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<選手名鑑168>ダニー・ウィレット

■ Go! Danny Boy! 世界で旋風を巻き起こすウィレット

世界選手権(以下WGC)ブリヂストン・インビテーショナルは、出場条件が限定され、フィールドも約75人と厳選。出場資格は昨年のライダーカップ出場選手、世界ランク50位以内、世界各ツアー指定試合の優勝者。たとえ前年の優勝者でも資格がなければ出場することはできない厳しい条件だ。“WGC”の名の通り、現在の世界トップレベルの選手から最強を決めるビッグイベントである。

オールスター勢ぞろいのフィールドで全員が注目選手なのだが、その中からイングランドのダニー・ウィレット(27)をピックアップしよう。今季欧州ツアー2勝、4月の「WGCキャデラックマッチプレー」3位、先月の「全英オープン」6位タイと大躍進。「全英オープン」ではギャラリーが名曲“Danny Boy”を歌いながら、大声援を送るなど脚光を浴び、実力も地名度も急上昇中だ。

■ 放牧の羊やヤギに囲まれ培ったゴルフの技

ウィレットは1987年10月3日、イングランド中北部サウスヨークシャーの出身。父は英国教会の聖職者、母は数学の教師で3人兄弟の末っ子として生まれた。穏やかな環境の中でゴルフに親しみ、幼い頃によくプレーしていたのは、ウェールズ北西に位置するアングルシー島のパー3のコースだった。この地域のゴルフ場でプレーを覚えたことが、彼を逞しくしていったのだと思う。島の東側は砂浜、北側は断崖で、気候は全体的に温暖ではあるが、湾岸の風により天候が変わる。設置されている多くの風力発電のタービンから、いかに風が強いかがうかがえる。

ゴルフ場の中には羊やヤギの放牧地と隣接し、時に群れの中でのプレーになることも。羊たちも毎日のことと心得ているのか、ゴルファーが来るとサッと脇に寄り、フェアウェイを空けてくれ、思わず「ありがとう」と言ってしまったこともあった。フェアウェイは羊の群れが度々歩くので微妙な凹凸ができ、芝のコンディションも良い訳ではなく、良いショットを打つだけではスコアに結びつかないのだ。彼のゴルフの礎は、コースレーティングにはない動物たちや強風などの条件にももまれ、築き上げられたのだと思う。ワイルドな環境で腕を磨き、英国のカレッジに進学。しかし、わずか1ヶ月で退学し、17歳で米国アラバマ州にあるジャクソンビル・ステート大学に留学し、2年を過ごした。この留学で彼のゴルフは一気に覚醒したのだった。

■ 強敵マキロイを撃破!全英アマ優勝、世界アマランク1位へ

米国での生活、練習環境で大きくスキルアップした。その自信をひっさげ、07年に母国のアマチュア最高峰の試合である「全英アマチュア選手権」に出場した。開催地ロイヤル・セント・ジョージGCで待っていたのは、英国最強アマだったロリー・マキロイとの対面だった。マキロイと対決したウィレットは、最初の6ホールで5バーディを奪う猛攻で、マキロイを圧倒。2&1で勝利して決勝進出を果たした。その決勝戦では、マシュー・クライアーを3&2で下し、初優勝を飾ったのだ。マキロイとは同年開催のアマチュアの対抗戦「ウォーカーカップ」でチームメートとして再会した。

対戦した米国チームのメンバーは当時、カレッジリーグのスター選手軍団だった。ダスティン・ジョンソンリッキー・ファウラーウェブ・シンプソンビリー・ホーシェルクリス・カークら豪華メンバーだった。ウィレット、マキロイら英国・アイルランド連合チームは惜しくも敗退。8年前の出来事とはいえ、負けたウィレットらの悔しい記憶は今も鮮明だという。「あの時の借りを必ず返す!」――それもウィレットのモチベーションになっている。マキロイとはチームメートの経験で距離は縮まり、その時から良きライバル関係が始まった。

翌08年3月には、ファウラーを抜いて世界アマチュアランク1位に、また「豪州アマストローク選手権」、「スペイン・アマ選手権」と、各国のビッグタイトルを獲得し、5月にプロ転向。その時のハンディキャップは“+5”になっていた。

■ 一気浮上!欧州ツアーのナンバー2へ

09年から欧州ツアーでプレーをスタートした。初優勝は2012年6月の「BMWインターナショナルオープン」で、参戦から106試合目と少々時間を要した。しかし、豪州のベテラン、マーカス・フレイザーと4ホールに及ぶプレーオフを制しての勝利で、驚異の粘りが印象に残った。

2014年12月に、南ア開催の「ネドバンク・チャレンジ」で、同郷イングランドのロス・フィッシャーに4打差で優勝。2015年7月、スイスで開催された「オメガ・ヨーロピアンマスターズ」でも、同郷の新星、20歳のマシュー・フィッツパトリックに競り勝ち、今季2勝目、通算3勝目を飾った。欧州ツアーの年間王者争い“レース・トゥ・ドバイ”では、マキロイに次いで2位に浮上。今後の活躍次第ではナンバー1を狙える位置にまで浮上してきた。

■ “WWW(World Wide Willett)”開幕まで、あと少し

畳みかける様な大活躍で世界ランクも50位内に食い込み、今年初めて「マスターズ」に出場した。一昨年結婚した二コル夫人をキャディに、パー3トーナメントもプレーし、「遂にここまできた…」と感慨深い様子だった。結果は予選落ちだったが、改めて米国での成功を胸に誓ったという。

翌4月の「WGCキャデラックマッチプレー」に初出場を果たし、同郷の大先輩リー・ウェストウッドトミー・フリートウッドパトリック・リードライアン・ムーアというツワモノたちを次々に下して準決勝へ進出した。ゲーリー・ウッドランドを破れば決勝進出だったが、3&2で惜しくも敗退。しかし3位決定戦では、ジム・フューリックを3&2で下し、単独3位でフィニッシュ。同世代の24歳、パトリック・リードは「食らいついていこうと必死になったが、ウィレットのステディなプレーには敵わなかった」と2&1での敗戦を悔しがり、強敵の出現を警戒。対戦相手は彼の秀逸なドライビング・テクニックと絶対にあきらめない気迫に舌を巻いたのだった。

勢いは加速し、母国のナショナルオープンでもある7月の「全英オープン」での6位タイにつなげた。PGAツアーのポイントランクは「RBCカナディアンオープン」終了時点で119位に相当し、2週後のレギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」終了時点で、125位以内に相当すれば、晴れて来季シード権獲得となる。活躍の場はさらに拡がり、いよいよWWW(World Wide Willett)の開幕だ。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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