「マスターズ」プレビュー:新オーガスタ・バックナイン
タイガー、オーガスタのコース延長は望むところ
マスターズのタイガー・ウッズはプロとして5回出場し2度優勝。すでに23の大会記録を保持。なかでも特筆すべきは72ホールの最少スコア(270)、そして2位とのストローク差(12)だ。そして今年、彼は26歳にして、これまでグリーンジャケットに3度以上袖を通した6人のプレイヤーに加わろうとしている。
距離の長くなったオーガスタ・ナショナルでそれを成し遂げようとしていることが重要だ。パー4を7つ含む9ホールの改修で全長は300ヤード近く延長され、いっそうタイガーに有利だと一般的には思われている。去年はパー4で他に並ぶ者のないパフォーマンスを見せ、記録となる8アンダーをものにしたウッズは語る。
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「コースの延長は望むところです。これまでは第二打、そしてパッティングの勝負でしたがティショットも加わった。勝負できるところに飛ばさないといけないわけです。これで、すべてにおいて最高のショットが打てるかどうかが試されることになりました。私はいいことだと思います。第二打の正確性やパッティングのタッチだけが決め手ではなくなって、ゲームに必要なあらゆるショット、自分の全てがテストされるからです」
今年の改修を「タイガー封じ」と見る向きもあるが、多くは「タイガー好み」のコースになったと考えているようだ。ウッズ陣営の長老もそのひとり。メジャー6勝チャンピオンの父、アール・ウッズは「タイガーをはじめ飛ばし屋に好都合」と語っている。
「飛距離を出せるプレイヤーが優位に立てる。勝負の行方をわからなくしたかったらコースを短くすればいいでしょう。あるいは誰もが飛ばせるならばコースの長さはいいことでしょう。コースが短いままなら誰にもアドバンテージはないわけですからフレッド・ファンクだって争いに加われる。でも距離が長ければ若いプレイヤーが有利です。なんといっても飛ばせますから」
去年同様、ウッズは今年もフロリダではゆっくりとしたスタートから徐々に数字を上げてきている。3月3日のジェニュイティ・チャンピオンシップ最終日では66、3日目終了時点で8打差をつけられていたアーニー・エルスに2打差までつめより、マスターズへ向けた調整がうまくいっていることをうかがわせた。2002年の初勝利をベイヒル・インヴィテーショナルで飾り、続くプレイヤーズ・チャンピオンシップで14位タイにつけて最終調整としている。アール・ウッズは語る。
「ドラールは、『おいみんな、8打差では不十分だぜ』というメッセージになった。恐怖感といってもいいでしょう。(エルスは)ジャングルでベンガル・タイガーに追われている男のように見えた。あと200ヤードでジャングルを脱出できるというところで、自分にはタイガーを振り切るスピードはあるのかどうか自信がなくなっていたはず」
こんなふうにも言えるだろう。タイガーは風邪をひいていたが回復し、跳ねるポ・アナ(Poa annua)種のグリーンばかりの西海岸シリーズを脱出してパットが良くなり、新しいナイキのドライバーにも慣れ、手直ししたスイングにも自信がもてるようになって、フロリダでは勢いがついたのだ。ドラールでウッズは言っていた。
「最大の関心事はオーガスタへ向けて万全にしておくこと。年に4度、精神面、肉体面をともに準備万端にするのは難しいのですが、挑戦しがいのあることなのです」
ジェニュイティ・チャンピオンシップ最終日の追い上げ、そしてその強さは2001年の再現を予感させるに十分だった。去年、ウッズは穏やかな出だしからベイヒル・インヴィテーショナル、プレイヤーズ・チャンピオンシップを勝って、マスターズでの4連続メジャー勝利へとつなげていったのだった。3月半ば頃、アール・ウッズは言っていた。
「あいつは貨物列車のようにスピードに乗るまでに時間がかかる。自動車の方が最初は速くて抜かれてしまうが、貨物列車は勢いがついてスピードに乗ってくればすぐにクルマに追いついてくる。試合ごとに勢いをつけていっているのが私にはわかります。マスターズへ向けて蓄えていっているのがわかるでしょう。いまやエンジン全開ですよ」
今年はこれまで以上に相性がいいだろうと言われるオーガスタへ乗り込むウッズだが、本人はラウンドで1打から2打は多くなるだろうと予測している。ウッズのマスターズでの平均スコアは70.88、これはマスターズ記録である。ティショットを打つ時にこれまで以上に慎重に考えるようになるだろうとウッズは言う。たとえば9番パー4のティーにあがる時なら「ドライバーで右サイドにかっ飛ばす。ギャラリーの中に打ち込まなければよし・・・」とはいかなくなるとウッズは言う。
「今回はよく考えなくては。よし、ドローをかけてフェアウエイに落とそう。あまり転がりすぎないようにしないとライは悪くなる。ラフのファーストカットのところから下り傾斜でサイドヒルも入ってきて、グリーンは3段になっていて煉瓦みたいに固いぞ・・・ってね。そんなふうに狙いをすましていかなくてはならないティショットが増えたことは確かです。以前はどんどん攻めていけばよかったんですけどね」
しかしウッズのコースマネジメント、そして精神の強さたるや恐るべきものがあることを我々はつねに目撃してきた。父親が確信しているように、改修されたオーガスタを正確に把握してウッズが本領を発揮するのは時間の問題だろう。すべてがうまくいけば、それは見物である。アール・ウッズは語った。
「あいつのアイアンが切れだしたら、みんな諦めた方がいい。肉体的には去年、成熟期を迎えているし、アイアンで正確に同じ距離を打てるようになって一年しかたってはいない。それを身につけたのだから、ほかの誰も闘いにはならないだろう」By JOHN STEINBREDER (GW)