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【WORLD】不可思議な現象の“扱い方”

Golf World(2012年9月10日号)voices texted by Roland Merullo

ノースダコタ州にあるメドラで今夏、私は偶然にもゴルフエンターテイナーである、ジョーイOのパフォーマンスを見る機会を得た。彼はウォームアップの際、ナロースタンスで、全く力みのない、そしていとも簡単に見えるフォームでボールを次から次へと空高く飛ばしていた。同じフォームを完璧に維持したままで…。

ショーが始まると、メディシンボールの上に乗った状態で、美しいドライブを打つトリックショットを成功させ、2球を同時にスライス、フックでの打ち分けに成功。サンドウェッジでの一振りで5つのボールを打ち、いずれも軽くスイングしているだけに見えるのにも関わらず、空高くに飛ばしてみせる。ライトカラーの髪、小柄な体格、時折見せる小粋なジョークと共に観客にアピールし、更に多くの喝采を集めた。

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ジョーイはコメディアンであり、曲芸師。それでもゴルフに関心の無い観客からはあまり高く評価されていないように感じた。ショーでは、彼の腰と同じくらい高い位置にティーが設置され、右打ちの彼はクラブを逆に持ち替え、左打つが打つようにボールをヒット。打たれたボールは、完璧な軌道と共に250ヤード飛び、再び夜空に吸い込まれていった。

非常に感銘を受けた私は、“読みやすい厚さ”の彼の著書『Effortless Golf』を購入した。そしてその場で翌日の朝食の約束を取りつけた。朝食を食べながら、彼は高校時代にハンディキャップ2だったこと、今ではゴルフをプレーしないということを教えてくれた。「私はエンターテイナーですから」と語った彼は、自らのパフォーマンスの秘訣がメンタルにあると明かした。

確かに、ゴルフではメンタル面が非常に重要だ。だが、私の目には、彼が100万人に1人の逸材であるように思えてならなかった。彼のようなスイングが出来れば良いと、他のゴルファー達は羨むに違いない、と。しかし、ジョーイの哲学を聞いて、再び私はハッとさせられたのだ。「思い出してみてください、ゴルフとは楽しいものじゃないですか。『楽しい』と思うことがメンタルに繋がるわけです」。

それから2日後のことだった。ある友人から、ボストン近郊のクラブで行われたトーナメントに出場したというメールが私のもとに届いた。彼は残り2ホールとして2ダウンの場面で非常に早いグリーンという条件下で6メートル弱、そして9メートル弱のパットを続けて決め、チームを勝利に導いた。その一日が彼と、試合の様子を見ていた彼の妻、そして家族にとって特別な瞬間となった理由が興味深い。その日はその夫婦の間に生まれた息子が“生きていれば”21歳になっていた日だった。息子さんは5ヶ月の時に他界していた。

単なる偶然かもしれない。しかし、この友人に起こった出来事を聞いて、私はゴルフにおける、中々理解されないメンタル面、つまり、幽霊や不可思議なものが作り出す現象を考えさせられた。その数週間後、アーニー・エルスは18番ホールで素晴らしいパットを決めて「全英オープン」を制し、その数週間後にはキーガン・ブラッドリーがファイヤーストーンCCで行われた「WGCブリヂストンインビテーショナル」で、最終18番の逆転優勝を果たした。ここで忘れられないのは、2008年の「全米オープン」で、ロコ・メディエイトとのプレーオフを制し優勝したタイガー・ウッズのことだ。右に傾斜しているラインを完璧に読んだタイガーのプレーオフを決めるパットを見たコメンテーター数人が、意図してやったことかどうかに驚愕した場面だ。

こうした場面を人は「運任せ」と呼ぶのだろう。理解不能で、証明するのが極めて困難な事象のことを、そう呼ぶのだ。まるでマジックのように思えてしまう“領域”での出来事のことを指すのだろうが、同時にゴルフをプレーしたことがある人であれば、ミステリアスで、理解し難く、通常考えられないこと、スイングコーチでは絶対に指導出来ないようなことが起こるというのも理解してもらえると思う。

ジョーイは著書の中で次のように進言している。「美しいスイングを手に入れる為には、まずメンタルのよりどころを持つこと」。確かにそうだろう。だが、毎日14時間の練習無しでは、右利き用のクラブを逆に持ち替えて、5打連続して250ヤードも飛ばすことは出来ない。ジョーイも練習の重要性を本で説いており、「練習場に多く足を運ぶことは、賢明な方法と言える」としている。

昨今のゴルフは、全てを科学的に分析し、角度やスイングスピード、スピン量も正確に分析されている。パー、或いは3パットで終わった時の統計を重要視するなど、データは確かに勝つためには必要で、大事なことだろう。しかし、ジョーイOのような人物のフィールドでは、正確性というのは問われない。意思の強さ、集中力、そしてプレーに向かう姿勢の影響力が全ての局面に問われているのだから。そしてこれらの事柄は、ゴルフという競技が存在する以上、常に証明不可能な謎として捉えられるのだと、思うのだ。

米国ゴルフダイジェスト社提携
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