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2018年 全英オープン
期間:07/19〜07/22 場所:カーヌスティ(スコットランド)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

モリナリの静かな策略と進化

「全英オープン」はフランチェスコ・モリナリ(イタリア)が、3日目・最終日と勝負どころでノーボギーという安定感を見せ、初の栄冠をイタリアにもたらしました。

3日目はモリナリの他にもノーボギーの選手が数人いましたが、強風が吹いた最終日は、彼1人だけ。上位陣がバタバタと崩れていくのを尻目に、冷静な判断と安定感のあるショットで、最後まで粘り続けたプレーはすばらしいものでした。

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特にタイガー・ウッズとの同組で、メディアも観客も世界中の目がウッズに集中するなか、自分のゴルフに徹することができたメンタルの強さは賞賛に値するものと言えます。

前半からすでにウッズへの注目度は高く、ハーフターンで首位浮上した時点で盛り上がりは最高潮に。その間、モリナリは蚊帳の外。彼のショット時に、ウッズ見たさに周りが動いてしまう光景が何度も見られました。それでも、集中力を切らさなかったモリナリ。彼自身が展開をどのように読んでいたかは分かりませんが、ウッズの陰に隠れ、静かなゴルフを続けながら勝機が訪れる瞬間をうかがっているように映ったのは、私だけではなかったでしょう。

もともとモリナリという選手は、ドライバーでぶっ飛ばしたり、巧みなパットでファンをわかせるタイプではありません。正確なショットが武器で、堅実なプレーが持ち味。そのような彼が、どのように全英王者に登りつめることができたのか。私が思う勝因は二つあると思っています。

一つは、ショートゲームの技術。ウッズが11番(パー)でボギーをたたき、上位陣もバタバタしはじめた時、彼にもボギーのピンチが訪れます。12番(パー4)、13番(パー3)での2.5mほどのパーパットを何とか沈めることができましたが、彼の短所を強いて挙げるとすればパッティングです。パット部門でのスタッツは例年、世界のトップクラスと比べると引けを取ってしまうレベルですが、彼の直近3カ月(全英OP入れて優勝3回、2位2回)を見ると、このショートゲームのうまさが光って結果を残せているように見受けられます。16番(パー3)で見せたグリーン外からのアプローチも含め、ショートゲームすべてにおいて、直近の強さを発揮できた印象を受けました。

そしてもう一つが、ティショットの飛距離です。カーヌスティではグリーンに狙える位置さえつければ、ラフからでも狙っていける箇所がいくつか存在しました。その分ティショットでも、ある程度の飛距離が求められました。飛距離で言えば、以前のモリナリは確かにそれほどビッグドライブを生むタイプではありません。世界で戦うには、もう少し距離が欲しいレベル。彼もそのように自己分析していたのか、2014年シーズンに米ツアーの出場資格を獲り、15年に本格参戦しはじめた頃から、彼の飛距離は少しずつ伸びていきます。ドライビングディスタンスは、15年シーズンが281.6yd、16年が286.7yd、17年が291.9yd、そして18年はこれまでで301.0ydと伸びています。

「ストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティ」という、パー4及びパー5のティショットの貢献度を計るスタッツでは、堂々の4位(7月24日時点)。1位ダスティン・ジョンソン、2位ジョン・ラーム、3位バッバ・ワトソンと、飛ばし屋が名を連ねる中でのランクインは、正確性だけでなく飛距離も武器にしている証拠。派手さはないモリナリですが、静かに飛ばし屋グループの一員に加わっていたと言えると思います。

彼が近年遂げていたパッティングとティショットの進化。ひたむきに一歩ずつ積み重ねてきた努力が、大舞台で花開いた形となりました。ウッズの陰に隠れて静かに展開した最終日のゴルフも、築き上げた実力があったからこそ。自分のゴルフに集中することができ、世界屈指の猛者たちを凌駕できたのは、ここ数年間の彼なりの静かな戦略があったからだと思うのです。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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