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小林至博士のゴルフ余聞

ランガー最後の「マスターズ」に期待/小林至博士のゴルフ余聞

「マスターズ」2勝の名手、ベルンハルト・ランガー(ドイツ)が、今年を最後に同大会への出場を終えると発表した。PGAチャンピオンズツアー(米国シニアツアー)で46勝を挙げてきたランガーは現在66歳。マスターズは4大メジャーの中で唯一、歴代優勝者に生涯出場権を付与している大会で、年齢制限はない。ただし、肩たたきはあって、プロとして恥ずかしいスコアしか出せなくなったら自ら引退することが暗黙の了解となっている。

今年で41回目の出場となるランガーに関して言えば、まだまだ肩たたきをされる状況にはない。2020年大会で63歳にして、当時の予選通過の最年長記録を更新(23年にフレッド・カプルスがさらに4カ月更新)、29位タイに入った。23年大会も通算5オーバーでカットラインからわずか2ストローク差と、恥ずかしい成績ではなかった。

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昨年のランガーは老いてますます盛ん、出場した24試合全てで予選を通過し、2勝を挙げた。特に「全米シニアオープン」での勝利は、大会史上最年長記録とシニアツアー通算優勝回数記録を更新する快挙たった。

中肉中背、どこにでもいそうな風貌のランガーのスイングは、アベレージゴルファーにとって多くの学びがあるとされてきた。現在56歳の私もシニアの年齢に入った頃からランガーを勝手に師匠とあがめ、飛んで曲がらないスイングの模倣を試みている。

敬虔(けいけん)なクリスチャンとして布教のために私財と時間を惜しみなく捧げ、その人柄も多くの尊敬を集めているランガーだが、一点だけ、決して見習わないようにしていることがある。スロープレーである。

スロープレーはプロアマ問わず、解決が難しい持続的な課題である。昨年も、ブルックス・ケプカパトリック・カントレーを公然と批判するなど論争が勃発したが、元祖スロープレーヤーとして言及されるのがランガーだ。

私も何度かそのプレーを目撃したが、確かに遅い。とりわけ記憶に残るのが、プレーが早いことで有名なニック・プライス(ジンバブエ)と同組で回っていた時のことである。2打目地点でヤーデージブックを取り出してじっと見つめ、次に目をつむり、黙想している(ようにみえる)姿は、まるで司祭が祈りを捧げるかのように神聖な雰囲気を醸し出していたが、トーナメントの雰囲気とは大きく異なっていた。

そしてアドレス。迷いが生じたのか、ヤーデージブックを再び見てキャディと確認、黙考、ようやく打つ。プライスは、ランガーが打つや否や自身のボールに向かい、アドレス、ワッグルを1、2回、そしてショット。この対照的な様子を数ホール確認し、噂は本当だと実感した。ランガーも年齢を重ねるにつれ、プレーのペースが速くなったとの噂もあるが、2019年のマスターズではオフィシャルから警告を受けていたことから、そうでもないのかもしれない。

そんなランガーの最後のマスターズ、28回目の予選突破、さらにはリーダーボードを賑わす活躍を期待しつつ、しかと見届けたい。(小林至・桜美林大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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