。彼女にとってのヒーローである亡きセベ・バレステロスのようにコースを攻め抜き、LPGAツアーで通算5勝、3度プレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いた欧州女子ツアー14勝を含め、プロトーナメントで28勝を手にしてきた。

しかしながら数々の勝利を挙げてきた彼女だが、本来ならばもっと勝っていてもいいくらいだ。「トーナメントの最後になると、なぜか悪くなるんです」と語るのは、スウェーデン代表チームで元コーチを務め、1989年からグスタフソンを知るピア・ニールソンだ。「優勝スピーチに対する怖さが、ラウンドを邪魔するのか?と聞いたことがあるんです。彼女の答えは“ノー、ノー、ノー”。でも、ある日、ソフィーが“もしかしたら、それが一つの原因かもしれない”と言ってきました。とにかく、優勝するのが怖かったんです」。

ニールソンはグスタフソンに、優勝した場合、誰かが代わりに読めるコメントを書くように勧めた。2000年にチック・フィル・A・チャリティ・チャンピオンシップで、LPGAツアーの突破口となる最初の勝利を手にした時、ナンシー・ロペスが彼女のコメントを代弁した。ロペスが読み上げる前に、ソフィーは1分ほどの時間をかけて「ありがとう」と言った。だが時が経っても、この仕事だけは易しいものとはならなかった。

ところがだ。アイルランドで開催されたソルハイムカップに先駆けた昨年9月、グスタフソンは腹をくくり、初めてテレビ・インタビューを受けた。ゴルフチャンネルのカメラの前に座り、自分の吃音について話したのだ。この収録映像は大会期間中に放送され、反響は絶大なものだった。

「吃音を持つ子どもを持つ親御さんから、ようやく共感できるスポーツ界の“ヒーロー”ができたっていうメッセージをもらったわ」と、グスタフソンはEメールを介したGolf Worldの取材に答えた。「ソルハイムカップの後で私が書いたブログに対する(読者の)コメントを見たら、自分の息子について本当に素敵なことを書いている女性がいたの。本当に素敵だったの。子供たちにこういったインパクトをもっと与えられるようにしたいわ」。

グスタフソンは(ソルハイムカップの)会場となったキリーン・キャッスルで4勝0敗とし、ヨーロッパ代表のリードに大きく貢献した。ソフィーの見事なまでのプレーを、ゴルフチャンネルのインタビューと直接結びつけて考える人もいた。もう、誰もが知っている。もう、隠すものは何もない。

「吃音のことを知ってもらうのはソフィーにとって大きかったわ」とニールソンは言う。「それに対する恐怖がいつもあって、彼女の自己評価や自信を妨害していた。(良い成績を収めた場合などには)どれだけ話をしなければならないか知っていたから、それがいつもフラストレーションになっていたの」。

グスタフソンが障害を公にしたことは、驚くべきことではない。彼女は断固たる意思を持った女性で、注目を集める場所では幾度となくその意思が必要とされていた。当時LPGAツアーのコミッショナーで、PGAツアーのエグゼクティブ・バイスプレジデントに就任したタイ・ボウトウとの恋愛関係が明らかになった時は、仲間のプレーヤーから手厳しく批判された。2人は結婚したが、後に離婚している。彼女は自分を守るために、親友以外には、たいてい無言を貫いていた。

また、2003年「サムソン・ワールドチャンピオンシップ」の最終ラウンドのグリーンでは、パットをソールした後で、ボールが動いたと糾弾されることがあった。彼女はそれを否定して、ペナルティは科されなかったが、NBCやGolf Worldはこの判定に疑問を投げかけた。この日「64」で回ったグスタフソンは5打差を挽回し、最終的にはベス・ダニエルとレイチェル・テスキに2打差をつけて優勝した。

中には、グスタフソンとボウトウの関係を指摘して、彼女に有利な処遇になったと言う人もいたが、ここでも彼女は簡単に話すことができず、多くの人がグスタフソン側の言い分を聞くことは難しかった。この後、2009年の「CVSファーマシー LPGAチャレンジ」で優勝を果たすまで6年間を要したが、この間に海外では何度も勝利を手に入れていたのだ。

そして、今度はボウトウの後にLPGAコミッショナーに就任したキャロライン・ビベンスとの争いだ。理事会にビベンスは解任されるべきだという手紙を書いた後、グスタフソンにとってツアーでの生活はさらに心地悪いものとなった。ビベンスは、後にプレーヤー側の反抗で解任されている。

「(2006年に)就任してから4カ月経ったところで、彼女がツアーに対してしようとしていることが分かったから、理事会に解任するように手紙を書いたの」とグスタフソンは言う。「ビベンスが立ち会う理事会で、その手紙は公表された。言うまでもなく、その後、私は歓迎されなかったわ。私が彼女を問題視したのは、多くのスポンサーに対する彼女の態度なの。タフなことだったし、時間が長く掛かりすぎたけど(2009年に)彼女を解任できたことには満足しているわ」。

米国ゴルフダイジェスト社提携
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