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天才でも変人でもいいじゃないか!デシャンボーのハンチング帽と涙の理由

◇米国男子◇ジョンディアクラシック 最終日(16日)◇TPCディアラン(イリノイ州)◇7268yd(パー71)

「大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない」。周囲から“変人”と揶揄されながら、相対性理論を打ち出して常識を覆した科学者アインシュタインの言葉だ。

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米ツアー初優勝を遂げたブライソン・デシャンボーは、かなりの変人である。23歳。独自のスイング理論を展開して、腕とクラブが一直線になるように構える。アイアンのシャフトは全番手で同じ長さに統一。「僕はある意味で、ゴルフ科学者なんだ」と言ってのけ、メディアをざわつかせた。

変人ぶりは好奇心旺盛な少年時代から。1冊の本との出会いがあった。ゴルフコーチのマイク・シャイ氏から手渡されたのは、スイングを工学的に分析する分厚い本。物理好きのデシャンボー少年は毎日のように読み返した。「なんでアイアンのシャフトの長さは違うんだ?」「なんでライ角は違うんだ?」。様々な疑問を持った。自らの考えとともにスイングの型を作っていった。

しかし、理解者は少なかった。異端児としてからかわれた。思春期は孤独を感じた。だからこそ、強い信念を貫いて、我が道を進む人物に憧れを抱いた。

42歳の若さで飛行機事故により急逝したペイン・スチュワート。メジャー3勝のレジェンドは、ハンチング帽をかぶりニッカボッカを履きこなす伊達男だった。個性的な服装の変わり者として扱われたが、その人気は絶大だった。

デシャンボーは、スチュワートと同じ南メソジスト大に進学して腕を磨いた。いつからか彼をまねて、ハンチング帽をかぶるようになっていた。「彼は信じられないような成績を残した、僕の憧れの人だ」。奇しくもスチュワートが初優勝を遂げたのは、35年前のこの大会。「彼のようなキャリアを歩んでいきたいと思う」と誓った。

デシャンボーには夢がある。「僕のスイングは、奇妙でおかしなものと感じるかもしれない。でも理論は絶対に正しいはずなんだ。だからいつかアマチュアを指導してみたいね」と、照れ笑いを浮かべた。

「僕らは、人が正しいと思ってやっていることでも疑問を投げかける。だから、自らが選んだ道を突き進んで目標にたどりつくしかない。そのときに『正しい』ってなるんだ。きょう証明できたと思う。支えてくれた人たちに感謝する」。自慢のハンチング帽をちょこんと載せた“若者”の目から、涙があふれ出た。(イリノイ州シルビス/林洋平)

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