2026年 ツアー選手権

「もうちょっと」の先へ 松山英樹の“未勝利シーズン”に見えたグリーン上の進化

2026年 ツアー選手権  最終日 松山英樹
松山英樹は13年目のレギュラーシーズン、プレーオフシリーズを終えた(Andrew J. Clark/ISI Photos/ISI Photos via Getty Images)

◇米国男子プレーオフ最終戦◇ツアー選手権 最終日(30日)◇イーストレイクGC(ジョージア州)◇7440yd(パー70)

3年ぶりに、勝利に届かないシーズンを過ごした。フェデックスカップ・フォール(秋季シリーズ)を残しているとはいえ、PGAツアー通算11勝を誇る松山英樹が、プレーオフシリーズ最終戦まで優勝がなかったのは2023年以来となる。だが、数字をひもとけば、今季を単純に“勝利のないシーズン”と片付けることはできない。

2026年 ツアー選手権 事前 松山英樹
優勝がないまま秋季シリーズに向かう

3年連続12回目の出場を果たした「ツアー選手権」は、年間ポイントランク(フェデックスカップ)上位30人だけが出場できる舞台。そこに立つこと自体が、年間を通じたパフォーマンスを測る指標の一つだ。今季はトップ10の数も、昨季の1試合から6試合に増えた。ここまで23試合、シーズンを通して予選落ちがなかったのも初めてだった。そしてもう一つ、見逃せない数字がある。

今シーズンの「ストロークゲインド・パッティング」だ。パッティングがフィールド平均に対して、どれだけスコアに貢献したかを示すスタッツ。今季ここまでのそれは「-0.013」。数値はもとより、注目したいのがツアー全体の中で86位だったということ。記録のある151人の中で、ほぼ真ん中のポジションに上がった。

2026年 ツアー選手権 事前 松山英樹
エイムポイントでグリーンを読む

松山といえば、ツアー屈指のショットメーカーとして知られることは今さら説明するまでもない。だからこそ、かねてウィークポイントとして挙げられてきたのがグリーン上だった。シーズン終了時点で100位以内に入れば、2018-2019年シーズン以来、実に7年ぶりとなる。芝目が強いバミューダグラスのグリーンで行われたイーストレイクGCでの「ツアー選手権」開幕までは、スタッツはプラス圏で推移していた。

背景にあるもののひとつが、今季から試合で本格的に取り入れた「エイムポイント・グリーンリーディング」だった。足の裏の感覚で傾斜を感じ取り、手の指の本数などを使って打ち出すラインを決める方法。もともと数年前からエイムポイントの方法は知っていたという。ただ、本格的に取り組み始めたのは昨秋からだった。

松山は、「ライン読みの時間を短縮できたりする。足の感覚だけだと、試合になれば疲れてきて鈍ったりする。見た目と感じている傾斜の誤差を少なくしていくという意味では大きいのかな」と明かす。そしてもう一つ、「それはある」とメリットとして挙げたのがなぜ入るのか、なぜ外れるのか、その理由を明確にできることだ。

2026年 ツアー選手権 事前 松山英樹
傾斜器を使って丁寧に感覚と数値をすり合わせる

試合前の練習のルーティンもこれまでとは大きく変わった。一例としてまず約2mのラインを、4方向以上からまたいで足裏で確認する。そのたびにグリーン上に傾斜器を置いて、自分が感じた傾斜と実際の数値をすり合わせる。その上でストロークを行う。

黒宮幹仁コーチも、松山の言葉を引き取るように、その変化を説明する。「自分のエラーに気づきやすくなったと思います」。その上で、「打ち出しのミスなのか、ボールを打ち出すスピードなのか、ロール(転がり)の変化でラインがズレているのか。そこが明確になったことが、大きいんじゃないでしょうか。もっとチャレンジしたいこともあるので、松山プロと話し合いながら取り組んでいきたい」と続けた。

2026年 ツアー選手権 事前 松山英樹
黒宮幹仁コーチ、田渕大賀キャディと映像を確認

PGAツアー本格参戦13年目。かつて弱さと言われた部分と向き合い、そこに労力と時間を注ぐことは決して簡単なことではない。それでも34歳は、変えることを選んだ。「いいストロークと、いいエイムポイントががっちりと自分のものにできてくれば、もう少し精度が上がってくると思う。もうちょっとかな」

ちょうど1年前、松山はこんな言葉を残していた。「何かを変えないといけないのもある。継続してうまくいき始めている部分もある。それをどうしていくか」。1年後、優勝という結果には届かなかった。それでも、変えようとしたものの一つは、確かに数字になって表れた。

そしてまた、「もうちょっと」の途中にいる。(ジョージア州アトランタ/中村文香)

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