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なぜ松山英樹は「ダメだった」と米ツアー1年目を振り返ったのか?

米ツアーのシード選手として迎えた松山英樹の最初の1年が幕を閉じた。昨年10月にスタートした2013-14年シーズン。開幕戦の「フライズドットコムオープン」で3位に入り、年が明けると2月「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」で優勝争いの末、4位に。そして6月初旬「ザ・メモリアルトーナメント」で初優勝の歓喜の瞬間が訪れた。

24試合に出場(1回の棄権を含む)し、トップ10入りが4回。予選落ちはわずか3回。日本勢としては2008年の今田竜二以来となる最終戦にも出場。フェデックスカップポイントランキング28位、獲得賞金額は283万7477ドル(約3億412万円)にまでなった。

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1年間の結果としては、本格参戦1年目の成績としては十分に評価されるべきものだが、松山は終着点のイーストレイクGCで「うーん、ダメでしたね」と、振り返ったのである。

周囲の称賛を先んじて断ち切った理由は、その初優勝以降の出来にあった。「勝つ前は目標が勝つことだったから、満足感はありましたけど…それが終わってからトップ10が1度もない。そんなシーズンで満足できるとは言えない」。

日本人メジャー初制覇への期待も、はちきれんばかりに膨らみ続けているが、2年ぶりに出場した「マスターズ」で予選落ちし、「全米オープン」は昨年10位から35位、「全英オープン」は6位から39位に、「全米プロ」は19位から35位へと、今年は数字上で軒並み後退した。

「年に4回しかないメジャーに、うまく調子を合わせるのは難しいけれど、去年はどの試合でもトップ25を外さないゴルフをしていた。去年も調子がいいとは思わなかったが、安定する何かがあった。それがないとずっと崩れたまま。そのきっかけを見つけないと」。特にグリーン上でのスランプが結果に直結。8月末には「ラインがよく見えてこない。こんなことは去年はなかった」と、こぼしている。

ただ、松山の視線はいつだってものすごく高いところを向いている、ということは忘れてはならない。だからこちらで勝手にハードルを下げて見れば、やはり前進した痕跡も少なくない。

自らも技術的な向上を確信しているポイントが、グリーン周りからのアプローチ。スクランブリング率(パーオンを逃したホールで、パー以下のスコアを記録する確率)は今年60.42%で、全体41位だった。昨シーズンは56.29%で、121位相当(ツアーメンバーではなかったため、順位換算はされず)だったことを考えれば、目覚ましい進歩だ。

それ以上に収穫だったのが、体の状態を取り戻せたことだろう。昨夏から今年半ばに至るまでは、体調不良や左手首の故障といった、全力プレー以前の問題の方が大きかった。

健康な体でゴルフができる。毎日居残ってボールを打ち続けられる。その喜びはいま「去年は自分の中に『こうしておけば、どうにかなる』ものがあった。(その後の)怪我の影響で、知らぬ間にかばって打っていたのかもしれない。それが治ってきて、そういう(かばう)動きが入るのがショックで」という苦悩を生んでもいる。ただそれは、痛みに耐え選手生命のリスクと直面していた1年前の苦悩とは質が違う。だからこそ「その動きを直すことが課題。それは“良い課題”」と続けられた。

アトランタでの最終戦は、納得のいかないラウンドを続け、インタビューの時はやっぱり不機嫌そうだったが、ロープの中では少し緊張感の解けた表情が印象的だった。

バーディを獲って歓声を浴びても、キャップのつばを人差し指と親指で軽くつまみ、口元をギュッと引き締めるだけのポーズが定番になりつつあったが、この試合では、ボール持った手を顔の高さまで掲げ、しっかりと顔を上げるシーンが目立った。「松山くんで、こんな写真が撮れるのは珍しい」とカメラマンが笑ったのもうなずける。いま抱えるストレスは、やはり1年前のものとは別物だ。

シーズンのラストラウンドを終えた後、駐車場で突然「ヒデキ!」と呼び止められた。お土産用のピンフラッグに、最終戦まで生き残った選手たちのサインを記念として集めていたケビン・ナが「お前も書いてよ」と頼んできたのだ。

3週後に始まる新シーズンでは、松山は確固たる実績を持つ若手エリートの一人として、一層厳しい目で見られるようになる。ショットやパット、アプローチだけでなく、ファンサービスの面も、そして何かと反省を促されたプレー中のマナーの面でも、より一層だ。

ただ今は、1つの戦いを終えたばかり。きっと、そんな鋭い視線にも対処し得る、丈夫な体で来季を見据えられることが何よりも心強い。(編集部/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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