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塚田好宣「24時間ゴルフ」挑戦手記

「24時間の最多バーディ数」でギネス世界記録を目指し、夜も太陽が沈まないフィンランドへ。前人未踏の挑戦を終えた塚田好宣が、その戦いを振り返った。

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終了の合図を聞いたのは333ホール目。19度目の9番(パー3)でホールインワンを狙ったショットはグリーンに届かず、ついに長かった24時間が幕を閉じた。最初に出てきた言葉は「やっと終わった」だった――。

自分がフィンランドでの24時間ゴルフの話をもらったのは5月末だ。そのとき、どういう企画なのかは聞いたけど、どれくらい大変なのかはまったく理解していなかった。24時間続けてゴルフをした経験なんてなかったし、かぎりなく多くのホールをプレーするために、かなり速いペースが求められるなんて知らなかった。ただ、この話が回ってきたときに、すぐにフィンランドへ行こうと決めた。ギネス世界記録を目指すとか、そんな意識はなかった。ただただ、自分が行かないといけないんだと思っていた。

2016年にチャレンジツアーで賞金王になり、17年はレギュラーツアーに戻ってフル参戦した。オフのキャンプでも調子がよく、またシードを取り戻すことができると思っていた。優勝のことも少し考えた。しかし結果は大半の試合で予選落ち。賞金はほとんど稼げず、年末のQTでも下位に沈んで、なんとかAbemaTV(旧チャレンジ)ツアーに出られるくらいのところにいる。今年はそのAbemaTVツアーでさえ、なかなか予選を通れないありさまだ。

なんでこうなっているのかというと、バーディが獲れないからだ。去年から今年にかけて、まったくと言っていいほどバーディが獲れない。技術的なことを言えば、パッティングもグリーンを狙うショットにも問題はある。パッティングストロークはデータを取りながら修正したし、違うパターを何本も試したりした。だが、試合になるとバーディが獲れない。そんな状態がずっと続いていた。バーディが 1個も獲れない日もあった。ボギーを打たなくても、バーディが獲れなくては上位にいけない。

プロになった時に決めたことがある。「お金がない、パッティングが上手くいかない、この2つの理由でツアープロを諦めることはしない」。これが自分で決めたルールだ。いままでお金で困ったことはたくさんあった。もう次の試合に行くお金がない、なんてことは両手を使わないと数えられないくらいあった。それでも、なんとかギリギリで踏ん張ってここまで生きてきた。それを辛いと思ったことはないし、好きなゴルフをして旅をできることが嬉しかった。

だけど、去年からの不調は正直言ってきつい。このままツアーから消えていくのかと思うこともある。どうしていいのかわからないし、出口がまったく見えていない。いくら練習しても結果が出ない。そんなときに、この話をもらったんだ。バーディを獲れないゴルファーに「24時間でいくつバーディが獲れるかチャレンジしませんか?」っていう話がきた。オモシロいでしょ。なんで、よりによってオレなんだろう?って。だからかな、運命みたいなものを感じたのは。オレじゃなきゃダメなんだ。悩んでいるオレだから、この話が来たんだと思った。

いままでに12時間のゴルフに挑戦した人がいると聞いた。その人は11ラウンド以上プレーして、93個のバーディを獲ったという。計算してみると、1ラウンド約1時間ペースを12時間も続けた上に、毎ラウンド平均8個のバーディを獲っている。恐ろしい数字だと思った。一体どんなゴルフをすればいいのだろうかと途方にくれてしまった。

その後、日本で本番を想定した練習をして、なんとかプレースピードはクリアできるかもという感触は得た。だけど、それを24時間キープできるなんて思えなかった。なにより、ギネス世界記録の認定を得られる160個以上というバーディ数はとても現実的とは思えなかった。いまだから言えるけど、もしかしたら24時間完走もできず、恥ずかしい数字を残して日本に戻ることになるのではと思っていた。こうして自信もないままにフィンランドへと向かった。

このチャレンジは、24時間で何ホールをプレーするかでも、どれだけ良いスコアで回るかでもなく、いくつバーディを獲れるか、ただそれだけだ。

男子は6000ydという距離を下回らないように自分でティとカップの位置を決められるのがオモシロい。ホールレイアウトからティショットで使うクラブを判断して、予想される第2打地点からどのカップ位置が狙いやすいか、その周辺のグリーンコンディションはどうなっているかなどを考慮した。パー5はすべて2打でグリーンに届く距離に設定した。パー4はティを前にしてバーディを確実に狙えるホールと、あえて短くしないホールとにわけた。すべてのホールを短くすると6000ydを切ってしまうし、距離が長いホールを作っておけば、その分をほかで削れる。すべてはバーディを獲るために。そういう計算をしながら、自分にとってのベストなマネジメントを考えることは初体験だった。

