ニュース

米国男子ライダーカップの最新ゴルフニュースをお届け

2018年 ライダーカップ
期間:09/28〜09/30 場所:ル・ゴルフ・ナショナル(フランス)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

「ライダーカップ」でよぎった東京五輪への危機感

1927年に創設され、ことしで42回目を迎えた「ライダーカップ」。長い歴史を誇りますが、今大会で初めてフランスで行われたことで、いろいろ考えさせられることが多かったように思います。

「ライダーカップ」は、欧州と米国のホーム・アンド・アウェー方式で争われてきましたが、欧州での開催地はイングランドが多く、大陸で行われた試合は1997年開催のスペインのみ。今大会でのフランス開催は、大きな意味を含んでいるように感じました。

<< 下に続く >>

舞台となったル・ゴルフ・ナショナルは、欧州ツアー「HNAフランスオープン」が行われ、2024年パリでのオリンピック開催コースでもあります。1987年より3年がかりで造成し、1990年に開場。歴史は浅いですが、劇場型を思わせるコース設計や観客席を想定したスペースなど、観るための要素を考慮した設計を感じることができました。

全体的な距離(7183yd・パー71)は、特別に長いというわけではありませんが、フェアウェイのセカンドカットはすべて逆目、サードカットのラフはかなり深く、どちらかと言えば欧州コースの特徴的なフェアウェイの狭さを感じさせられました。

ただ、それが観ていて迫力につながらないかと聞かれれば、はっきりとNOと言えます。池が絡むホールが多く、戦略性を問われる部分は、緊張感のあるプレーを演出するのに十分。17番のアイランドグリーンで数多くの劇的な展開を生んできた米ツアー「ザ・プレーヤーズ選手権」の舞台、TPCソーグラス(フロリダ州)に似ている印象を持ったほどです。特にマッチプレーでは、ホールごとに勝敗が分かれるため展開が劇的に変わっていきます。この大会の躍動感をしっかり演出し、最後までスタンドを沸かせてくれたのはコースのおかげもあると実感しました。

また開催コース以外でも、その規模感やお祭り感により、既存のゴルフファン以外の方を楽しませる要素が含まれていると再認識しました。ゴルフ未経験者や興味のなかった人を振り向かせる好機になると思われます。主催者や出場選手はもちろん、関係者から伝わる熱量。それほどゴルフに興味のない人でも、つい観にきてしまう集客力があると思うのです。

1997年にスペインで行われた「ライダーカップ」によって、ゴルフ未経験者の父親とともに大きく影響を受けた一人の幼子がいました。これを機にその親子にとってゴルフが身近なものとなり、いつしか息子はプロを目指すようになります。彼こそが、今大会で欧州選抜の勝利に貢献したジョン・ラームだったのです。ラームのように、まったくゴルフに接点がなかった家族にも、ゴルフに触れてもらうチャンスを大きく含んだ大会だと感じました。

「ライダーカップ」の開催前に行われる「ジュニアライダーカップ」では、欧州選抜と米国選抜に分かれたジュニアの有望選手が戦います。この大会に出場経験があるのが、欧州選抜のロリー・マキロイ、米国選抜のジャスティン・トーマスジョーダン・スピーストニー・フィナウといったメンバーです。「ライダーカップ」をきっかけに夢を見るジュニアが増えていくことも、世界規模の大会が担う役割の一端だと思うのです。

ひとつの試合で多くの種をまく――このような動きは、スポーツのあらゆる競技の開催国として重要な役割と言えます。今大会の盛り上がりから、2024年のパリオリンピックを良いイメージにとらえる人が増えたことは確かです。一方で20年の東京開催が心配になったという人は、少なくなかったことでしょう。

東京オリンピックの開催まで、あと2年を切りました。今大会のように、数多くの種がまけるよう、関係者の一人として尽力していきたいと改めて思いました。(解説・佐藤信人)

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

関連リンク

2018年 ライダーカップ



あなたにおすすめ


特集

宮本卓×GDO 旅する写心
ゴルフフォトグラファー宮本卓×GDOのスペシャルコラボコンテンツ。国内外のゴルフ写真を随時更新中!!
やってみよう! フットゴルフナビ
サッカーとゴルフが融合した新スポーツ「フットゴルフ」の総合情報サイトです。広いゴルフ場でサッカーボールを蹴る爽快感を、ぜひ一度体感してみよう!

ブラインドホールで、まさかの打ち込み・打ち込まれ!!ゴルファー保険でいつのプレーも安心補償!