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2022年 フォーティネット選手権
期間:09/15〜09/18 場所:シルバラードリゾート&スパ(カリフォルニア州)

進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

“100回打っても入らない”ホマのチップイン ウィレットは勝ち気が裏目に

早くも始まったPGAツアーの2022-23年シーズン開幕戦「フォーティネット選手権」を現地で見ることができました。カリフォルニア州シルバラードリゾート&スパ は、相変わらずの素晴らしいコース。グリーンが日に日に硬く速く仕上がり、選手はセカンドショットでしっかり距離を合わせる技術が求められるセッティングとなっていました。

ワインの産地として有名なナパ。この時期としては10年ぶりともされる強い雨が降り注いだ最終日の戦いを制し、マックス・ホマが大会連覇を成し遂げました。雨が珍しい南カリフォルニア出身ですが、振り返れば初優勝した2019年「ウェルズファーゴ選手権」でも連日の悪天候の中を戦い抜いています。本人も「雨に打たれると、なぜか気持ちが落ち着く」と笑っていました。

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最終18番(パー5)の攻防は見応え十分。1打リードのダニー・ウィレット(イングランド)が確実にフェアウェイへレイアップした一方、2オンを狙ったホマは左手前のピンに対して絶対に行ってはいけない左サイドのバンカーに入れてしまいました。30ydほどの距離を出しつつ、グリーンエッジから近いピンに絡めるのは至難の業。ウィレットが3打目できっちり1m強のバーディチャンスにつける中、やはりギリギリを狙った3打目をミスして手前にこぼしました。依然としてショートサイド、しかもピンに向かって下るアプローチが残り、まさに絶体絶命です。

そんな極限の状況下、ピンに直撃させてねじ込んだチップインバーディはまさに鳥肌モノ。100回打っても入らないのではないかというミラクルな一打といえます。終わった後にホマのキャディ、ジョー・グレイナーさんに声をかけると、まだ興奮冷めやらぬ様子で「あり得ないことが起きた!」と喜びを爆発させていました。

並ばれてもバーディパットを決めていれば優勝のウィレットでしたが、まさかの3パットで残酷な幕切れとなりました。現地のギャラリーが「プレッシャーで打ち過ぎたんだ」と口をそろえていたファーストパットは、カップに蹴られて1.5mほどオーバー。外れてもプレーオフですから、最初はタッチを合わせて打つのが定石でしょう。

しかし、ウィレットは非常に勝ち気な選手です。「これを入れて決めてやる」―。そんなメンタルで下りのラインをあれだけ強気のタッチで打ちにいったように見えました。劇的なチップインを目の当たりにして、アドレナリンも出ていたかもしれません。仮にタッチを合わせにいって外れても、プレーオフに向けて気持ちが切り替わり、パーパットまで外すことはなかったのでは…とも思いますが、それは結果論ですね。

PGAツアーでの優勝は2016年の「マスターズ」が最初で最後。昨季はシード争いに巻き込まれ、のどから手が出るほど欲しいタイトルだったはず。それでも、表彰式の最中にはクラブハウス前でギャラリーの求めに応じてサインし、一緒に写真も撮ってあげているウィレットの姿がありました。まさにプロフェッショナルの振る舞い。熱戦を見届けた後でもう一度、胸が熱くなりました。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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