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進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

【進藤キャディ解説】シャウフェレ、松山英樹、マキロイ…大物のメダル争いが高める五輪ゴルフの価値

松山英樹選手は「東京五輪」のメダル獲得まであと一歩でした。僕がキャディをしていたときから東京でオリンピックが開催されることは決まっていましたから、彼がどれだけこの舞台にかけていたか、多少なりとも分かっているつもりです。本当に惜しかったですし、僕も悔しい気持ちでいっぱいになりました。

今週には早くもWGCがあり、さらにはプレーオフシリーズと大きな戦いは続いていきます。新型コロナ陽性となってからの復帰戦でもありましたし、必ずこの経験を糧として、秋の陣で爆発してくれると信じています。

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金メダルに輝いたザンダー・シャウフェレは素晴らしかったですね。松山選手と最終日最終組を回った「マスターズ」が記憶に新しいですが、いつもにこやかで周囲まで穏やかな気持ちにさせてくれるようなナイスガイ。柔和なイメージが強い分、今回の最終日はスタートから表情が少し険しく見えたのが印象的でした。

マスターズで松山選手の背中を捉えたと思った直後、わずかなショットのズレで敗れた記憶もあったからでしょう。無観客とはいえ、松山選手の“ホーム”である日本。同じ轍は踏まないという気合がみなぎっていました。

これまでのツアー4勝はすべて逆転でのタイトル。単独首位から並ばれる場面はありましたが、一度もトップの座を明け渡すことなく逃げ切りました。支えとなった強い気持ち。マスターズの“再現”となったペアリングがプラスに働いた部分はあったと思います。

「クラス11」と呼ばれる2011年に高校を卒業した、PGAツアーが誇る黄金世代の一角。ジョーダン・スピースジャスティン・トーマスダニエル・バーガーと実力者がそろい、シャウフェレも実績を積み重ねてきました。

メジャーでトップ10に入ること9回。特に「全米オープン」では2017年の初出場から5大会連続トップ10。これは7大会連続を記録した、あの「球聖」ボビー・ジョーンズ以来のことですから、非常に価値あるレコードです。

それだけ安定した成績を残していても、2年半もの間、優勝からは遠ざかっていました。日本での勝利が覚醒のきっかけとなったとしても、不思議ではありません。

再三紹介されていることですが、日本にも縁の深い選手です。祖父母が東京都の渋谷在住。台湾生まれ、日本育ちの母・ピンイーさんは日本語もペラペラ。スイングコーチである父・ステファンさんとシャウフェレ本人も少しだけ日本語が分かりますから、ツアー会場で会ったときには向こうから気さくに声をかけてくれる素敵な一家です。

キャディのオースティン・カイザーさんは学生時代からの親友。余談ですが、各選手の帯同キャディが腕を競う「ザ・プレーヤーズ選手権」練習日恒例、17番(パー3)のアイランドグリーンを使ったニアピン対決で優勝したこともある方です。家族や友人の献身的なサポートを受けるチームの結束力はPGAツアーで随一かもしれません。

2016年リオデジャネイロでゴルフが112年ぶりにオリンピック競技として復活して2大会目。正直に言えば、その位置づけは長い歴史を紡いできた4大メジャーには及びません。それでも、今回アイルランド代表として戦ったロリー・マキロイが話したように、国を背負って戦う4年に一度の舞台に対するトップ選手の心象が変化してきているのもまた事実です。

自国開催の期待と重圧を背負いながら、マスターズ覇者として堂々と戦った松山選手はもちろん、シャウフェレ、マキロイ、コリン・モリカワといったビッグネームが繰り広げたハイレベルなメダル争い。これを続けていくことができれば、おのずと価値は高まっていくはずです。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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