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<選手名鑑205>ダスティン・ジョンソン(前編)

■ 超絶ドライブでツアーを席巻

今週のブリヂストン招待にダスティン・ジョンソン(31)はメジャーチャンピオンとして初出場することになる。約1万人のゴルファーが挑戦する全米オープンで遂に頂点に立ったジョンソンは、07年PGAツアー初登場以来、193cm、86kgの体躯を生かしたパワフルなスイングと飛距離で、ファンを魅了し続けてきた。ジョンソンは07年、PGAツアーに2試合に出場し、平均318ydでいきなりランク1位に。ただ、その年はまだメンバーでなかったのでランク対象外だった。

本格参戦した翌08年は、309ydでランク4位。以降09年から11年まで3年連続3位。12年は4位と1つランクを落としたが13年は2位、14年も2位、15年で再び1位に返り咲いた。デビュー以来、すべての年で4位以内。5月のザ・プレーヤーズ選手権の初日もパー5で372ydのモンスタードライブを見せた。彼が1Wを手にすれば「ショータイム」の合図で、ド迫力ショットにギャラリーは悶絶状態だ。

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■ バーディ、イーグル物語

飛距離を生かしたイーグルのエピソードもたくさんある。ルーキーシーズンの08年、初優勝を飾ったターニングストーン・リゾート選手権の最終日、17番パー4で328yd飛ばし、2打目をウェッジで寄せてバーディ。最終18番のパー5では、1Wで357yd飛ばし256ydの2打目をハイブリッドでグリーンオーバー。パワーでコースをねじ伏せるプレーは圧巻だ。

09年のマスターズでも連続イーグルの記録を樹立した。最終日13番パー5、14番パー4で連続イーグルを達成した(連続イーグルは1982年のダン・ポール以来2人目)。昨年のマスターズでは1ラウンドで3イーグルの記録も打ち立てた。2011年10月のドイツバンク選手権最終日には、自身の最長飛距離を記録。7番パー5のティショットは463ydで同年の最長飛距離になった。

■ ツアーのベスト・アスリート

ジョンソンは1984年6月22日、サウスカロライナ州の州都コロンビアで生まれた。恵まれた体格を生かしアマチュアの頃から“飛ばし屋”で有名だった。母方の祖父アート・ウィシュナントは、サウスカロライナ大学のバスケットボールチームで全米選抜、同州スポーツの殿堂入り選手だった。その後ロサンゼルス・レイカーズにドラフトで入団。父スコットは、高校時代フットボールのワイドレシーバーとして活躍した。その後、ゴルフに転向し、ミッドカロライナGCのクラブプロになった。

そのDNAを受け継いだのか、ジョンソンもリトルリーグで投手とショートとして活躍。中学まではバスケットボールの選手としても才能を発揮し“D.J.”の愛称で大声援を受ける主力選手だった。当時のコーチは「鹿のように軽やかに走り、カンガルーのように軽快にジャンプしていた」と身体能力に脱帽。手のひらが大きく、バスケットボールを片手でつかむことができ、今も空中で360度1回転してのダンクシュートも得意技だ。コースタル・カロライナ大学ではゴルフ部に入部し、パワーを生かした超アグレッシブなプレーで活躍した。彼が颯爽(早足)とフェアウェイを歩く姿は、地上最速動物「チーター」に似ていると新しいニックネームもついた。

■ スキーで心身をメイクオーバー

ジョンソンの驚異の身体能力に、フィジカルトレーナーのジョーイ・ディオビサルビは「プールでターンすればマイケル・フェルプスのよう。バスケットをすればNBAのガードのごとく。自転車に乗ればプロのスプリンター、ウエイトを挙げる姿も五輪選手のように美しいフォーム。トライアスロンに参加できるほどの総合力だ」と驚いた。「ここまでのプロゴルファーを指導したのは初めて。彼はマルチスポーツのアスリート」と評価し、指導が楽しくて仕方のない様子だった。さらに肉体改造しようと、栄養学の専門家の指導で食生活を変え、約5.5kg減量し、同等の筋肉に代えた。

最近では、心身に効果絶大だとコロラド州アスペンに、頻繁にスキーに出かけている。アスペンは、夏は避暑地、冬はスキーと米国有数のリゾート地。あまりの絶景にジャスティン・レナードらは、生まれ育ったテキサス州から一家で転居したほどだ。ジョンソンはフロリダ州にプライベート島がある豪邸を構えたが、オフはほとんどスキー旅行へ出掛けている。昨年12月は第1週からスキー、新年初戦のヒュンダイトーナメントofチャンピオンズをプレー後に度々スキーに出掛けた。1月末のファーマーズインシュランスオープンからようやくツアーに本格復帰した。猛特訓でスキーのハンディは、ゴルフに例えるなら“2”あたりまで上達したそうだ。94年3月にフィル・ミケルソンがスキー事故で左大腿部と右足首を骨折するという選手生命を危惧するほどの重傷を負い、以降ミケルソンはスキーを封印した。ジョンソンもケガにはくれぐれも注意してもらいたいと思う。

■ 世界選手権の勝利で弾みを

29回目のメジャー挑戦で分厚い壁を突破し、ジョンソンは次のチャプターに突入した。今週の世界選手権ブリヂストン招待はメジャー勝者としての自信と誇りを胸に新次元のプレーを見せてくれるはずだ。コースはメジャー級の難度、参加選手も世界のトップランカーが勢揃いし、全英オープン、全米プロ選手権への最高のチューンナップにもなる。すでにジョンソンは世界選手権で2勝。最初の優勝は2013年11月に中国で開催されたHSBC選手権だった。最終日『66』でイアン・ポルターを逆転し、通算24アンダーの大会新記録で飾った。2勝目は昨年3月のキャデラック選手権。5打差のJ.B.ホームズを逆転する劇的優勝で、同年6月の全米オープンでの優勝争いへとつなげていた。今週の会場ファイヤーストーンCCは、全長が長く、ロングヒッターに有利なコース。ジョンソンの次なる躍動が楽しみでならない。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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2016年 WGCブリヂストン招待



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