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2019年 プレジデンツカップ
期間:12/12〜12/15 場所:ロイヤルメルボルンGC(オーストラリア)

小林至博士のゴルフ余聞

ブームを予感させる“濃厚キャラ”の登場 多国籍軍の台頭は

2019/12/19 11:40

先週開催された「プレジデンツカップ」を見て思った。1994年の初開催から25年を経て、創設者であり主催者である米PGAツアーが思っていた通りか、もしかしたらそれ以上のイベントに成長したのではないだろうか。ゴルフファンならご存じの方も多いだろうが、プレジデンツカップは欧米対抗戦の「ライダーカップ」の成功にならった、米国vs欧州を除く多国籍軍のチーム対抗戦である。

ライダーカップは当時もいまも、世界で最も売上高の多いゴルフイベント(つまり、マスターズや全米オープンよりも!)だが、大会主催者にPGAツアーは入っていない。アメリカでの主催権は全米プロゴルフ協会(米PGA)に属し、欧州でのそれは欧州ツアー(60%)、英国PGA(20%)、欧州PGA(20%)が共同出資する団体に属する。

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当初は多国籍軍といったって、豪州と南アフリカの出身者ばかりで、アメリカの大学を出て、フロリダに住んで、米ツアーに所属して…「親睦マッチじゃないの?」「将来はライダーカップに匹敵する大会に?なんてとんでもない」と失笑する向きが強かったのをよく憶えている。

実際、第1回大会の国籍は12人中11人が南半球。豪州5人、ジンバブエと南アが2人ずつ、ニュージーランド1人、フィジー1人で、全部合わせても出身国の人口は1億人に届かない。唯一の大国からの出場は、わが日本だったが、世界ランキングを元に出場資格を得た尾崎将司中嶋常幸は国内大会への出場を理由に欠場し、キャプテン指名で渡辺司が出場した。ちなみに第2回も、尾崎将司以外は全員、南半球の選手だった。

それがいまはどうだ。今大会、複数選手を供給しているのは豪州(3)と韓国(2)だけで、あとは日本、南ア、メキシコ、中国、台湾、カナダ、チリと正真正銘の多国籍軍だった。市場規模も様変わりして、人口14億の中国、1.3億のメキシコ、1.2億の日本と大国がずらり。2015年、17年には、中国と並ぶ大市場のインドからも出場している。米PGAツアーが進めるグローバル市場の開拓が順調に進んでいる証左といっていいだろう。

ではプレジデンツカップがライダーカップに匹敵するような大会になるかどうかというと、恐らくゴルフ通の方は、あり得ないというだろう。ライダーカップにおける選手・ファンの勝負への執着と熱気とは比較にならないと。しかし、わたしは2つの条件がそろえば可能性はあると思っている。ひとつは多国籍軍が勝つことと、もうひとつは濃いキャラクターの出現だ。

ライダーカップも、人気イベントになったのは、1985年に米国の連覇が13で止まったこととセベ・バレステロスの存在だった。アメリカに敵意をむき出しにし、勝つためには手段を選ばないバレステロスが、その挑発を真正面から受け止めたポール・エイジンガーの存在とあいまって、普段はゴルフにあまり興味を示さない層の関心をも喚起した。

今大会、アメリカにはとても分かりやすい濃厚キャラが登場した。マスターズ・チャンピオンのパトリック・リードである。多国籍軍にリードをがしっと受け止めるキャラが登場して、かつ、一度、大勝利を収めると、突如としてブームになる予感がする。(小林至・江戸川大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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