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「もう自分のためじゃない」渋野日向子が紡ぐ奇跡のストーリー

◇国内女子◇大王製紙エリエールレディスオープン 最終日(24日)◇エリエールGC松山(愛媛県)◇6580yd(パー72)

渋野日向子が奇跡の逆転賞金女王へ、可能性を広げた。6バーディ、ボギーなしの「66」で回り、通算19アンダーとし、2打差を逆転した。一時は首位に6人が並ぶ混戦を制し、今季国内4勝目を挙げた。賞金ランキングは3位のまま、1位・鈴木愛との差を1511万1351円に縮め、最終戦に望みをつないだ。

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涙があふれだした。歓喜の瞬間はプレーオフに備えた練習グリーンで迎えた。朗報を聞くと大歓声が飛び交った。9月「デサントレディース東海クラシック」以来の優勝。「応援してくれる人、支えてくれる人たちのため、(今大会を含め)残り2戦は成長した姿を見せたいと思っていた。もう自分のためじゃない。その中で、最高の結果を出せた」。多くの想いを背負う21歳が、照れ臭そうに笑った。

最終組の2つ前で、ランク1位の鈴木との直接対決に緊迫感が張り詰めた。互いにプライドをぶつけ合った。「ナイスバーディとかは言い合っていたけど、会話はなかったですかね」。3バーディを奪いながら前半で1打差をつけられたが、後半10番からの2連続バーディで逆転した。下り4mを沈めた15番のバーディで突き放し、鈴木のツアー初の4週連続優勝を阻止した。「緊張感、ありましたね。気持ちでは絶対に負けないという思いがあった。前より少しはメンタルが強くなった、かな」。頬を赤らめ、少し胸を張った。

前週26戦ぶりの予選落ちを喫した。一度は女王争いに終戦宣言した。地元・岡山県に帰り、家族、ファン、青木翔コーチらと話した。「あるファンの方に、今まで当たり前のように『予選を通過してくれてありがとう』って言われた。確かに、よく頑張っていたなって思う」。プレースタイルを見直した。「全英女子オープン」を制したのは、ピンを刺す超攻撃的なゴルフだった。それが、経験を重ね、女王を争う重圧もあってか、知らぬ間にためらいが出ていた。青木コーチには「自分のゴルフをしよう」と言われた。今大会を前に原点回帰を誓った。

決勝36ホールで12バーディ、ボギーなし。最終日に駆け付けた青木コーチの前で最高の結果を出した。成績次第で消滅する可能性もあった史上初のルーキーでの最年少女王の希望を残した。「もう意識しない方が、いいですよね。最後は楽しく、自分のゴルフがしたいです。考えないです」と笑った。メジャーを制した際、海外メディアに「今世紀最大の物語」と評されたシンデレラストーリー。「今日ほど、誰かのために勝ちたいと思ったことはない」。第1章のエピローグへ、みんなのために想いを紡いだ。(愛媛県松山市/林洋平)

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