背筋の凍る1年間 松山英樹は連覇かけ11度目のマスターズへ/独占告白
2022年 マスターズ
期間:04/07〜04/10 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
オーガスタはタイガー・ウッズが最高に映える場所
J.J.スポーンが前週「バレロテキサスオープン」で初優勝を飾り、7日(木)に開幕する「マスターズ」の最後の1枠を手中に収めました。これでフィールドが出そろった…と言いたいところですが、ことしに限っては状況が特殊です。昨年2月の自動車事故で大けがを負ったタイガー・ウッズが復帰する可能性があるのですから。
練習日とはいえ、オーガスタでボールを打つウッズの映像を見てテンションが上がったのは僕だけではないでしょう。いろいろなトーナメントで戦う様子はもちろん、アドレナリン全開で優勝する瞬間だって何度も目撃してきました。その中でもオーガスタでのウッズは別格。彼がコースにいるだけでパトロンの熱量が一気に上がります。2015年大会の最終日、赤いシャツと黒いパンツの勝負服姿をコースで見たときの高揚感は忘れられません。マスターズという最高の舞台がこんなに似合う人なんて、もう出てこないのではないか―。そんな思いを抱いたのを覚えています。
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コースを歩くとき、わずかにぎこちなさも残っているように感じますし、出場できるかどうかは予断を許さない状況。あの壮絶な事故から再びオーガスタの1番ティに立つ姿を見られるとしたら、世界中のゴルフファンにとって最高のギフトになりそうです。
そして、大会史上4人目の連覇に挑む松山英樹選手。約1カ月前に首から肩甲骨にかけて痛みを発症し、患部の状態が気がかりなところではあります。本人もチームスタッフも、できる限りの準備をして臨んでくるはず。ファンとしては信じて応援するのみですから、日本でもテレビの前から声援を送りましょう!
まずは松山選手自身が、ディフェンディングとしての1週間を少しでも楽しめる時間であってほしいと願うばかりです。有名なチャンピオンズディナーは、マネジャーも入ることを許されないクローズドな空間で催される夕食会。日本時間4日(月)の時点でメニューも発表になっていないため、日本人初のマスターズ王者がウッズら歴代覇者に何を振る舞うのか興味が尽きません。
オーガスタは本当に特別な場所です。極めて高いハードルをクリアしてメンバーとなるか、メンバーと一緒でなければ普段回ることもできないですし、観戦チケットの入手が難しいのも有名な話。コース内を走るのもNG。携帯電話の持ち込みを禁じる伝統を貫き、人々が公衆電話に列をなす現代では珍しい光景が見られたりもします。
ファンにとって胸が躍る非日常の1週間であるように、出場する選手たちもこの舞台に立つために戦っていると言っても過言ではないでしょう。4大メジャーの中でも、マスターズチャンピオンへのリスペクトは一段上というのがキャディとしてPGAツアーのロープ内を歩いていたときの肌感覚。ことしはそれが日本人であるという誇りもかみしめつつ、ゴルフの祭典を楽しみたいですね。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。