待望の初優勝から早くも2勝目・・・ウォーカーはいま、新シーズンで最もホットな男だ。（Tom Pennington/Getty Images)）

「ソニーオープンinハワイ」で3日目までの2打差をひっくり返してツアー2勝目を飾ったジミー・ウォーカー。最終日は比較的難しい序盤で1バーディと静かにスタートし、9番のバーディを奪うと、バックナインでは無傷の5バーディと“ビッグウェーブ”をつかまえ、混戦の優勝争いを一気に突き抜けた。

「悲願の初優勝」が34歳のウォーカーにもたらした“進化”を感じる逆転劇だった。2001年に22歳でプロ転向したウォーカーは、昨年10月に行われた2013年-14年シーズンの開幕戦「フライズドットコムオープン」で米PGAツアー初優勝。ツアーに出場するようになってから7年、187試合の敗戦がウォーカーにとって「1勝」への厚い壁だったが、それを乗り越えると3ケ月後、わずか5試合で2勝目を手に入れた。

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「パーパットは、ときにはバーディパットよりも意味を持つ。“勢い”を切らさないからね」

逆転優勝の決め手として、14番で沈めた3.5メートルのパーパットが大きかったと振り返るウォーカーは、勝ち方を覚え、自信に満ち溢れているように見える。タイガー・ウッズら世界ランキングの上位勢がオフを満喫している期間とはいえ、早くも今シーズン2勝目で、世界一競争の激しいPGAツアーで首位を突っ走っているのだから当然だ。

34歳のウォーカーに“シンデレラボーイ”というのもおかしいが、サクセスストーリーは、ツアーを活性化する重要な要素として位置づけられている。実際、米ツアーをはじめ海外ツアーには、勢いのある選手にチャンスを与え、道を開く仕組みがいろんな所に仕込まれている。

たとえば、今大会で8位タイに入った谷原秀人は、PGAツアーの優先出場順位24番目の「直前の試合で10位タイ以上かつ他に資格のないプロ選手は、次のオープントーナメントに出場できる」というカテゴリーに該当し、再来週の「ファーマーズインシュランスオープン」（カリフォルニア州、トーレパインズGC）に出場できる。ちなみに、今季米ツアーを主戦場とする石川遼は「ウェブドットコムツアーの上位選手（50人）」という、優先順位25番目のカテゴリーで出場している。

一方、国内男子ツアーは15年から同様の出場枠を10位以内に改定する予定だが、現時点では5位以内。また、国内女子ツアーは、通称“あすみんルール（辻村明須香の07年開幕戦の活躍がきっかけ）”として08年から同じような制度を導入しているものの、これは前週3位以内という狭き門で、適用例も「年に1人いるかいないか」と非常に少ない。

同じ国内でも、アジアンツアーとの共催競技「アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン」を昨年制した川村昌弘は、同大会優勝により、アジアンツアーのシード権を得て、次はアジアと欧州の共催試合にも出場できる。その大会で優勝すれば、今度は欧州ツアーのシード権まで得ることができる。それぞれにツアー活性化の思惑があるからこそ、世界中で増加中の共催試合は、勢いのある選手の前に可能性の道筋を広げていく。

もちろんその門が広かろうが狭かろうが、チャンスを手にするためには実力が必要だ。“34歳での開花”につながった種について、ウォーカーは、12年2月にスイングコーチのブッチ・ハーモンと知り合ったことを挙げている。

ただの飛ばし屋だったウォーカーに、ハーモンは「私は君を信じているよ。それに君には大きな才能があることも確信している。そして、君は自分を過小評価していると思う」。ウッズの元コーチでもある名匠の眼力と言葉は、ウォーカーに自信を与え、同年夏からは2人で本格的に“眠れる才能”に磨きをかけ始めたのだという。

手がかりをつかんでからまだ2年。「ライダーカップ出場が最終目標だ」というウォーカーは、この優勝で米国代表を争うポイントランキングでも、前週の8位からさらに順位を上げることになる。（ハワイ州ホノルル／今岡涼太）