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世界ランク“鈍化”のジレンマ 中島啓太の無双は松山英樹の新人時代に負けているのか

中島啓太が“無双”状態

◇国内男子◇ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ by サトウ食品 最終日(25日)◇西那須野CC(栃木)◇7036yd(パー72)

中島啓太の勢いがすさまじい。5月「ミズノオープン」から5週続けて最終日最終組に入り、毎試合タイトル争いを演じている。今大会の3位の成績がこの5試合でなんとワーストだ。

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数年前までなら、これだけの活躍をした選手はすぐにメジャーや欧米ツアーにスポット参戦する機会に恵まれていた。ところが目下、中島が予定している海外試合は、先の「ミズノオープン」で2位に入ったことで出場権を得た7月の「全英オープン」(イングランド・ロイヤルリバプール)だけだ。

昨年8月に改訂された世界ランキングの新システムの影響が大きい。大まかにいうと、世界ランキングは選手が各大会の成績に応じて獲得した、直近2年分の世界ランキングポイントを、出場試合数で割った平均ポイントで決まる。同じ成績でも大会によって得られるポイントが違い、その数字はツアーや大会の“格”や選手層によって上下する。

米国のひとり勝ち

昨夏の改定により、各ツアーに割り振られたポイントは選手層がより重視されるようになった(各大会のストロークも加味)。かつて設定されていた、ツアーごとの最低ポイントは4大メジャーとザ・プレーヤーズ選手権を除いて撤廃。PGAツアー、その下部コーンフェリーツアー以外のツアーに配分されるポイントは軒並み減少傾向にある。日本ツアー単体での試合で優勝者が得るポイントは、昨夏までは16pt前後(日本オープンは32pt)だったのが、いまや6pt前後と激減した。

日本人選手のトップに君臨して久しい松山英樹はちょうど10年前、プロ転向初年度を日本ツアーで戦っていた。4月の開幕戦から5試合で10位タイ、優勝、2位、2位タイ、優勝と他を圧倒。この期間中、世界ランクポイントで約50.61ptを稼ぎ、163位だった世界ランクを63位に浮上させた。同年6月中旬にはエリート選手の目安である世界ランクトップ50に入り、欧米のあらゆる大会から推薦出場のオファーも舞い込んで世界への扉を開いた。

中島は直近5試合で2位、2位タイ、優勝、2位、3位タイの成績を残した。当時の松山に勝るとも劣らないが、この間に稼いだポイントは約18.2ptに過ぎない。ランク上昇は338位から148位。一般的にはランク下位選手が好成績を残せば大きな浮上が望まれる。とくにプロ入り間もない選手は、分母にあたる出場試合数が少なく、平均ポイントが比較的高くなるが、トップ50どころか100もまだ遠い。

同学年の蝉川泰果は今シーズン序盤に周囲を圧倒した。プロ初勝利を飾った4月「関西オープン」からの5試合を抽出すると、優勝、45位タイ、3位、2位タイ、5位タイ。この期間で約12.39ptの加算で290位から165位への浮上に留まった(現在は157位)。ちなみに日本での直近3試合で3位タイ、優勝、2位金谷拓実も142位から115位に上がっただけだ(同114位)。

遠くなった海の向こう

松山も小平智も、その直前の石川遼も、国内ツアーの活躍によって上昇した世界ランクを足掛かりにしてPGAツアーに進出した。中島や蝉川をはじめ、いまツアーを牽引する20代の選手たちは、同じステップを踏めない現実を突きつけられている。

日本でプレーする中堅、ベテラン選手たちは最近、口々に「予選カットラインのスコアが上がった(ロースコアになった)」と言う。5月のメジャー「全米プロ」に続き、6月「全米オープン」でも出場した日本人選手4人が全員決勝ラウンドを戦った。優勝争いには絡めなかったとはいえ、ここ何年も見られなかった傾向だ。

伸び盛りの若手のフィールドのレベルはきっと上がっている、期待を込めてそう思うのに反して、彼らが目をやる海の向こうがどんどん遠ざかっているような気がするのが寂しい。(栃木県那須塩原市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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