通常の試合では、大会側が決めたコース設定やピンポジションを、自分なりのマネジメントで攻略していく。ハザードを避けてショットを打ち、ピンを狙わないケースもある。距離のあるパットは3パットをしないようにスピードだけを考えて打ったりする。最小リスクでベストスコアを出すことを考える。いくらバーディを獲っても、ボギーやダボを打っては意味がないからだ。しかし今回は、その一切をやめた。グリーンを狙えるところからはすべてのショットでピンを狙った。パットもそう。すべてのバーディトライはショートさせないように打った。下りだろうとロングパットだろうと曲がるラインだろうとすべてを狙った。とにかくリスクは考えずにピンを狙い、バーディを獲ることだけにこだわった。

サンタクロースゴルフがあるロヴァニエミは例年以上に暖かく、自分たちが現地入りしてから、昼間は 26から27℃もあった。自分もこれには驚いた。風もほとんどなく、天候は安定していた。これなら夜中もそんなに涼しくなることもないだろうとタカを括っていた。

チャレンジは昼の12時にスタートした。眠さも疲れも感じていなかったので、休憩も取らずに13時間近くプレーをした。真夜中近くなったとき、空腹を感じていたわけではなかったが、スタッフさんたちが食べているサーモンが美味しいということを聞いて、無性にサーモンが食べたくなって食事休憩を取ることにした。それまでは、休まないでも大丈夫だと本当に信じていた。だけど、この頃から徐々に体力が奪われて、身体も動かなくなり始めていたことに、まだ気がついていなかった。

真夜中を過ぎて太陽が地平線に近づくにつれ、気温も少し下がってきた。アウターを着込んだけれど、それだけではダメだった。昼間に汗をかき、着替えもせずにずっとプレーを続けていた。汗をかいたシャツが体温を奪っていた。ショットが乱れてきて、何かおかしいと思った時には、ふくらはぎから太もも、腰から背中の筋肉が硬くなり始めていた。そこからもう一度休憩を取り、軽くマッサージをしてもらったけれど、プレーを続けている間に身体が元に戻ることはなかった。24時間の気温変化は予想以上に影響した。夜中から明け方は本当にプレーすることが辛かった。

1日の中に四季があった。幸い雨はなかったけれど、昼にスタートして昼に終わる24時間は、春に始まって、夏を感じて、薄暗い秋冬を過ごして、春に終わる。そんなふうに感じた。事前に予想できたかもしれないけど、夜中にゴルフをしたことがない自分には考えることができなかった。秋冬を過ごすには、やはりそれなりの準備をしなければいけない。もしまた挑戦するならば、夏が終わった時に下着からすべて着替えて秋冬に備えると思う。少しでも寒さを感じないようにするべきだ。季節ごとに着替えるのがベストかもしれない。タイムロスがもったいないと思うかもしれないが、着替えることで快適さを得られるならば、プレーのクオリティを落とさずに済み、逆にバーディ数は増えるかもしれない。季節ごとに着替えること。これは大事なことだと思う。

チャレンジの結果は、24時間で18ラウンドと8ホールをプレーして104個のバーディを獲った。この数字がどのくらいのものなのか、自分と中山三奈よりも先に挑戦した人がいないので比べようもないが、恥じることのない数字なのかなと思う。

今回、この話をくれたGDOには感謝しています。現地インタビューで「Once in a Life Time」と答えたけれど、こんなチャレンジは一生に何回もできないし、1回だってできる機会はなかなか巡ってこない。そもそも24時間ゴルフができる場所は世界にも多くない。陽が沈まない場所は、北極圏か南極圏にしかないのだから。結果としてギネス認定とはならなかったけど、全力でプレーした結果の104個という記録には誇りを持っています。だけど、もしもう一度チャレンジできるなら、そんなチャンスがあるとしたら、もっとバーディが獲れると思う。160個も狙えるんじゃないかって。バーディが獲れずに悩んでいたのに…いまは自然にこんな言葉が口から出てくる。フィンランドでバーディを獲るゴルフに挑戦して自分の中で何かが変わったのかもしれない。そんな気がする。

最後にフィンランドまで行ったスタッフの人たちに感謝したいです。一緒に24時間いてくれたことは心強かった。ラウンドごとに1番ティで声をかけてくれて嬉しかった。そしてサンタクロースゴルフのマネージャーのピアにも感謝です。彼女のサポートがなければこのチャレンジはできなかったと思う。そして地元のロヴァニエミの人達。自転車で追っかけて応援したり、ボールを探してくれたり、クラブハウスのテラスからビールを飲みながら拍手をしてくれた人達にも感謝です。またボランティアの人たちにも。交代で24時間スコアをチェックしたり、大変だったと思う。本当にみんなありがとうございました。もう1人いたね、サンタクロースさんも応援ありがとうございました。 またロヴァニエミに行きたいな…。

文・塚田好宣

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