パティ・タバタナキット<プロフィール>
2022年 LPGAメディヒール選手権
期間:10/06〜10/09 場所:レイクマースドGC(カリフォルニア州)
<LPGA選手名鑑>パワーの源と意外な趣味 パティ・タバタナキット
7月の「スコットランド女子オープン」で2日目にもかかわらず涙を流した選手がいましたのをご存知でしょうか。タイのパティ・タバタナキット選手は今季、不振にあえぎ、4月以来の予選通過を決めて思わずうれし泣きしてしまいました。近年、活躍目覚ましいタイ勢を引っ張るヒロインはツアーでも屈指のロングヒッター。コース内外の様子をご紹介します。
■バンコクからUCLAに
パティ・タバタナキット Patty Tavatanakit
◆生年月日 1999年10月11日
◆出身 タイ・バンコク
◆ルーキーイヤー 2020年
故郷バンコクのインターナショナルスクールを卒業した後、タバタナキット選手は米カリフォルニア州のUCLAに入学し、チームを率いる存在になりました。オールアメリカンに2回選出され、2018年の「全米女子オープン」では5位に入ってローアマチュアに。優勝したアリヤ・ジュタヌガン選手とともにタイ勢がプロ・アマでタイトルを獲得しました。
2019年に米下部シメトラツアー(現エプソンツアー)に参戦すると3勝を挙げ、平均スコアは全体トップの「69.382」を記録してルーキー・オブ・ザ・イヤーに。翌年のLPGAツアー昇格を決めました。
1年目こそ賞金ランキング92位とシードを確保するのがやっとでしたが、2年目の21年に一気に才能が開花。メジャー「ANAインスピレーション」(現シェブロン選手権)でツアー初勝利を飾りました。「東京五輪」で来日もし(23位)、レギュラーツアーでもルーキーイヤー・オブ・ザ・イヤーを勝ち取ります。
■ビジョン54
ジェニファー・ソン選手、男子のカーティス・ラック(オーストラリア)選手らと同じスイングコーチのグランド・ウェイト氏に師事する一方、日本のゴルフファンにもなじみ深い2人がメンタルの先生。宮里藍さんらを指導したピア・ニールソンとリン・マリオットによる「ビジョン54」のメソッド習得に取り組んでいます。
練習場でのウォームアップではBTT (バランス・テンポ・テンション)を整えることを重視します。片足立ちでボールを打って地面からの力加減を理解したり、片手打ちでクラブリリースやクラブヘッドを感じたり。普段はウェッジ中心にこのドリルをやるのですが、ときにはドライバーで行うときもあります。その日の体調や感覚を把握することで、ドライバーをフルスイングで打たなくてもコントロールしやすくなるそうです。
現在は拠点をロサンゼルスからフロリダ州オーランドに拠点を移し、かつてタイガー・ウッズも住んでいたアイルワースで練習。ボーイフレンドの男子プロ、アンディ・チャン(中国)らとオフのトレーニングなどを一緒にします。同じメニューをこなすそうで、一時は100kgのダンベルを上げられるようになったと言います。
スイングテンポはゆっくりにもかかわらず、高い弾道で飛距離が出るパワーの持ち主。かつ、アプローチも手首を柔らかく使えることから引き出しを多く持っている選手と言えます。
■意外な趣味
近年活躍が目覚ましいタイ出身選手の中でも、ツアー会場ではひとりの時間を大切にするタイプですが、笹生優花選手とはジュニア時代から一緒の試合に出場していたため仲良しです。今年の「ゲインブリッジLPGA」では初日、2日目に同組になり、ずっと笑って楽しそうにプレーしていました。ラウンド後のインタビューでは「優花が話していたことを思い出して、アドレスで笑いそうになったシーンが何回かあった」とか。
ちなみに昨年は「バンク・オブ・ホープLPGAマッチプレー」で対戦した畑岡奈紗選手が、タバタナキット選手のウィークグリップを見て、真似をしたところ調子が上向いたというエピソードもありました。
思い起こせばルーキーイヤーの2020年は新型コロナ禍が始まったところで、精神的にかなり参っていました。ゴルフとトレーニングの毎日を過ごす中、気を紛らわせてくれたのがなんと書道でした。新しい趣味を開拓し、ボーイフレンド宛に筆で手紙を書いたりしたそうです。
片平光紀(かたひら・みつき) プロフィール
1989年、神奈川県生まれ。中学卒業後に単身渡米しジュニアアカデミーで腕を磨いた後、デイトナ州立大に進学。2011年に設立された世界女子アマチュアランキングで1位に立った。卒業後に米女子ツアーの予選会を通過してレギュラーツアーおよび下部ツアーでプレー。親指の故障を原因に2015年に現役を退き、米ゴルフチャンネルでリポーターに転身した。