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「10年」の記憶と決意 細川和彦は裏方から再び表舞台へ

日本タイトル2勝を含むツアー通算8勝のプロゴルファー、細川和彦が今年、シニアツアーデビューを果たす。東日本大震災からちょうど10年。自身あるいは身の回りを振り返ると「10年」という数字には縁(えにし)がある。表も裏も知る50歳が決意を新たにしている。

10年前の記憶

2011年3月11日午後2時46分、当時40歳の細川は所属している茨城ゴルフ倶楽部(茨城県つくばみらい市)でプレー中だった。豊かな松林が特徴の同GCの18番ティイングエリアで「何事かと思った。でかい松の木がバンバン揺れて。本当にびっくりした」。当地を襲った地震は震度6弱。あたりを見回すと池の縁が壊れたところもあった。

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クラブハウスの被害が少ないことを見届けて守谷市の自宅に帰宅。車で約20分のはずが、この日は50分かかった。福島にある父親の会社の従業員らも地震の被害を受けていた。「親父にトレーニングウェアとかダウン(ジャケット)とか(自分が)着ていない服を(福島に)持って行ってもらった。会社の従業員や家族に、それと避難所にも運んでもらった」。寒い時期で、細川の着用するLLの大きいサイズは重ね着ができるとありがたがられたという。

「キャディさんの長靴や傘、トイレットペーパーとかゴルフ場にも(支援物資を)協力してもらった。親父は震災の2日後ぐらいから行ったり来たり」。今も当時の写真を見せてもらう。「家の前に船があったり、本当にすごい津波だったと思う」。ゴルフ界も被災地支援に乗り出すなか、細川は表には出ず裏方に徹した。

前年には右膝内側靭帯を損傷するなどして、ふがいない戦いが続いていた。意を決した年だったが、「自慢するようなことではないから、表に出るのはいやだった」と、マスコミには報道を控えてもらったという。むしろ、「自分のこともそうだけど、ゴルフ界のことを考えたらこのまま試合がなくなるんじゃないか、男子プロゴルファーで生活できないんじゃないかという危機感があった」と振り返る。

「10年周期かぁ」

震災からちょうど10年前の2001年。細川は国の難病指定である潰瘍性大腸炎を発症した。1999年に2勝して国内賞金ランクでトップに立ったが、ちょうど海外メジャーが賞金加算の対象になった時期で、師匠の尾崎直道に850万円差で賞金ランク2位。2000年は優勝がなく、翌01年9月、「アコムインターナショナル」(茨城・石岡GC)で1年9カ月ぶりとなるツアー7勝目を挙げた。体調不良を感じたのはその次の日のことだった。

「食あたりかと思ってそのまま、次の(試合がある)東海クラシック(愛知・三好CC)に行った。消化できない状態で出場して10位。体調が良ければ優勝してるんじゃないかと思ったぐらいだった」。今でこそ笑って言えるが、当時は深刻だった。

「次の試合が東京ゴルフ倶楽部(埼玉)での日本オープン。どうしても出たかったので、無理して行ったんですが、我慢できなくて。点滴でも治らないので、おかしいと(茨城の)地元の病院で全部検査してもらったら、潰瘍性大腸炎というのが分かった」

病院を探しては診てもらったが、原因は分からず。ストレスや水の影響と言われたこともある。まして当時は海外の試合に出ていた。「本当は1カ月分しか薬を出してもらえないのを2、3カ月分出してもらって、自分で体調と相談して薬を飲んでいました」

自身に関わる一大事は「10年周期かぁ」としみじみ。細川はいまもこの病気と付き合い、男子プロで同じ病を抱える18歳下の重永亜斗夢から相談を受けることもあるという。

暴れたい50歳

震災があった2011年以降、細川はシード喪失と復帰を繰り返したが、ゴルフ界の“裏方”を経験する機会に恵まれた。「シードを失ったおかげというのも変だけど、NHK(ゴルフ中継)の解説の仕事をもらえるようになった。(男子レギュラー)ツアーのコースセッティングも、ちょうど、青木(功)会長に代わってから現役プロにやらせるということで声をかけてもらった。シード選手ならありえないこと。試合に出られなくなってゴルフ界に貢献できたこともある」

昨年12月28日に天命を知る50歳となり、裏方から再び表舞台へと活躍の場を移す。シニアツアーデビューだ。「楽しみですね。第二の人生じゃないが、暴れたいし、結果を出したい。シニアでも勝ちたいというのが最初の目標。早いうちに、デビューと同時に勝ちたい」

4月第2週から始まるシニアツアーへの登録は済ませた。茨城GCの研修生だった高橋勝成をはじめ、“高橋ファミリー”の寺西明(2020年日本シニアオープン優勝)、中山正芳(2020年日本プロシニア優勝)ら先輩の後押しも心強い。

「ゴルフを知っている人はシニアの方が会話も楽しいし、面白いといいますよね。そういう違う部分も見てみたい。先輩たちに追いついて優勝争いをしたい。楽しんでゴルフをやって、結果がついてきたら最高のゴルフ人生じゃないですか。これからシニアに入ってくる人にもつながるように、新たな気持ちでがんばって結果を出したいですね」

レギュラーツアーのコースセッティングも5試合を担当する予定。「とにかく健康でいることが一番。スポーツだけでなくて仕事もできなくなる。10年でいろんなこともある。震災から10年。まして今、コロナ禍で苦労している。試合ができるありがたみを感じながら、結果を出さなくちゃいけないと思う」

ゴルフ界への恩返しはまだこれからだと思っている。(編集部・清野邦彦)

清野邦彦(せいのくにひこ) プロフィール

1964年、山形生まれ。夕刊紙、スポーツ紙記者を経てGDO。80年代「おやじギャル」ブームをつくった女性漫画家を取材して初めてゴルフにかかわる。その場で買ったゴルフチームジャンパーがお宝。ドーハやカーヌスティで90年代のスポーツの「悲劇」に遭遇した。

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