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佐藤信人の視点 勝者と敗者

賞金王かかる最終戦 4選手の“微妙”なスタンスの違い

◇国内男子◇日本シリーズJTカップ 事前情報◇東京よみうりカントリークラブ(東京)◇7023yd(パー70)

小平智選手、宮里優作選手、チャン・キム選手、池田勇太選手の4人に絞られた賞金王レース。近年まれに見る激しい争いは、最終戦「日本シリーズJTカップ」までもつれ込みました。

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もちろん現ランク2位以下の3選手は優勝必須ということで、現1位の小平選手が優勢であることは間違いありません。ですが順位や金額などの差と同じくらい、4選手が見据える国内ツアー終了以降のスタンスの違い、それによるメンタルへの影響が大きく結果を左右するのではないかと思うのです。

これまで小平選手は常に世界を視野に入れた発言で、「三井住友VISAマスターズ」の優勝会見では「賞金王が目標ではなく、来年の『マスターズ』の出場権(世界ランク50位以内)を得たい」と口にしています。

賞金王を最終目標とせず、途中経過と見ている彼のスタンスは、プレッシャーを大敵とするゴルフというスポーツにとって、とても重要なメンタルの武器となってくれると思います。

一方で現2位につける宮里優作選手は、シーズン序盤から常に賞金王を意識して戦ってきたように見受けられます。「今年は何が何でも絶対に獲りにいく」というスタンスで、最終戦に勝負をかけてくると思われます。

現3位チャン・キム選手は、どちらかというと小平選手寄りの考え方かもしれません。彼は現在世界ランク77位。日本ツアーで賞金王を獲ることも大事ですが、それ以上に50位以内に向けてジャンプアップさせたいという気持ちのほうが強いと思われます。

キム選手が「小平選手寄り」とするならば、現4位の池田勇太選手は「宮里選手寄り」と言えるでしょうか。世界ランクは現37位と、ほかの3選手に比べてマスターズの出場権に近い存在です。優勝してより安心できる位置にいたいと思うことも確かですが、それ以上に「2年連続賞金王」という称号は、彼の眼に魅力的に映っていることでしょう。

また4選手は狙っているとは思えませんが、“賞金ランク2位”という立場も今後世界で戦うためには重要なポジションと言えます。1位と同様、翌年の「WGCメキシコ選手権」や「全英オープン」の出場権が得られるからです。

このように、賞金王候補4選手それぞれにスタンスの違いがあり、世界を意識したモチベーションがどのように交錯して、どのような結果を生み出すか――最終日、東京よみうりカントリークラブの18番まで誰が賞金王になるか分からないというスリリングな展開を期待しています。(解説・佐藤信人)

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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