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<選手名鑑175>パットン・キザイア

■ 結婚式で夢のシーズンをスタート

パットン・キザイア(29)は、15年シーズンのPGAツアーの下部ウェブドットコムツアーの賞金王となり、今季から昇格を果たしたルーキー。身長196センチ、体重97キロと堂々たる体格だ。PGAツアーでのプレーを目標にミニツアーで揉まれ、ようやく到達した夢舞台。だが、なぜか彼は開幕戦を欠場したのだった。賞金王戴冠でシード権を獲得し、出場の優先順位は最高位に立つ。来季のシード権に向け少しでも多くの試合に参加し、ポイント獲得を目指すと思われたが、偶然にも以前から予定していた挙式日と重なってしまったからだった。

キザイアは数年前からPGAツアーで活躍するハドソン・スワッフォードハリス・イングリッシュらとジュニア時代から親しかった。彼らはジョージア大学出身で、卒業後は同州のシー・アイランドを拠点にしていた。キジールは出身地アラバマ州のオバーン大学を卒業後08年にプロ転向。ミニツアーを転戦していたが、なかなか目が出ず4年後の2012年に彼らの近所へ転居した。この引っ越しが彼の人生を大きく変えることになった。

その一つが妻となるカリー・ホジドンとの出会いだった。仲間と集ったアトランタでの大晦日パーティーでのこと。ジョージア大学出身で、イングリッシュの友人でもあったカリーも出席。彼女はシー・アイランド在住で、多くの選手と交流がありプロゴルファーの生活に対する知識や理解があった。「成功できるか否か不安なミニツアー時代、万が一を考え副業の準備をする選手が多い中、自分を信じ、思いを貫けたのは彼女の励ましがあったから」と振り返る。交際とともに成績も向上、下部ツアーで頭角を現しプロポーズした。挙式日を決めた時はPGAツアーに昇格し開幕戦と重なることは想定外で嬉しい誤算だった。開幕戦欠場は残念だったが、愛する彼女との人生のスタートはキザイアにとって、もっと大きな意味を持ち、今後のプレーに絶大な影響を与えることだろう。

■ ゴルフ・リッチな環境で急成長

シー・アイランドへの転居はキザイアのゴルフも変えた。同地には多くの著名選手が拠点を置いている。ライダーカップの米国主将デービス・ラブIIIを中心に、今年の全英オープン勝者で07年のマスターズ勝者のザック・ジョンソン、WGCマッチプレーの勝者マット・クーチャー、若手のブライアン・ハーマンやイングリッシュらは、ジョークで“シー・アイランド・マフィア”と言われるほど結束が固く、同地開催の大会を家族ぐるみでサポートし盛り上げている。キザイアのエージェント拠点も同地にあり、何かと便利がよく、スムースな選手生活を再スタートした。

ラブIIIとはこれまで10回以上一も一緒にプレーし、多くのことを学んだ。クーチャーの絶対にあきらめない粘りのプレーも目の当たりにした。7月にはジョンソンが全英オープン優勝で持ち帰ったクラレットジャグにも触れ、トロフィーと記念撮影も。先輩たちの姿をながめ、刺激を受け、生活習慣、考え方などを真似るうち、キザイアは大きく成長していた。

昨年10月、地元開催のマックグラッドリークラシックに推薦出場を果たし、初日「66」でトップに1打差発進と大健闘した。54位に終わったが、PGAツアー3回目の出場で初の予選通過。キザイアの成長を見守ってきたラブは「弱点が少ない選手。またジョーダン・スピースらのように年齢以上に成熟している。彼は身体が大きく高身長でパワーもあり、才能で何でも簡単にできてしまうと思われがちだが、それは違う。ひたむきな努力で忍耐強く粘る精神力、それを積み重ね、培って得た自信が彼のゴルフを支えている」と語った。キジールは技術的な向上だけでは足りず停滞ムードだったが、憧れの選手たちとの交流というゴルフリッチな環境で一気に開花した。

■ ボスと感激の同日優勝!大躍進の15年シーズン

15年シーズンのウェブドットコムツアーは、ラブIIIの予言通りになった。22試合に参加し2勝、2位2回、3位1回、トップ10は昨季最多の11回と2位以下を圧倒し、序盤から初優勝の雰囲気が漂わせた。3試合目の出場となった3月のカリバナ選手権で4位に入ると、4月のメキシコ選手権で2位。5月のレックスホスピタルでは、最終日に「66」をマークして首位のカイル・トンプソンに追いつくパフォーマンスを見せた。残念ながらプレーオフで敗れて2位となったが、優勝は近くなったと感じた。6月ラスト・オレアムオープンでも3位タイとなり毎月優勝争いを繰り返すようになった。翌7月に、ついに念願の初優勝を飾る。ユタ・クラシック最終日、通算19アンダーでプレーオフに持ち込まれたが、2ホール目にバーディを奪って逃げ切り、勝負強さを見せつけた。2日目29-33=62は、同ツアー最少スコアのタイ記録だった。

初優勝から3週間後のセンティネルでは、最終日「66」の好スコアをマークして、通算20アンダーで逆転し2勝目。ラブからキザイアに祝福メールが届いた。実はラブも同日のウィンダム選手権で7年ぶりの優勝を飾った直後だった。ラブの51歳での勝利は、ボスの貫録を若手たちに大いに示し、キザイアも更なる刺激を受けた。

キザイアは長身を生かし、ジュニア時代から191cmのラブや、アーニー・エルスの映像を参考にして練習を重ね、ダイナミックかつスムースなスイングはその成果といえる。身体が大きくパワーがあるが、余裕の振りが安定感の秘訣。それでも15年レギュラーシーズン最後のポートランド・オープン終了時点での平均飛距離は304.3ヤードでランク37位。平均パット数1位、バーディ奪取率1位、平均ストローク1位と、パワーに加えショートゲームの巧さも抜群、今季のプレーも大いに期待できる選手だ。

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佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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