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後世に残したいゴルフ記録

ツアー史に刻まれなかったプレーオフ7連勝/残したいゴルフ記録

国内男子ゴルフのツアー制度が始まった1973年より前の記録は、公式にほとんど残されていません。本連載では、ゴルフジャーナリストの武藤一彦氏が取材メモや文献により男子ツアーの前史をたどり、後世に残したい記録として紹介。今回は、ツアー制前後のプレーオフに関する記録について深掘りします。

プレーオフも強かった! ツアー最多白星は尾崎将司の12勝

ゴルフトーナメントの面白さはプレーオフにあり。72ホールを戦ってもなお決着がつかず、サドンデスにもつれ込む緊張感は、野球の延長戦や相撲の優勝決定戦などと同じように、興奮が一段と増すものだ。閉幕した「東京五輪」の男女ゴルフでも、日本勢初のメダルをかけたプレーオフに見入ったゴルフファンは多かったのではないだろうか。

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プレーオフとひと口に言っても、1926年の第1回「日本プロ」で行われた1日36ホールをはじめ、3ホールのストロークプレー、さらにサドンデス方式までいろいろ。そんななか、日本ツアーで最もプレーオフを経験しているのは、ツアー最多の94勝を誇る尾崎将司だ。プレーオフは20回を戦って12勝8敗と、その回数と勝利数は最多となる。

“ガッツ安田”が驚異のプレーオフ7連勝

だが、勝率で言えば上には上がいる。13回を戦って9勝4敗(6割9分2厘)の安田春雄だ。これは尾崎の6割を上回り、プレーオフを10回以上を戦ったプロのなかでは最高勝率。生涯14勝(ほか海外3勝)を挙げた中で、初優勝の1968年「中日クラウンズ」、2勝目の69年「関東プロ選手権」はともにプレーオフを制したもの。ツアー化をまたいだ76年「KBCオーガスタ」で豪州のグラハム・マーシュに敗れるまで、日本プロゴルフ競技の記録となるプレーオフ7連勝を遂げた。

“ガッツ安田”の愛称で人気を博した闘志あふれるプレースタイルは、スリリングなプレーオフの圧倒的な巧者だったことと無関係ではないだろう。しかし、1973年にツアー制度が確立して以降は2勝4敗と快進撃は途絶え、この勝敗数だけが安田の公式なツアー記録となっている。安田の勝負強さを示す、ツアー化以前の輝かしいプレーオフ戦績の全てが残らなかったことは、なんともさびしい限りだ。(武藤一彦)

武藤一彦(むとう・かずひこ)
1939年、東京都生まれ。ゴルフジャーナリスト。64年に報知新聞社に入社。日本ゴルフ協会広報委員会参与、日本プロゴルフ協会理事を経て、現在は日本エイジシュート・チャレンジ協会理事、夏泊ゴルフリンクス理事長を務める。ゴルフ評論家として活躍中。近著に「驚異のエージシューター田中菊雄の世界」(報知新聞社刊)など。

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