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2012年 全米プロゴルフ選手権
期間:08/09〜08/12 場所:キアワアイランドリゾート(サウスカロライナ州)

11時間かけて獲った1つのバーディ

サウスカロライナ州キアワアイランドリゾートで開催中の「全米プロゴルフ選手権」。3日目は夕方のあいにくの悪天候によってサスペンデッドとなり、未消化ホールを最終日に持ち越すことになった。しかしそれに先立って、予選ラウンドが完了するはずだった2日目は、ただひとりの選手の判断が、第2ラウンドの日没サスペンデッドという事態を呼んでいた。

オランダ出身のユースト・ルテン、26歳。2日目アウトスタートの最終組でトーマス・エイケン(南アフリカ)、アラン・モリンとのラウンドは、日中の強風の影響もあって進行が遅れ気味に。夕焼けに包まれながらの終盤のプレーは次第に視界を悪くしていった。

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「17番(パー3)でティショットを打ったとき、もう日が暮れるなと思ったんだ。でもグリーンへ行ってパットを沈めた」とルテン。この時点で通算1オーバーの暫定15位タイ。18番ティグラウンドに差し掛かったところで、午後8時過ぎの日没を知らせるホーンが鳴った。ルール上、ホーンが鳴った瞬間に立っていたホールまでの消化が認められる。この場合はこの最終組の3選手が最終18番ホールをプレーし、第2ラウンドを完了することが可能だった。

エイケン、モリンの2人は迷わずティショットを打った。ところが、ルテンは第1打の前にプレーを止めた。「僕はリスクを避けたんだ。(茂みのある)右サイドへ打ち出していたら、暗い中でボールを誰も見つけられずロストボールになるかもしれない。だから明日まで待とうと思った。彼らがラウンドを終わらせたい気持ちも分かっていた」。他の2人は急ぎ足で最終ホールをプレーしてなんとかホールアウト。一方、ルテンは翌日の午前7時30分から18番をひとりでプレーすることを選んだ。

その決断は、素晴らしい結果につながった。この3日目の早朝に再開した同ホール。残り190ヤードの第2打を6番アイアンでグリーンに乗せると、7メートルのスライスラインを読みきってバーディを奪った。同ラウンドの18番でバーディを決めたのは彼を含め5人だけ。「待った甲斐があった。ボーナスだね。今まで僕にこんな経験は無いし、他の選手でも見たことはない。いい経験になったよ」。昨夜から11時間以上遅れて1ホールを完了。通算イーブンパーの11位タイと好位置で決勝ラウンド進出を果たした。

早朝スタートは体力的にはタフだった。しかし「グリーンにはスパイクマークも全然無くてね。今まで打ってきたパットの中でも最高の一つだ」と利点もあった。

舞台やポジションが素晴らしいものであればあるほど、1打の重み、1ホールの重みは増すもの。ちなみに、同伴競技者だったエイケンは、駆け足でプレーした最終ホールをパーで上がり、通算7オーバーで予選落ちした。カットラインに1ストロークが足りなかった。もちろん、ただの結果論に過ぎないけれど。(サウスカロライナ州チャールストン/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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