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ツアープレーヤーたちの快楽<藤田寛之>

困難に立ち向かうのが好きだ。というよりも、苦しさの中にしか喜びを見いだせないたちだ。プライベートのラウンドも、わざわざアマチュアの方から評判をかき集め、難しいコースを選んでプレーするようにしている。「簡単にスコアが出てしまうなんて、面白くもなんともない。ぴりっとスパイスが効いているようなコースがいい。苦しんで、とことん打ちのめされるコースにやりがいを感じるんです」と、藤田は言う。

自らを逆境に追い込むのも大好きだ。ツアー通算7勝目をあげた先の「ガサミーカップ」でもそうだった。その週は、過去4回中予選通過はわずか1回と、ただでさえ「相性の悪いコース」で、あえて「真逆のことをした」。持ち球のフェードボールを封印。ドロー一辺倒で攻め続け、ひどい違和感と戦いながら、それでも3日目にテレビで自分のスイングを見て、以前とまったく変わっていないことに愕然としながらも大混戦を制して栄冠をもぎ取った。

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しかし、自らに厳しい男はそれでも満足できない。
「自分の苦手なコースで勝てたのだし、これまでやってきたことが、間違ってないということが証明できたわけですから、喜ばないといけないんでしょうけれど・・・」と、前置きしつつ、「僕には変にまじめなところがあって。どんなに勝っても今のままじゃ、ダメなんだと思ってしまう。常にハードルを高く高く設定して、自分の首を絞めるようなところが僕にはある」と打ち明ける。

ちょっぴりマゾヒスティック(?)な性格は、幼いころからどんなに結果を出しても父・寛実さんに認めてもらえず、「まだもっとやることがあるだろう」とか、「お前よりも良い選手は一杯いる」と、尻を叩かれ続けたことに起因しているのかもしれない。

「困難に立ち向かうのが好きなんです」という藤田は、今年11月に第二子を授かる予定だが、2人目も男の子と分かって、ちょっぴりがっかりしている。
その理由がまた面白い。
「実は“花嫁を送り出す父”という役をやってみたかったんです。あれもまた、非常に辛いことなんだろう、と思って・・・。そういう困難にも、立ち向かってみたかったんです」と、優勝インタビューで真剣に語って報道陣を笑わせた。

そんな藤田がまた、うってつけの舞台に挑戦する。
8月13日に、米ミネソタ州のヘーゼルティンゴルフクラブで開幕する全米プロゴルフ選手権から特別招待を受けたのだ。昨年に続く2度目の挑戦は、7月27日更新の世界ランキングでその前週の111位から、一気に82位に一気に浮上したことが、主催者の目にとまったと見られる。

世界最高峰の舞台で「今年もまた打ちのめされて来たい」という藤田。超モンスターコースでの戦いは、「結果が良くても悪くても、自分に足りないものが見えてくる」と、藤田は言う。「必ず必要なものを教えてくれる。もっと、こういうこともやらなければダメだよと教えられている気がするから。必ず何かを持って帰ってこようと思います」と、勇んで旅立つ。

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