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佐藤信人の視点 勝者と敗者

ウッズ完全復活へ 判断すべきバロメーター

バッバ・ワトソンの2年ぶり復活優勝で幕を閉じた「ジェネシスオープン」。その一方で、多くのファンの過熱度が話題となった復帰2戦目のタイガー・ウッズは予選ラウンドで姿を消しました。

ウッズのプレーを見て感じたことは、まだまだ“完全復活”には時間がかかりそうだなという印象。特にショットの乱れが顕著で、フェアウェイキープ率(46.43%)の低さは、私の目には大きなダメージとなっているように映りました。

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選手の調子の良し悪しを計る際、練習場でのスイングや本番の1シーンでは判断がつかないと思っています。むしろ注目すべきは、プレッシャーがかかった時のプレー。ツアープロとしては予選落ちがかかる初日と2日目の1ショット1ショットが、本当のバロメーターになると思っています。

前回の「ファーマーズインシュランスオープン」では予選を通ったウッズでしたが、まだまだ本調子ではないことが今回の予選落ちで分かりました。その理由の1つに、ティショットでミスした後、彼の絶対王者としての風格、貫禄のようなものがまったく感じられない。むしろ“頼りなさ”を感じてしまう部分です。

全盛期の彼はティショットをどれだけ曲げようとも、セカンド以降で立て直せる強靭さを持っていました。ミスをミスと感じさせない、精神的なタフさを漠然と感じることができたのです。

また、ウッズはもともと練習場とコースで大きくスイングが異なるタイプで、練習場では力みの少ない素直なスイングである一方、コースでは上下動が激しく力強いスイングであることが特徴でした。ただ、これは悪い部分というわけではなく、ウッズがウッズである所以。それでも勝ってきた強い選手の1つの特徴ととらえていました。

ですが、現在のウッズにとっては、その練習場との差がギャップでしかなく、コースで埋めることができず右往左往しているように感じられるのです。ミスがそのままミスとなってしまう。曲がったティショットが大きなウィークポイントとなり、徐々に自分でゲームを難しくしてしまっているように見受けられます。

そして、“完全復活”を遠ざけている理由が、ウッズ本人の調子だけではないことも確かです。それは、彼の復帰前と復帰後で異なる周りの環境です。以前は280から290yd飛ばすことができれば大きなアドバンテージとなっていました。ですが、いまやダスティン・ジョンソンバッバ・ワトソントニー・フィナウといった300ydを超えてくる選手が多くなり、もはやウッズが飛ばし屋ではなくなった現実と向き合わなければいけないわけです。

このような厳しい状況下で、世界中のゴルフファンは「それでも強いウッズをもう一度…」という思いで見ていると思います。特に、残り1カ月半を切った「マスターズ」に間に合うかどうか。現実的に調整できるのは、次戦出場を表明した「ザ・ホンダクラシック」(2月22日~)を含めた残り2、3試合。そこで私が注目しているのが、彼が何試合、予選通過できるかだと思っています。

全盛期を過ぎたウッズと言えども、過去に「マスターズ」を4度も制した男です。精神面、体力面とも万全に挑むことさえできれば、彼の経験は絶対に生きてくると信じています。他の選手もプレッシャーがかかるオーガスタの舞台では、経験は大きな財産。スタートラインに立てさえすれば、絶対王者はきちっとスイッチを入れ替え、本調子で本番を迎えることができると思っています。

残りの数試合、優勝でも上位争いでもなく、プレッシャーのかかった予選ラウンドでどのようなショットを見せてくれるのか。ミスをミスと感じさせない、かつての強靭なウッズが見られれば、完全復活もいよいよ間近と言えるでしょう。(解説・佐藤信人)

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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