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佐藤信人の視点 勝者と敗者

いまこそ考えるツアー出場権1枠の重み

金谷拓実選手(東北福祉大2年)が、日本人として2011年の松山英樹選手以来となる「アジアアマ選手権」を制しました。

金谷選手と言えば、昨季の「日本オープン」で池田勇太選手に競り負けたものの、90年ぶりのアマチュア優勝まであと一歩(2位)まで迫ったことで、多くのゴルフファンの記憶に残っている選手だと思います。15年の「日本アマ」で史上最年少17歳51日でタイトルを奪取し、高校時代からその実力は折り紙つき。世界アマの大会でも日本チームの代表として活躍を見せてきました。

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そんな彼が2年前のクオリファイングトーナメント(以下QT)では実力を発揮できず、出場権を逃したことで大学進学を決めました。このQTで国内ツアーの資格を獲っていたならば、すぐにシード選手になっていたと思う反面、今回のようにマスターズ、全英オープンの出場資格が獲れていたかは分かりません。アジアアマの頂点に立ったいまだからこそ、進学しておいて良かったと実感していると思われます。

金谷選手の快挙を受け、いま考え直すべきことは、日本ゴルフツアー機構(JGTO)が設定しているQTについてです。出場するアマチュア選手は、いくつもタイトルを獲得した選手も、ノータイトルの選手も、横一線で実力を測っています(※JGTOの推薦枠はあるが、明確な優先枠はなし)。「日本アマ」を獲ろうが、世界大会で活躍しようが、白紙の状態なのです。過去の成績よりも、QTが行われる一週間の調子で人生が決まってしまう現状に、違和感を覚えるのは私だけではないと思います。

将来有望の若手選手の成長スピードは、他人が推しはかれるものではありません。制度で決められたルールに基づき、おのおのが自力で資格を獲得していくことが、プロになる道であることは重々承知しております。ただ、QTでの測り方は少し強引で、若い選手にとって大きな負担となっていることは、やや健全ではない気がしているのです。

個人的な意見ではありますが、アマチュアの大きな大会には、もう少し目に見える形で褒賞を与えて良いと思っています。功績を名誉だけで終わらせるのではなく、プロの試合に何試合か出場できる権利やQTではファイナルから出場して良い権利など、もう少し明確なプロセスを選手に与えてはどうかと思うのです。

これはある意味“えこひいき”ととらえられるかも知れませんが、私は存在して良い“えこひいき”、存在すべき“えこひいき”だと思っています。そうすることでアマチュアの大会にも、より明確な意味合いが生まれますし、出場する選手のモチベーションにもつながります。また、プロのレギュラーツアーにとっても新陳代謝となり、選手層を厚くすることにつながると思うのです。

ちょうど先週の米ツアーにて、59歳のフレッド・カプルス「レギュラーツアーの出場は今季で最後にする」と宣言しました。大ベテランによる勇気ある決断です。その背景には、彼が抜けたことで空いた1枠の出場権が存在します。1枠でも有望な若手選手にチャンスが生まれること。この重みをカプルスは肌で感じていたのだと思われます。

以前から多くの場所で議論の対象となっている、プロとアマの垣根――。私は単純にその垣根を下げるべきだとは思っていません。ジュニアはジュニアの大会、アマはアマの大会で一番を決めるべきだと思っています。それに準じてスムーズなプロへの道を設ける。プロの門戸を変えればアマチュア選手も変わる。われわれ協会側が、いまよりもっと1枠の重みを感じ、トーナメントの在り方を考え直すべきことに、気づかされる出来事となりました。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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