B.スネデカーが今季2勝目! 松山英樹は16位タイ浮上
<問われた英語力、松山英樹の課題>
イギリス在住のゴルフ通によると、地元ではすでに数年前から、松山英樹の実力を認める声があがっていたそうだ。「マスターズ」で日本人初のベストアマチュアに輝いたときから、「メジャーでも勝てる選手」と、相当に高い評価を得ていた。それだからこそ、「彼には早く英語をマスターして欲しい」との声は、むしろ海外のゴルフ関係者(しかも、かなりの重鎮たち)やメディアから、これまたかなりの数で、あがっていたという。
「全米オープン」で10位に入った直後に、その結果を受けて本人は、「英語が分からないから、プレーに集中できるというのもあるかもしれない」と、言っていたことがある。確かに、普段からべらべら喋りながらというよりも、口を一文字に結ぶ寡黙なプレースタイルが、ひとつ松山の大きな特徴といっていい。
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海外でなら、なおさら「あいつは英語も喋れないし」と一緒に回る選手にもむやみに話しかけられることもなく、それで本人はかえってプレーに集中出来るという効果は大いにあるかもしれない。しかし、たとえゴルフの実力では遜色なくても、潜在能力を思う存分に発揮するためにも、コミュニケーション能力は、海外ではやっぱり必須条件なんだと本人も痛感せざるをえない事件が、「全英オープン」の3日目だった。
あの日は、通訳的な役割も担ったオブザーバーとして、日本から派遣された競技委員も随行していた。会場では、日本人メディアの間でその競技委員から、十分な説明がされなかったことが事の一端ではとの憶測も流れたが、いずれにせよその競技委員を責めたところで、スロープレーによる1罰打の裁定が覆るわけはないのだ。
13番ホールで最初の計測を行い、17番でついにペナルティを宣告したのはデービッド・プロビンというR&Aの競技委員だった。1回目に警告を受けた時点で彼から直接十分な説明を受けて、松山が完全に状況を把握していれば、結果はまた違ったかも知れない。松山にもっと英語力があれば、あれほど大事件にはならずに済んだかもしれない。
競技委員長のデービッド・リックマン氏は日本人メディアに取り囲まれたとき、「マツヤマは今後、英語を学ぶ必要がある」とはっきりと言った。それは非常に冷たくも聞こえるが、同時に松山という選手に大いに期待しているからこその一言だったと思う。
この一回こっきりの活躍で終わるような選手だと思ったら、そんなセリフは出て来ない。これから松山が、世界で活躍し続けていく選手だと、認めているからこそそんな言葉も出てくる。
これも先の英在住の“事情通”が言っていたことだが、「ゴルフは英語圏で誕生したスポーツですからね。だからこそ、特にこちらの“おうるさがた”は、みな松山選手にも、しっかりと英語を勉強して欲しいと思っているんですよ。それでないと、ゴルフというスポーツを本当に理解したことにはならないんだよ、とでも言いたいんでしょうね」。
流ちょうでなくてもいい。発音なんかもどうでもいい。たとえ不器用でも、相手とコミュニケーションを取ろうという努力の姿勢があるかどうかも本場のファンは見ていると、事情通は言った。
もっとも、回りからやいのやいのと言われるまでもなく、今回の一件でそれを一番、痛感しているのは他でもない、本人であることは間違いない。6位タイにつけた最終日には、あまり本音を語りたがらない選手が珍しく、きっぱりと言っていた。「これからは英語も含めて、もっと勉強しないといけません」。またそれは、メジャーでも十分にやれる。本人もそう実感したからこそ出てきた言葉だったと思う。
「意味がわからないと怒りを覚えて、そのまま最後まで来てしまった」と、ペナルティを受けた3日目の17番では、1打罰のボギーにイライラとした素振りを隠さず、次の18番はさらに怒りにまかせてまたボギーを打った。競技後の会見では耳の下辺りの筋肉を何度もひくつかせて、懸命に怒りをこらえていた。
しかし、翌朝には驚くほどすっきりと明るい表情でティグラウンドに立ち、「スピードアップ!」とのギャラリーからのジョークにも、駆け足のポーズでおどけて笑いを誘うなど、気持ちの切り替えの速さは、それはそれは見事だった。海外の選手と並んでも全くひけを取らない身体能力の高さ、ショットの精度。小技の巧みさ。そして何よりあの心臓の強さには、本当に目を剥くばかりだ。
日本が誇る怪物ルーキー「HIDEKI MATSUYAMA」。そういえば、あの国民栄誉賞の野球選手は「HIDEKI MATSUI」。ゴルフ界に現れた新怪物も、ゴジラ並みの活躍で世界中を沸かせる日はそう遠くないかもしれない。そう思うと本当に、ワクワクしてくる。そのときには、世界中をぎゃふんと言わせるくらいの英語の優勝スピーチも、聞けるといいなとも思う。