2025年 AT&Tペブルビーチプロアマ

松山英樹は今どんなスイングに取り組んでいるのか

2025年 AT&Tペブルビーチプロアマ 最終日 松山英樹
ラウンド中は常にはシャドースイング

◇米国男子◇AT&Tペブルビーチプロアマ 最終日◇ペブルビーチGL(6972yd)、スパイグラスヒルGC(7041yd、いずれもカリフォルニア州、パー72)

暴風雨となった3日目、上下ともにレインウェアを着た松山英樹は海から吹き付ける強い風雨など気にすることもなく、シャドースイングを繰り返していた。腰を動かしてインパクトの形を作り、自分のタイミングを探る。「これじゃダメだ。もっと左に乗っていかないと」。体の動きを確認している松山の大きな背中からは、そんな声が聞こえてきそうだった――。

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もどかしさ

2025年 AT&Tペブルビーチプロアマ 最終日 松山英樹 黒宮幹仁
小まめに動画を撮りスイングをチェックしている

前週「ファーマーズインシュランスオープン」が行われていたトリーパインズから北上し、モントレー半島のペブルビーチにやって来た松山は休むことなく、月曜から練習を開始した。

スパイグラスコースの打撃レンジに着くなり、黒宮幹仁コーチとスイングのセッションが始まる。黒宮は松山が一球打つたびに動画を撮って松山に見せ、2人で体の動きを確認していた。「腰が前に出て手元が浮いてくる」「アドレスのひざの角度を意識したらどうか」「右ひじが外に行かないようにしたい」。そんなスイングの細かい会話の応酬が聞こえてきた。松山は球を打ちながら黒宮と話をし、実践し、答えを探す。時折右ひじを絞るような動きを見せたり、重心を下げて股関節を切りインパクトの形を作ったりもしていた。

2025年 AT&Tペブルビーチプロアマ 最終日 松山英樹 黒宮幹仁
同級生の二人はずっとスイングの話をしている

今季は「ザ・セントリー」でいきなり優勝を飾るなど幸先のいい滑り出しを見せた。現在のスイングの仕上がり具合を本人に尋ねると、「(スイングの新しい取り組み)は去年の秋ぐらいからスタートして、いい感じにできているのはできています。結果的に優勝できたのも良かった。でも自信を持って打てていたショットがあったかというと、あんまりなくて…。ソニーでも先週(ファーマーズ)も崩れてしまった」と、そこはやっぱり松山英樹。勝ったとしても満足はしていない。

2025年 AT&Tペブルビーチプロアマ 最終日 松山英樹 黒宮幹仁
フェアウェイバンカーでショットの確認をする

「良かったものからちょっとずつアジャストして、自分のいい時に近づけられるかってやっているんですけど、それがなかなか続かないっていうか。悪い方向に行ってしまうんですよね。(スイングへの取り組みは)また最初からって感じですね…」

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目下の課題

松山の言及する“いい時”というのは、本人が理想とする2013年のスイングのことだろう。今から10年以上前のことだが、日本で賞金王を獲った若い頃の体の動かし方、クラブの使い方を追い求めている。「スイングの形はだいぶきのう、きょう(練習日の月曜日、火曜日)で良くなっていますけど、スピードが全然遅い。求めているスピードより10マイルぐらい遅いですし、そういうところで納得はいっていません」。動画を撮るのと同様、松山は一球打つごとに目の前に置いてあるGC4(弾道計測器)でボールスピードをチェックしていた。

秋から取り組んでいるというスイングの修正には、安定感と飛距離という2つの狙いがある。「(昨年の)秋口はもっと飛んでいたんでね。やっぱり飛距離も欲しいですよ。その飛距離を保ちつつ、安定性が加われば。特にドライバーが自信を持って打てるようになればなって感じはあったんですけど、今はうまくいってないな」と、両立するのが難しい。

現在取り組んでいることを続ければ、果たしてそのいい状態にたどり着けるのだろうか。「そうなってくれればうれしいですけど、そうはいかない可能性もありますし、なんとも言えないですよね、そこは。急にゼロになったり、徐々にいいところまで行ってまたダメになったりの繰り返しですから」。まだまだもどかしさの方が多いようだ。

スイングに正解はない。それは本人も分かっている。では、なんのためにスイングをいじるのか。そこには対峙(たいじ)するコースがあり、強力なライバルがいるからにほかならない。プレッシャーのかかったシチュエーション、打ちづらいホール、その状況下で理想とするスイングができるか。ライバルが越えてくるバンカーを自分も越えたい。それらと向き合うと、スイングの追求は止まらないのだった。

ペブルビーチはかっこうの場

2025年 AT&Tペブルビーチプロアマ 最終日 松山英樹
3日目朝の練習場ガラガラ

元来のフェードヒッターである松山英樹にとって、ペブルビーチGLは、まさにスイングを試すにはかっこうの場所だった。特に右サイドに海が広がるアウトコースはフェードを打つには難しいホールがずっと続く。2日目6番のティショット、ドライバーで最高の球を打ったように見えたがランが出て右の赤杭を越えてしまった。

10番も狙いどころが難しい。右サイドには大きく太平洋が広がるため安全に左に打ちたいが、フェアウェイは海に向かって傾斜していて、フェードボールはいやがおうにも海に向かって転がっていきやすい。現に3日目の10番ホール松山の打った球はフェアウェイやや左に着弾し、転がってギリギリ右端で止まった。そんな息継ぎができないような状況が18ホール、そして4日間続くわけだ。ペブルビーチのようなコースを見ていると、松山が日々スイングと格闘しなければいけない理由が、少しは分かった気がした。

2025年 AT&Tペブルビーチプロアマ 最終日 松山英樹
2日目の試合後

松山は4日間を終え、48位タイでフィニッシュした。スイング追求の旅はまだ道半ばかもしれないが、ひとついい兆しが見えたのは、練習の虫である松山英樹に練習量が戻ってきたこと。今週のペブルビーチでは、試合前の月曜日からみっちり練習。試合後も必ず打撃レンジに行くなどして精力的に球を打っていた。一昨年までは首のけがもあり、まともに練習できていなかったが、今は体に不安もなく、トレーニングもしっかりできていて球が打てる。実際、練習量に比例するように成績も出てきている。

とかく効率が叫ばれる今のゴルフ界だが、このエリートフィールドを見ている限り、強い選手はやっぱり練習をしている。2日目の試合後の練習場では、松山のほかにもジェイソン・デイジャスティン・ローズトニー・フィナウらが球を打っていた。

松山が前半戦の山場に見据える4月のマスターズまでは、残りあと2カ月。スイングの答えを探す旅はまだまだ続く。(カリフォルニア州ペブルビーチ/服部謙二郎)

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