タイガー、最終メジャーを前に万全の調整をアピール
2012年 全米プロゴルフ選手権
期間:08/09〜08/12 場所:キアワアイランドリゾート(サウスカロライナ州)
佐渡充高が簡単解説!初めてのPGAツアー【番外編】
■ 開催コースはキアワアイランドリゾート
「全米プロ」は今年、サウスカロライナ州のキアワアイランドリゾートで開催される。コースはピート・ダイの設計で、海のすぐ近くに位置するため、海沿いのコースによく使用される“シーサイド”、“アストリア”というベント芝のコースだ。この地域は風が強いだけでなく、潮を含んでいるので非常に重たく感じるのも特徴の一つ。いわゆるシーサイドコースなので、風は吹きさらしの状態、さらに林間コース、海に面しているコース・・・と入り交じっているので、雰囲気から言えば、「全米プロ」というよりも「全英オープン」に近い雰囲気を想像させる。
■ 今季メジャー最終戦「全米プロ」
「全米プロ」と言えば、世界の強者を決める大会であり、もちろんプロにとっては今大会で勝つことは最高の栄誉と言えるだろう。過去に、ジャック・ニクラスが『メジャーの中で格付けをするとしたら?』という質問に、『「全英オープン」、「全米オープン」、「全米プロ」、「マスターズ」という順番』と答えたという話もある(もちろんこれは選手によって異なる見解ではあるのだが・・・)。「全米プロ」はアメリカ人にとっては非常に盛り上がる大会である。欧州では「BMW選手権」(欧州ツアーでいう「全米プロ」に近いメジャー級)に匹敵するくらいのビッグトーナメントで、アメリカ人にとっては大きな大会なのである。「全米プロ」は毎年8月の暑い時期に開催されるということと、さまざまな夏のイベントと重なって露出が低くなることが懸念される大会でもある。(今年もロンドンオリンピックの開催期間と重なるので)大きなイベントの陰に隠れてしまう年もあり、メジャートーナメントの中では脚光を浴びにくい大会と見られがちだ。でも選手にとっては4大メジャーの一つ、大舞台での熱い戦いに挑むのである。
先にも述べたように、このコースは「全英-」に負けじと風が強く吹くこともあり、力でねじ伏せるような戦術よりも、風の中でのテクニックが求められる。昨年の開催場所であるアトランタアスレチッククラブの林間コースとは対照的なコースなので、優勝者、上位陣はがらりと変わってくるだろう。昨年のように、若い選手が上位に名を連ねるというよりも、おそらく経験を積んだ中堅の選手が強さを発揮し、上位にあがってくるのではないかと予想される。日本から出場する石川遼選手にとって、これが今季メジャー挑戦への最後のチャンスとなる。今季「マスターズ」、「全米オープン」、「全英オープン」の3試合は全て予選落ちを喫している。今季の予選落ちは進歩の証拠。過去に予選突破や、まずまずの成績を残してこられたのは、当時はなにもかも目新しい状況の中で、怖さも分からず、とにかく自分の持っているものをぶつけるしかなかったからだ。それが出場回数を重ねるごとに、だんだんといろいろなものが見えてきて、もう1ステップ上のゴルフをしなければ、これからPGAツアーで戦う上で厳しいだろうという気持ちが沸いてきた、PGAメンバーになるという自覚、ここを主戦場として戦っていく上で、さらなる高いレベルの技術取得を考え始めると、そこに難しさが生じてくるのだ。7月の「全英オープン」で予選落ちを喫したが、これはどんな選手でも1ステップ、1ランク上に行くためには乗り越えなければならない壁だ。どういう状況で攻めるのか、守るのか、テクニックだけではない“判断力”が重要となってくる。徐々にではあるが、彼のレベルが上がってきているのは事実。ただし、今は、進歩はしているが一番難しいところにさしかかってきているので、結果がついてきていない状況だ。これを経験して、いずれ乗り越えた先に強くなった石川遼が見えてくるはずだ。まずは予選突破を目指して強豪たちに挑んでもらいたい。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。