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佐藤信人の視点 勝者と敗者

谷原秀人と世界1位が持ち合わせる「能力」

◇世界選手権シリーズ◇WGCデルテクノロジーズ マッチプレー◇オースティンCC(テキサス州)◇7108yd(パー71)

年頭から目標にしていたマスターズ出場権獲得のために、最後のチャンスとなった今大会で4位に入った谷原秀人選手。準決勝では世界ランク1位のダスティン・ジョンソンに惜敗しましたが、世界ランクは48位となって来週はオーガスタに立ちます。実は、谷原選手とジョンソンには共通点があります。それは、「引きずらない」ことです。

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二人は、ミスやアンラッキーなどプレー中にショックを受ける場面で、感情の浮き沈みを表に出しません。これは、あきらめよく引きずらないからです。試合自体にはすごくあきらめが悪いです。図太く粘りあるプレーで上位を目指します。ただ、1打のショックに対して切り替えが大変早いです。

強い選手は、この能力を持っています。優勝争いで、思いどおりにならずカッカしているとしましょう。隣を見ると、争っている相手が自分よりカッカしています。それを見たら冷静になった、ということは多々あります。半面、相手が「これはカッカするだろう」というミスをしたにも関わらずポーカーフェイスなら「なぜ?」となり、自分のプレーに集中を欠くことになります。いわゆる、相手として「やりづらい選手」です。

谷原選手のメンタル面の特徴をもう一つ挙げると「ビビらない」ことです。今回は、マスターズ出場の目標達成のために「ベスト8以上」という明確なラインを作って参戦しました。しかも、世界のトップ64人のフィールドです。調子の良さはあったでしょう。しかし、海外だろうが、WGCだろうが、自分より世界ランク上位の選手と戦って勝ち抜いていけたのは、普段どおりの力を発揮できた証拠。それを支えたのは、動じない心です。

若いころから「うまい選手」でした。そこに心の強さも加わり、プロゴルファーとして円熟の時期を迎えています。今回のプレーでは安定感を見ることができましたし、これ以上ない達成感を得ました。とてもいい状態でマスターズに行けることでしょう。

2007年に出場していることから、コースや雰囲気を知っています。谷原選手の「ビビらない」力は、マスターズを経験していることからも存分に発揮されると思います。前回は予選落ちでしたが、この10年で成長した姿をオーガスタで見せてくれることでしょう。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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