「怖いです、まだ」 岩井明愛、海外ファンのハートをつかむ“コミュ力”と隠れた本音
◇米国女子◇ホンダ LPGAタイランド 最終日(23日)◇サイアムCC オールドコース(タイ)◇6632yd(パー72)
岩井明愛は単独首位を守った2日目、海外メディアの取材スタッフからミニ扇風機のプレゼントをもらった。「やった!センキュー。えーっと…“I will use it!”(使います!)」。たどたどしい英語で伝えると、スタッフは笑顔でサムズアップ。“海外ツアーのメンバーになる”には、きっとこういうコミュニケーションが大切だ。
昨年末の米女子ツアー最終予選会を通過し、妹の千怜と一緒に世界へ飛び出した。はじめての海外生活に慣れるため、奮闘する日々。優勝争いを演じた今週は、ほぼ毎日英語のインタビュー対応にも挑戦した。「とにかく選手やキャディのみなさんと話して、情報収集することも大切だから、と。一生懸命、言葉をメモしているみたいです」と母・恵美子さん。英会話は、小中学生の頃に知人からちょっと教わったことがあるくらい。キャディにはマーク・ウォリントン氏を起用し、通訳として帯同するスタッフに「どうやったら通じる?」、「なんて言えばいい?」と質問しながら語彙を増やしている。
同じ姿勢の千怜は「英語での会話はもちろん怖いですけど、自分がやりたいことだし。どんどんチャレンジしていくことが、いまやるべきこと」という。今週はタイのウィチャニー・ミーチャイらと食事に出かけたり、現地のトレーニングジムでもタイ人と仲良くなり、その“ファン”が横断幕を持って応援にも来てくれた。
気後れせず海外生活を楽しんでいるように見えるが、本音は真逆だ。日本にいた時に漠然と感じていた海外進出への不安は、まだ消えてはいない。明愛は「怖いです、まだ。やっぱり結果を出していかないといけないし、(日本と)環境も違いますし。いろいろ、不安から来る怖さがある」と明かした。
予選会から参戦する今季は出場カテゴリーがシード選手らより低いため、限られた試合数で年間ポイント(CMEグローブポイント)ランキングを上げていかないと、5月4日最終日の「ブラックデザート選手権」後にある第1回リシャッフル(出場優先順位の組み換え)以降のツアー出場が怪しくなる。今週、明愛は2位、千怜は24位だったが、推薦出場だったため規定でポイント加算の対象外。“職場確保”の戦いは続く。
明愛は最終日、18番の劇的イーグルでホールアウトすると、当たり前のように次の“行動”に移った。自分を1打差で破ったエンジェル・インのウォーターシャワーが終わるのを待って、びしょ濡れの彼女に笑顔でハグをした。「コングラチュレーション」―。怖くても、プレッシャーがあっても、大切なことを続けるツインズが米ツアーに溶け込んでいく。(タイ・チョンブリ/谷口愛純)
谷口愛純(たにぐちあずみ) プロフィール
1992年生まれ。社会部記者、雑誌の営業その他諸々を経てGDOに入社。ゴルフは下手すぎて2017年に諦める。趣味は御朱印集めと髪色を変えること、頭皮を想って最近は控えてます。