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世界一の飛ばし屋 フィナウがついに初優勝

26歳での初優勝。それはプロ転向10年目にしてつかんだ栄冠だった。プエルトリコのココビーチゴルフ&CCで行われた「プエルトリコオープン」最終日。首位に1打差の2位から出たトニー・フィナウが「70」で回り、通算12アンダーで並んだスティーブ・マリノとのプレーオフを制して米国男子ツアー初優勝を飾った。

互いに譲らず、ともにバーディを連取して迎えたプレーオフ3ホール目。グリーン奥、左足下がりのバンカーからの3打目を寄せて“3連続バーディ”を決めたフィナウは、両拳を静かに掲げて勝利の味をかみ締めた。

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「まだ実感がわかないよ」。身長190cmの体格から放たれるドライバーショットは迫力十分。前週までの平均飛距離はバッバ・ワトソンダスティン・ジョンソンを抑え、今季のドライビングディスタンス部門でトップの316.3ydを誇る。2位のゲーリー・ウッドランドに2.8yd差をつけている規格外の大砲だ。それでいて、愛くるしい笑顔と落ち着き払った振る舞いが、多くのファンを惹き付けている。

トンガとサモア。いずれも南太平洋に浮かぶ島国出身の父と母を持つ、ユタ州ソルトレークシティ出身の米国人。ゴルフを教わった父の腕はそれほどでもなく、小さい頃はもっぱらジャック・二クラスの著書が教本だった。一方で生活苦も味わい、ジュニア時代にはゴルフのプレー、エントリー代を捻出するため、母から教わったサモアの伝統的な踊りであるハカや、ナイフを振り回すファイヤーダンスをショーで披露することもあった。

大学バスケットボール界からもオファーを受けるほどだった運動能力。数ある名門ゴルフ部からの誘いを断り、いち早く家計をサポートできるように、17歳でプロゴルファーの道を選んだ。年少プロはミニツアーから場数を踏み、経験を積んだ。2011年には母が交通事故で死去し、不振の時期も重なった。

14年に下部ウェブドットコムツアーで初勝利を手にして、昨季からようやく辿り着いたPGAツアー。だがフィナウは言う。「去年、僕が学んだことがある。遠くを見すぎてはいけない。でも振り返ってもいけない。僕の今年の目標はライダーカップに出ることでもなく、フェデックスランクで30位に入ることでもなく、毎試合ちゃんとスタートすることだったんだ」。期待を背負った巨体を揺らしても、ステップアップは一段ずつと決めてきた。

狂喜するギャラリーを前に「プエルトリコが大好きな場所になったよ」と言った。南太平洋にルーツを持つ男の、カリブの島での初勝利。今後の勢力図を変えるきっかけになるかもしれない。(プエルトリコ・リオグランデ/桂川洋一)

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