ジョーダン・スピース、自己最長28mのロングパットを決める
2017年 バーバゾル選手権
期間:07/20〜07/23 場所:RTJトレイル(グランドナショナル)(アラバマ州)
SNS依存症…全英Vのスピースと同じ23歳が抱えた苦悩
◇米国男子◇バーバゾル選手権 最終日(23日)◇RTJゴルフトレイル グランドナショナル(アラバマ州)◇7302yd(パー71)
「全英オープン」でジョーダン・スピースが3度目のメジャー制覇を遂げてから約4時間。大西洋を挟んだ米国アラバマで初優勝者が誕生した。クラレットジャグを手にしたチャンピオンと同学年のグレイソン・マレーだ。自身のSNS上で物議をかもす発言を繰り返す“問題児”としても知られる。
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成績以上に発言が注目される選手―。マレーには、こんなレッテルが付いて回る。時には先輩プロを批判し、またある時には世界ランクシステムに対して文句をつづる。2月「ジェネシスオープン」でブライソン・デシャンボーが棄権した際には「招待で出場して棄権なんて許さないだろ?」と不満をあらわにした。
全てSNSを通した書き込みで、ゴルフ界に留まらず警察官を批判したこともある。内容の正誤はともかく、騒動と謝罪を繰り返す様から世間からは『SNS依存症だ』と評された。
情緒不安定の要因は、大学時代に味わった挫折にあるのかもしれない。決して裕福ではない家庭で育ったマレーは幼少期には家族からサッカーや野球を勧められた。それでも7歳でクラブを握ると才能はすぐに開花し、ジュニア大会で好成績。そして家庭の経済事情のため、優秀なジュニアに付与されるアーノルド・パーマーの奨学金制度を利用し、レジェンドの母校・ウェイクフォレスト大学に進学した。
しかし、ここで挫折を味わった。成績が振るわず“奨学金”で進学したプレッシャーに押しつぶされたのだろう。精神的に病んで入院し、両親と相談して大学を変えることを決意した。軽い抗うつ剤を使用しながらの生活で、SNS上に自身の感情を包み隠さず投稿するようになった。
「彼が普通の青年だったら問題ない。でも彼は今PGAツアーの選手だ。」
米国の報道で書かれた記事の一文だ。下部ツアーを経て最高峰の舞台PGAツアーで出場権を手にした昨年から、格段とSNSの影響力が増した。メディアを通さずファンに直接思いを伝えられるという利点がありながら、使い方を間違えると“悪者”となる。マレーはデシャンボーらに謝罪し、今後は自身の投稿についても「改める」という。
奇しくも、初優勝を果たしたこの日、かつてのライバルが英国で眩いくらいの輝きを放った。10代当時、マレーは「未来のスター候補」としてスピースとともに米国のゴルフ雑誌を飾っていた。回り道を経て踏み出した、大きな一歩となりそうだ。(アラバマ州オペライカ/林洋平)