ゴルフの聖地「セントアンドリュース オールドコース」全18ホールを図付きで解説
2022年 全英オープン
期間:07/14〜07/17 場所:セントアンドリュース・オールドコース
中断10時間にトミーズバンカー 聖地セントアンドリュースが与える試練
世界最古のゴルフトーナメント「全英オープン」は150回の節目を迎えます。“聖地”セントアンドリュースがホストするのは2015年以来。僕も松山英樹選手のキャディとして一緒に戦った大会ですが、これまで経験した全英の中でも群を抜いて過酷な一週間でした(笑)
悪天候の影響により、2日目のプレーを終えたのが午後10時前。4ホールを残していたため、翌日土曜の起床は午前3時半くらいだったと記憶しています。ほとんど寝られずに突入した未消化分も、グリーン上に置いたリプレースしたボールが動いてしまうほどの強風だったこともあり、朝に回れたのは1ホールだけ。そこから結局10時間半ほどの中断を強いられました。そんな長丁場の18ホールで松山選手がマークした「66」は当地での日本勢最少スコア。今年も期待しましょう。
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実は2013年に松山選手、チームスタッフを交えて4人でセントアンドリュースをプレーしたことがあるんです。1番のティイングエリアはまるでグリーンのように整備されていて、実際にパターで転がしても速くキレイに転がるほど。18番と共有になるフェアウェイはとにかく広い印象だったのですが、2015年に再び訪れたときはとにかく右のOBが気になって気になって…伝統あるメジャーの雰囲気が醸し出すプレッシャーゆえだったのかもしれません。
強くて重い海風が吹きつけるスコットランドのリンクスは風向きが45度変われば、まるで違うコースに変貌します。空中での風の影響を織り込むことはもちろん、雨が降って軟らかくなったはずの地面がすぐに乾いて硬くなったり、ボールの転がりの計算もひと苦労。広い視野を持って、いつも以上にアンテナを張り巡らせてプレーしなければなりません。
硬い地面を歩き続けることで疲労は蓄積しますし、遮るものもない“吹きさらし”でずっと外にいるのは自分が思っているよりも体力を奪われるもの。心技体の全てがそろわなければ、4日間を上位で戦い抜くのは至難の業。それが全英オープンという舞台です。
セントアンドリュース 17番パー4 (495yd)
このオールドコースのシグネチャーホールといえば17番。世界一有名で、世界屈指の難度を誇るパー4と言っても過言ではないでしょう。
ホテル越えとなるティショットは、少しでも右にミスすれば即OB。左に逃げればセカンドが200yd以上残ってしまうだけでなく、深いブッシュまで突き抜ける心配も出てきます。
ティショットが成功しても、縦長のグリーンは横幅が20ydもありません。そして、左サイドに口をあけるポットバンカー。1978年大会の3日目、首位タイだった中嶋常幸さんが脱出に4打を要して「9」をたたき、優勝争いから脱落。“トミーズバンカー”と名付けられた逸話は、あまりにも有名です。
タイガー・ウッズが初優勝して生涯グランドスラムを達成した2000年大会でも、最終日にデビッド・デュバルがこのバンカーにつかまって「8」を喫しました。まさに1打で出せればラッキー。グリーンと反対方向の後ろにも出せない悪いライに止まってしまうこともあるほど、厄介なバンカーなのです。
この聖地でつかむクラレットジャグには計り知れない価値があります。技術の進歩、道具の進化がゴルフのレベルを引き上げているのも確か。ありのままのコースが与える数々の試練に、選手たちがどう立ち向かっていくのか興味は尽きません。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。