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バーバゾル選手権
期間:07/16~07/19  場所: RTJゴルフトレイル(グランドナショナル)(アラバマ州)

<選手名鑑165>マーベリック・マクネリ

昨年の「全米オープン」では、著名な実業家で父のスコットがマーベリックのキャディとして帯同した(Ross Kinnaird/Getty Images)

■ スタンフォード大学が誇る絶対的エース登場!

「バーバゾル選手権」は今季新設のトーナメントで、会場は米南部アラバマ州にあるRTJ(ロバート・トレント・ジョーンズ)トレイルのグランドナショナルレイクコースだ。同コースは97年、ウェブドットコムツアーの最終戦「ツアー選手権」が開催されたことがある。またPGAツアーではアラバマ州での唯一の大会だ。

今週は「全英オープン」開催のため、トップランカーたちはスコットランドに集合するため、今大会はフィールドが弱い。とはいえ顔ぶれは興味深く、復活を賭け挑むベテラン勢、初優勝を虎視眈々と狙う選手たちの熱戦は必至だ。ツアーはここ数年、波乱が続き、ジョーダン・スピース(22)が、無資格から3年足らずでメジャー2勝を含めツアー5勝、今週は「全英オープン」優勝の最有力候補に挙げられるなど、メジャー3連勝の期待がかかる。次に誰が下克上を実現しても不思議ではないのだ。

そこで今週ピックアップする選手は19歳のマーベリック・マクネリ。スタンフォード大学理工学部2年で、米アマ界のホッテストプレーヤーだ。今秋から3年生になるまでの夏季休暇中は、PGAツアーの数試合に推薦出場を予定しており、彼のプレーにゴルフ界の未来も感じたいと思っている。

■ IT業界の逸材 スコット・マクネリの長男

昨年、マクネリは大学1年の時に「全米オープン」への出場権を獲得。父親をキャディとして帯同させてプレーした。父スコット(60)は、米国の著名な実業家でIT関連のサン・マイクロシステムズの共同設立者として知られる。ハーバード大学医学部時代はゴルフ部で活躍し、後にスタンフォード大学大学院で経営学のMBA取得。80年代から業界をリードする一人として活躍してきた。ビジネスセレブの父は自身の憧れでもあった大舞台でプレーする頼もしい息子を誇りとし、息子のバッグを担ぎ、懸命に支える姿は米国で大きなニュースになった。

父はスタンフォード大学で知り合ったスーザン夫人と結婚。シリコンバレー近くのカリフォルニア州ポートラバレーに居を構え、4人の息子が誕生した。その長男がマーベリックだ。父の学生時代のハンディは“+2”。夫人もゴルフが大好きで80台のスコアでプレーする腕前だ。休暇は6人家族でゴルフを楽しみ、今は息子たち全員がハンディキャップ、シングルの腕前だそうだ。

マクネリ家は、父、息子全員がアイスホッケーをプレーし、マーベリックが競技ゴルフをスタートしたのは高校2年のこと。二本の刃で疾走するアイスホッケーで鍛えられた下半身も急激な躍進を後押しした要因のひとつだろう。

■ 最高峰の2賞を同時受賞

PGAツアーの出場スポットはプロでも難関だ。アマチュアが推薦出場するには相応しい実績と将来性がなければ与えられない。カレッジゴルファーにはフレッド・ハスキンス賞、ジャック・ニクラス賞、ベン・ホーガン賞という3つの大きな賞がある。ハスキンス賞は最も活躍した大学生に、二クラウス賞はより広範囲(短大や専門学校なども含め)の学生の最優秀選手に、ホーガン賞はその年ベストアマチュア(学生も含む)に授与される。マクネリは、ハスキンス賞と二クラス賞のダブル授賞を果たした。ホーガン賞も最終選考まで残っていたほどで、多くのゴルフファンがプレーを見てみたいと思うアマチュア筆頭株だ。

受賞対象の年となった大学2年生のシーズンは個人6勝。これは大学の先輩タイガー・ウッズに次ぐ史上2番目の、1シーズン最多優勝記録だった。全40ラウンドの平均ストロークは69.05で、スタンフォード大学史上最少平均スコア(この分野でウッズは史上5番目の70.61)。18ホールでも「61」をマークして、同大学ではウッズらと並ぶ史上3人目の最少スコアを記録した。もちろん現在、同大学の絶対的エースの存在だ。

■ 記録法でゴルフIQを磨け!先輩ロジャースのアドバイス

大学1年時、マクネリは未勝利で終えたが、2年生になるやシーズン6勝の急成長を遂げた。大学に入り、1年中ゴルフをプレーするようになり、一気に結果が出はじめた。大学に入ってからパット数やパーオン率などを記録し始め、全体の平均と比較するようになり、1年経過後は18ホールでパットは3ストローク、ショットは1ストローク向上していた。「1試合平均で12打も良くなっていて驚きだった」。記録することで向上のレベルがどの程度か具体的に分かったことが大きいと言う。

この記録法はマクネリの1年先輩で、昨年6月に3年生で中退し、プロ転向したパトリック・ロジャース(21)の影響だった。ロジャースはプレーの詳細を常に記録、長所や短所を明確にして効果的なスキルアップを実践していた。マクネリがロジャースに自身のプレー診断を仰いだ時、翌日に要点を簡潔にまとめた見事な返信メールが届いた。

「ショートパットを強く打ちすぎるため入るルートが狭められ難度を上げてしまっている。結果的にカップの大きさを最大限に活用できていない」。「アイアンショットが保守的すぎる。弾道の高さ、ドローやフェードのコントロールも最高レベルなのだから、それが生きるよう、より積極的にピンを攻めることを勧める」。

鋭い言葉にマクネリは目が覚め、すぐにロジャース流記録法を開始。すると気持ちまで変化した。食事内容や体重などを記録するレコーディング・ダイエットのように、ゴルフの記録法も有効かもしれない。

■ ゴルフかビジネスか 人生の選択は?

現在、マクネリはプロゴルファーに転向するとしても大学は卒業する予定だという。アマチュアの試合でさらに経験を積み、来年のメモリアルなどPGAツアーへの出場権のある試合でプレーしながら、適性を見極めたいと思っているようだ。

では、今の実力はどのくらいなのか?初めてスポンサー推薦で出場した7月第1週の「ザ・グリーンブライアークラシック」では最終日の大混戦の中、首位に4打差でスタートしたが、スコアを伸ばせず60位タイで終了。しかし、優勝の期待を抱かせ、存在感を示した。同大会での平均飛距離は303.4ヤード、FWキープ率が71.4%、パーオン率が63%だった。パット次第で優勝の可能性もあり、91年フィル・ミケルソンが「ノーザンテレコムオープン」で成し遂げて以来のアマチュア優勝も夢ではない。

その一方で、ビジネス界への可能性も模索しているようで、休暇中は父が設立した新会社でインターンとして仕事を学んでいる。ビジネスの才覚にも優れ、あまりの呑み込みの早さに周囲を驚かせ、父も息子への思いが揺らいでいるようだ。PGAツアーでは選手を引退した後に大学へ復学したり、その後、投資顧問会社を設立したり、整形外科医の道を進んだりと、別な世界に転身した例も多々ある。マーベリックとは独立独歩、一匹狼という意味があり、命名した両親の願いどおり、彼はどの世界を選んでも逞しく道を切り開いて行きそうだ。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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