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30勝目の片山晋呉 勝負を分けた数センチの差

◇国内男子◇マイナビABC選手権 最終日(30日)◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7217yd(パー72)

これまで29勝を積み重ねてきた。だが、30勝目となったこの日曜日も、最後のパーパットを沈めるまで勝利は確信できなかった。徹したのは自らのプレースタイル。片山晋呉は最終18番で小林伸太郎を1打差で振り切る1m弱のウィニングパットをカップに沈め、そして吠えた。

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「本当に小さいことなんだけど、それでも大切な勝負のあや」。そう振り返ったのは、最終18番のグリーン上での、わずか数センチの差だった。

2打リードで迎えた18番(パー5)は、追い掛ける小林が残り185ydの池越えとなる第2打を、6Iで先にピン左上5mに2オンさせた。小林がイーグルを獲れば片山に並ぶ。一方、片山の球はフェアウェイ右のファーストカット。ピンまで残り180ydだったが、片山はフェアウェイへの刻みを選んだ。

「10回打って7回はうまく載せられるだろうけど、その3回のリスクがボギーになる。パーのリスクなら取るけれど、ボギーのリスクは回避したい」。片山の3打目は残り97yd。「彼(小林)は最後に狭いところに2オンさせてくるし、まだ神様が『いいよ』って言ってくれない」。52度のウェッジで放った狙いすました第3打は、スピンと傾斜で小林の球のわずか数センチ内側に入って止まった。その数センチが大きかった。

上からのパットは池に向かって高速な下りとなる。「あのパットを自分が先に打たないといけないとしたら、狙いにいけない。その後に、彼(小林)がイーグルパットを打つとしたら、外しても2位は変わらないし狙っていける。そういうパットは入ると思う」。だが、数センチの差で、先に打ったのは小林だった。小林は2パットのバーディ止まり。片山も2パットでカップに沈め、1打差で逃げ切った。

スタート時点は2打差を追う展開だったが、2番で約20ydをチップイン。5番も4mを沈めてバーディとし、小林が5番でダブルボギーをたたいたことで、1打差の首位に立った。それでも、以降は崩れず踏みとどまる小林を見て「これは1打勝つパターンで行こう」と、これまで幾度も結果を残してきた戦略に切り替えた。

「静かなゲーム展開の中、見せつけながらやれたかな」。チップインバーディには帽子を取ってギャラリーに応え、球にキス。17番のバンカーショットがカップのわずか手前で止まると、感情の赴くままに悔しさをあらわにした。「やっぱり勝負だから」。最終組で回った小林、そして香妻陣一朗はともに未勝利。29勝の片山とは貫禄が違っていた。

「25勝目もそうだったけど、30という数字はやはり重たい。これまで(片山を含め)6人しか味わったことがないところですから。43歳でこうやってやれていることが嬉しいし、やっていて良かったなと思う」

40歳を超えた2013年から、これで4年連続勝利を挙げた。「全身が震えるように嬉しかったのは(優勝が決まった瞬間の)10分から15分くらい。もうそれはないし、今は来週火曜日の練習ラウンドをどうしようかなとか、明日の配膳のこととかを考えている(笑)。もう(あの喜びは)ないですね」と、優勝会見では早くも “次”を見つめていた。(兵庫県加東市/今岡涼太)

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