「日本一ゆるい」 渋野日向子を生んだ作陽高ゴルフ部の作法
古江彩佳、堀琴音らを輩出 滝川第二高ゴルフ部の「人間力」
2020-2021年シーズンの女子ツアーは古江彩佳が6勝を挙げて賞金ランキング2位。長期低迷に苦しんだ堀琴音が21年7月「ニッポンハムレディスクラシック」で初優勝を遂げるなどし、兵庫の滝川第二高ゴルフ部出身の活躍が目立った。
1989年に創部され、2001年から指導する角谷真吾監督(55歳)は「自主性も大事ですが、グリーン10ydぐらい手前のところにわざと落として、パーオンできなかったところからパーを取るとか、練習に“お題”を出したりします。それと今は大会を視野に入れてマッチプレーをしています。『こいつに負けたくない』とメンタル面を鍛えるためです」と説明する。
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現在の部員は3学年で40人。古江、堀をはじめ、安田祐香、浅井咲希、11月「アジアパシフィック女子アマ」を制した橋本美月(現・東北福祉大)、4月「オーガスタ女子アマ」を制した梶谷翼ら多くの実力者を育て上げた。
3歳から競技を始め、2年生の新キャプテンを務める黒田裕稀(ゆうま)くんは「兵庫の団体戦で活躍したかった。ラウンドも多くて練習環境もすごくいい」。憧れの松山英樹のように東北福祉大に進学を希望し、プロで活躍することを夢見る。
7歳から競技を始めた同じく新キャプテンで2年生の山下アミさんは「進路を考えていたときに古江プロと安田プロが活躍していたので、ここで頑張りたいと思った。ライバルもたくさんいて切磋琢磨できる」と名門ゴルフ部の門をたたいた。
スポーツ科の生徒が所属するゴルフ部は学業成績に加えて、これまでの競技実績、指導者の推薦書が必要となるため、未経験者の入部はほぼ「ゼロ」という。
来年の春に卒業する3年生は14人。1人がプロ志望、1人がプロか大学か決めかねており、残り12人が大学に進学する。過去にも同志社大、立命館大、関西学院大、早稲田大、東北福祉大など全国の名門ゴルフ部に進学してきた。
古江は在学時から頭角を現したひとり。角谷監督は「心技体が整っていて安定したゴルフをしていた。自分が何をやればいいのか分かっている。他の部員がオーバーをたたいても、古江はアンダーで回ってきて部の優勝に貢献してくれた」。卒業後は2019年「富士通レディース」で史上7人目のアマチュア優勝。「学校内の雰囲気もすごかった」と女子ゴルフの歴史に名を刻んだ。
今後の目標が全国高校ゴルフ選手権の団体戦で優勝すること。女子は2017、18年と連覇したが、男子は未勝利。今年は男女ともに3位に終わった。
チーム力をつけることがゴルフを通じての人間形成につながると信じる。「団体戦を頑張るということが人間力を身につけることになる。それが競技にも勉強にもつながる」。オフシーズンには、卒業生が気軽に角谷監督に近況報告に訪れる。愛校心の強さも滝川第二高ゴルフ部の魅力のひとつだ。(編集部・玉木充)
玉木充(たまきみつる) プロフィール
1980年大阪生まれ。スポーツ紙で野球、サッカー、大相撲、ボクシングなどを取材し、2017年GDO入社。主に国内女子ツアーを担当。得意クラブはパター。コースで動物を見つけるのが楽しみ。