クラブのこだわりを語りまくる/蝉川泰果 2023年新春インタビュー(2)
飛躍を経て「努力」の年へ/蝉川泰果 2023年新春インタビュー(1)
95年ぶりの「日本オープン」アマチュア制覇、史上初となるアマチュアでのツアー2勝を達成した蝉川泰果。プロに転向してまだ2カ月あまりの21歳は、2023年の国内男子ゴルフ界をけん引する期待を背負う。1月11日は22歳の誕生日。単独インタビューで、新たな戦いに向けた抱負を語った。
「努力」の2023年
ジャンプアップを果たした昨年を経て、プロ2シーズン目となる2023年。蝉川は色紙に記した漢字一文字に思いを込めた。
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「“努力”の『努』。大学を卒業して、大半の人なら新卒で働く歳になって、下積みの努力をする時間があると思う。僕もその気持ちを忘れずに下積みで努力をして、自分の経験値と実績を積み上げていければ評価も上がっていくので、その努力を一年間通してできれば」
2023年は、初出場のPGAツアー「ソニーオープンinハワイ」(12日~/ハワイ州ワイアラエCC)で始動する。前年大会を制した東北福祉大OBの先輩・松山英樹との練習ラウンドを「(予定は)全くないです。できたら回りたいですけど…」とひそかに楽しみにしつつも、「出るからには勝ちに行く。どういった結果になっても、自分の経験としてプラスにできれば」と力を込める。
「松山さんみたいにメジャーを勝っている選手たちが集まる大会なので、そういった選手たちと戦えることが楽しみ」と世界最高峰の舞台に心を躍らせる。「JGTO、アジアン、DP(欧州)と昔から続いているいろいろなツアーがある中で、確実にナンバーワンなのがPGA。本当のナンバーワンを決める試合にずっと出場できるようになって、そこで勝てれば世界一と言っていいと思う」
「ソニーオープン」開幕前日の11日には、22歳の誕生日を迎える。将来的にはPGAツアーを主戦場にすることを目標に掲げるが、「30歳まではまだまだ自分のゴルフが伸びると考えている。その伸びしろを崩さずに伸ばしていく。今はまだまだ“過程”なので、30歳までに(日本ツアーで)何勝もしたいし、PGAでも勝ちたい。もっともっと大きく、歴史に残るような選手になりたい」と意気込んだ。
「150点」の始まりは“号泣”
史上初めてアマチュアとしてレギュラーツアー2勝をマーク。大躍進を遂げた2022年シーズンは「“150点”の、出来すぎな年になった」と総括した。しかし、出場した試合全てで思うような成績を残せたわけではない。
頭に浮かぶ試合がある。4月に地元・兵庫で行われた「関西オープン」。後続に1打差をつけて首位で大会を折り返したが、3日目に2オーバー「73」をたたいて3位に後退。逆転Vの望みをかけて臨んだ最終日も「77」の大崩れで、終わってみれば17位だった。「あんなに号泣した試合は今までないんじゃないかな。なんか、思い出すだけでもいろいろ感じますね…」。飛躍の一年は、涙で始まった。
その敗北を成長につなげたことも自負している。6月の下部ABEMAツアー「ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山」での優勝をきっかけに、全ての面で強くなった。「あの試合がすごくキーになった」。
地元・兵庫で開催された9月「パナソニックオープン」で遂げた、レギュラーツアー初V。5カ月前の“号泣”を糧に、3日目にアマチュア最少ストローク記録を2打更新する「61」をマークして堂々の首位に立った。「ハーフターンの時にはあきらめそうになっていた自分もいた」と思い出す最終日は1打差の2位に後退して前半9ホールを終えたが、バックナインで怒とうの5連続バーディを奪い、成長した姿を見せつけた。
「最後まであきらめずに逆転を狙いに行った結果として優勝できたことは、経験として今後につながる部分だった。気持ちの入った試合だったので、あれくらい気持ちを全面に出して戦うことの大事さを学んだ」
勢いそのままに臨んだ10月の国内メジャー「日本オープン」では95年ぶりとなるアマチュア優勝。4日間、72ホールを振り返って勝利を手繰り寄せたクラッチショットには、3日目9番での1オンイーグルを挙げた。
「イーグルを獲ることはアマチュアの方にとってはなかなか難しいことだと思うし、アマチュアの方にはできないことが(プロに)求められていると思う」。プレッシャーのかかる場面でもアグレッシブに戦い抜くそのスタイルに、多くのゴルフファンが魅了された。「ああいった勇気を持ったショットが日本オープンではすごく良かったと思う」
11月に地元で行われたプロデビュー戦「マイナビABCチャンピオンシップ」も4日間を戦い抜いて28位で終えると、翌週の「三井住友VISA太平洋マスターズ」では後続に3打差をつけて首位で迎えた最終日、大ギャラリーに囲まれながら戦った最終組で「76」と失速。同組で回った石川遼に逆転Vを許した。
「気持ちよかったし、楽しかった。でも、それだけ多くのギャラリーの方の前でインパクト、“強い優勝”ができていたらもっと認めてくださった方も多くなっていたと思うので、すごく悔しい」。プロ初優勝はお預けとなったが、ルーキーが残した数々の軌跡を、すでに多くのゴルフファンが認めているだろう。
「どの試合も勝ちたいけど、やっぱりメジャー大会は出られる選手が限られる大事な大会なので、そういう大会に出て優勝することが一番だと思う。でも、やっぱり、どの試合も勝ちたい」。勝利を渇望する強い気持ちが、蝉川の原動力となっている。
新シーズンへの思い
焦ることなく、着実なステップアップを目指す今年は「まずはプロとして1勝を挙げる」と目標を掲げる。「どの試合にフォーカスしてというよりも、出る試合全てで集中する。ギャラリーの方は試合ごとに変わるので、そういった方々のためにもどの試合でも優勝を狙って、戦っている姿を見てもらってプレーで魅了できる選手になっていければ」
「去年のパナソニックオープンと日本オープンで優勝したときよりも成長した姿をお見せできると思う。果敢に攻めていくスタイルをこれからも貫いていくので、そこを応援していただけたらうれしい」。挑戦はまだ始まったばかりだ。
(聞き手・構成/内山孝志朗)
取材協力/樫山ゴルフランド