Y.E.ヤン<プロフィール>
19歳でクラブを握り36歳で米国へ Y.E.ヤンの50歳の挑戦
昨年まで日本ツアーで活躍したY.E.ヤン(韓国)は1月に50歳になり、今季PGAツアーチャンピオンズにデビューした。PGAツアーのコラムシリーズは今回シニア入りしたヤンにChuah Choo Chiang氏が事前にインタビュー。アジアの男子ゴルファーで初のメジャーチャンピオンとなったベテランの足跡を振り返った。
193試合の出場でPGAツアー通算2勝。トップ10入りは12回、トップ25には33回。フェデックスカップでは2009年に自己ベストの10位で終え、生涯獲得賞金は約900万ドルに上る。彼のキャリアは欧州ツアー(DPワールドルアー)、日本ツアーを合わせさらに7勝と実に華々しい。
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しかし、それらの記録以上に重要なのは、Y.E.ヤン(韓国)の名前はメジャータイトルを初めて手にしたアジア人選手として永遠に語り継がれることである。それも、ヘーゼルティンで行われた2009年「全米プロ」で、一騎打ちとなったタイガー・ウッズを破った選手としてだ。
1月15日、ヤンは50歳の誕生日を迎えた。ゴルフ界では次のステージであるシニア入りとなり、2月にフロリダ州ネープルズでの「チャブクラシック」でPGAツアーチャンピオンズデビューを果たしたのである。
ヤンはゴルファーとしては遅咲きで、19歳でクラブを握った。世界を横断してフェアに競い合えるところがいまでもゴルフの好きなところだと彼は言う。50歳になっても、毎日の積み重ねがあればこそ、シニア世代のレジェンドでもあるベルンハルト・ランガーやアーニー・エルス、ビジェイ・シン、ダレン・クラーク、フレッド・カプルスといた選手たちの仲間入りできると信じている。
「第一に、僕はゴルフが大好きだ。これからもずっとそうだろう。ゴルフを通じてたくさんのことを学んできた。これから何が起こるか楽しみで、また戦えることが本当にうれしい。期待値は高いよ」
アジア人ゴルファーの最初のスター世代の一員として、ヤンの旅路は特筆すべきものだ。済州島で7人きょうだいの家庭で生まれたヤンは若かりし頃、ボディビルダーになること、いずれトレーニングジムを経営することを夢見ていた。しかし19歳のときに、けがを負ったことでゴルフを紹介され、ボールを打ち始めた。当時は地元の打ちっぱなしの練習場でボール拾いをして働いた。兵役に就いてからは、ツアープレーヤーになるよりも、まずティーチングプロを目指していた。
煮えたぎるような魂と、鋼の肉体を持つ韓国人選手は、母国ツアーでまず成功し、日本ツアーでも活躍した。ウッズを含むトップレベルでの初勝利は2006年に中国で行われた「HSBCチャンピオンズ」。翌07年には予選会を通過してPGAツアーの出場権を獲得すると、わずか2年で一流選手に仲間入りした。09年「ザ・ホンダクラシック」で初優勝を挙げ、同年の「全米プロ」でウッズを破るスポーツ界でも最高の“ジャイアントキリング”を達成した。
「私は決して有名選手ではなかった。私のような選手を倒しただけなら、大きな話題にはならなかった」と当時を振り返る。ウッズはその「全米プロ」までにシーズン5勝をマークしており、54ホールを終えた時点で首位にいた直前までの36試合で負けたことがなかった。
「(当時)70勝していた選手と、たった1勝の選手との戦いだった。私はとてもメジャーを勝てるという希望なんて持っていなかったが、夢がかなって最高の気分だった。今、どこへ行っても自分はメジャーチャンピオンなんだと胸を張れる」
彼はシニア入りして、アメリカンドリームを夢見るアジアゴルファーの先駆者である同胞のチェ・キョンジュとともに、韓国人選手として初のチャンピオンズ優勝を追いかけことになった。「プレジデンツカップ」の世界選抜に2回選ばれたこともあるヤンは「新しい期待に気持ちが高ぶる」と意気込んだ。「年齢を重ねることは寂しくもあるが、私たちはまたチャンピオンズツアーという機会を得ている。新しいチャンスだろう。たくさんのレジェンドと一緒にいられることは名誉なことだ」
日本のスターである松山英樹は昨年、マスターズを制したことでアジアのメジャーチャンピオンとしてヤンに続いた。彼はこれからの選手たちにも良い影響があることを望んでいる。
「夢を持てば、目標を持てば、必ずできる。私がアメリカに行ったのは36歳のときだった。すでにその時には子どもがいた。一般的なアスリートならば引退を考える年齢だ。だが私はその年でアメリカに行くことを決めた。私にできたんだから、みんなできるはずだ」
インタビューに答えたヤンが滞在していた建物の壁には、彼の写真が入った垂れ幕がかかっていた。「ちょっと恥ずかしい」と言ったが、アジアのゴルフの歴史を切り開いた選手が、独学で夢を追いかけ、それを現実にした選手が、シンプルに祝福されることに驚きはない。さあ、次の章のはじまりだ。