徳川家康「神君伊賀越え」の峠の先 標高600mのタラオCCで球は飛ぶのか?
◇国内メジャー◇日本オープンゴルフ選手権競技 初日(15日)◇タラオCC西C (滋賀)◇7411yd(パー70)◇晴れ(観衆1884人)
タラオCCへ向かう道中である滋賀県甲賀市から三重県伊賀市を結ぶ御斎峠は、徳川家康の「神君伊賀越え」で通った有力なルートだと言われている。1582年の本能寺の変の後、堺(現・大阪)にいた家康が、命からがら三河(現・愛知)へと逃げ帰った。逃避行の舞台となった峠を登り切った先、標高600mに位置するのが、第91回ナショナルオープンの舞台である。
そこで気になるのが、標高がプレーに与える影響。高地であればあるほど気圧が低く、空気密度が低くなるため、ボールにかかる空気抵抗が小さくなり、飛距離は伸びる。わずかな距離の違いが番手選びや攻め方を左右するプロの世界では、標高もコース攻略の重要な要素になる。では、600mという絶妙な標高は、実際に飛ぶのか。結論は、選手によって感じ方がかなり異なった。
年間ポイントレースで首位を走るレフティの細野勇策は、初日の朝、練習場で弾道測定器トラックマンを使って飛距離を測ると「めちゃくちゃ飛んでいる」と感じた。アイアンで平地より約5yd飛んでいたという。ところが、実際のラウンドでは「コースに行くとそんなに変わらなくて」と苦笑い。飛距離を加味して打ったところ、7m近くショートする場面もあった。「考えすぎて、ショートしたりして。1番手弱くらい小さいクラブで打とうかなと思っていたら、意外と普通にいけた」。それでも番手と番手の間の距離の場合には、短い方のクラブを持つようにしているという。
昨年覇者の片岡尚之も似た感覚だった。前日の練習ラウンドでは、弾道測定器GCクワッドで平地より2%ほど飛距離が伸びていた。アイアンでは約4yd。ただ、この日のラウンドでは「データはそう出ていたけれど、あんまり飛んでいる感じはしなかった」と振り返る。標高1000mに位置する山梨県の富士桜CCで開催されていた「フジサンケイクラシック」では、データ通りに飛距離アップを実感していたというだけに、600mでは「気持ち、見ていいかな」という感覚でプレーしている。
一方、岡田晃平は明確に「飛距離の違いは感じる」と話した。午前7時台のスタートで、気温が10度近くまで冷え込む早朝の前半はそれほど感じなかったが、後半になると3~5ydほど飛ぶようになったという。この日はグリーンが止まりやすかったこともあり、ピンを攻めたアイアンショットが想定以上に奥に行く場面も。また、「ピンハイまで行っているとは思わなかった」というシーンが2度ほどあったそうだ。
では、標高の影響を最も受けそうな“飛ばし屋”はどうか。今季のドライビングディスタンス317.99ydでツアートップにつける河本力は、意外にも「僕は全然気にしていないし、変わらないと思っている」ときっぱり。初速が速いほどその影響を感じそうなものだが、そうではないという。
もちろん、標高だけが飛距離を決めるわけではない。気温や湿度、風、ボールの初速、打ち出し角、スピン量など、さまざまな条件が絡み合う。標高600mという数字は、標高1000mの富士桜CCほど極端ではない一方で、平地とまったく同じとも言い切れない。その「ちょっと飛ぶかも」という絶妙な差をどう捉えるか。データを信じるのか、それとも自分の感覚を信じるのか。その微妙なアジャストが、ナショナルオープンの勝敗を分けるポイントの一つになりそうだ。(滋賀県甲賀市/中村文香)