ルーク・ドナルドのスイング分析
175cm72kg、PGAツアーの中でも決して体格に恵まれているとは言えないルーク・ドナルド。日本人の体形とそんなに変わらない彼が世界NO.1になった。スタッツを見てみると、飛距離こそ下位にランキングされるものの、ミドルアイアンからショートアイアン、そしてショートゲームにおいては他を寄せ付けない安定感がある。
日本人の体形とそんなに変わらない彼が世界NO.1になった要因を語る上で、ショートゲームのことを無視するわけにはいかない。 今年からの新しいスタッツ、Strokes Gained Putting(パットのスコア貢献率)という部門で1位、サンドセーブ率も5位と、そのディフェンス能力の高さが勝負強い彼のプレーを支えていると言える。その安定感抜群なショートゲームに支えられたアグレッシブなショットで、バーディ率も2位につけている。
そんな彼のプレッシャーに強いバランスの良いショットは、先ずフェイスローテーションを極力抑え、体と腕の運動量が揃った再現しやすいバックスイングから始まる。切り返し付近で少しシャット方向に握り込む動きが見られるが、手元が最下点にきた時にはもうスクエアに戻っていて、グリップエンドを支点にしながら一気に振り抜いてゆく。彼は軸を目標方向にスライドしない右軸スイングなのですが、右重心でインパクトするときに支点であるグリップエンドを早めに尚且つロフトを起こしながらインパクトできることは、安定した飛距離と方向性を生み出す彼の天性のテクニックなのだろう。足の動きを見ていただけるとお分かりになると思うが、インパクト直前に左の足が地面を蹴り上げるような動きが見られる 。これも支点感を作る上では重要な動きで、これにより手元が減速してそれによりヘッドが加速する、言わばアクセルのようなもの。シンプルで平凡に見える彼のスイングだが、非凡なテクニック満載のこれぞ世界NO1のスイングと言えよう。
- 解説:石井忍(いしいしのぶ)
- 千葉県出身、1974年生まれ。日本大学卒業後、1998年にプロテスト合格。レギュラーツアーに参戦する一方で、自身のツアー出場経験を生かし2010年からは久保谷健一、小山内護、金田久美子らのコーチとしてツアーに帯同する。特にショートゲームには卓越した見識を誇っている。