2026年 日本プロゴルフ選手権大会 センコーグループカップ

レフティゆえのトラブルショットも完璧に 細野勇策は「左打ちを背負って」プロゴルファー日本一

2026年 日本プロゴルフ選手権大会 センコーグループカップ 最終日 細野勇策
細野勇策がメジャー初優勝をあげた(C)JGTOimages

◇国内メジャー初戦◇日本プロゴルフ選手権 センコーグループカップ 最終日(24日)◇蒲生ゴルフ倶楽部(滋賀)◇6991yd(パー72)◇晴れ(観衆3589人)

「右だったらな…」――。ゴルフを始めた頃から何度もあった“ないものねだり”が初優勝の懸かる勝負どころでも脳裏をよぎった。2打リードで迎えた後半15番、細野勇策はフェアウェイウッドで刻んだティショットを左のがけ下に落とした。レフティにとっては、背中側のフェアウェイ方向を狙って目の前にそびえる木々を越えていかなければならない場面。「右(打ち)だったら、スライスをかけられるじゃないですか」。ラフからドロー回転をかける、極めて難度の高いトラブルショットといえた。

諦めて横に出すことも決して簡単ではない状況から「イチかバチかじゃないけど、そんなに太い枝もなかったので…」と上を狙った。52度のウェッジを握って賭けに出ながら、右の木に当てて落とされる最悪のケースだけは回避する保険をかけていたという。「失敗するとしても左。左だったら、20ydくらいは左のラフあるので」。グリーン手前のフェアウェイに刻んで「もう完璧でした」と胸を張る一打から、アプローチを寄せてスーパーセーブ。通算15アンダー、後続を2打差で振り切る歓喜のフィニッシュへとつなげた。

これが9度目の最終日最終組。惜敗を繰り返してきた中でも「結構、ショックやったですね…」と言ったのが昨年9月「ロピア フジサンケイクラシック」。首位で出た最終日の16番(パー3)で池に4度もつかまってまさかの「11」をたたいた。それでも「あれは立ち直るのに…1日くらいかかりましたね」と笑えるのが23歳の強さだ。「起こったことはしょうがない。あんまり引きずっても、いいことは絶対ないと思うようにして1日くらいで忘れました」

2026年 日本プロゴルフ選手権大会 センコーグループカップ 最終日 細野勇策
日本人レフティとしては35年ぶりの優勝だった(C)JGTOimages

ショッキングな敗戦をあっさりと割り切れるのも、日本ではまだまだ少ないレフティゴルファーとして苦労を重ねてきた過去があるからかもしれない。ジュニア時代は左打ち用のクラブがなく、父・誠一さんがレディースクラブを切ったり、海外から取り寄せたりと手を尽くしてくれた。現在クラブ契約するピンは「レディースからジュニアから、カタログにあるものは全部、左用があるんです。自分としてはありえないことで、すごくうれしかった。それでお世話になり始めました」と明かす。

レギュラーツアーに定着してからもトーナメント期間中に会場外の打ちっぱなしで練習することを好むのは、自分の背後で打たなければならなくなる右打ちの選手への気遣いゆえ。「誰も気にせず打てるから、町の練習場が好きで。それでも、はじっこが多いですけど、ちょっとずつ増えていってくれたら」と願う。基本的にフィル・ミケルソンバッバ・ワトソンといった同じレフティの動画は参考にしないとか。よく見ているのは「タメのあるスイングが好き」という世界ランキング3位のキャメロン・ヤング。脳内でイメージを反転して左打ちのスイングに落とし込めるのも、長年の積み重ねがあってこそだ。

日本人レフティとしては1991年「ダイドードリンコ静岡オープン」の羽川豊以来のタイトル。今季国内ツアーメンバー191人でレフティは細野と笠原瑛しかおらず、ずっとその期待をかけられてきたことも苦ではなかったと話す。「毎試合、どこかしらで『レフティ、頑張れ!』と声をかけてもらえる。左打ちを背負ってじゃないけど、戦っていけるのは(むしろ)心強くて。もちろん、ずっと背負っていきたいです。海外の選手と比べても少ないですし、日本人のレフティの皆さんに応援してもらえるゴルファーになりたい」。環境的な不便さも、苦い惜敗も前向きに乗り越えてプロゴルファー日本一に輝いた。(滋賀県日野町/亀山泰宏)

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