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進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

初タッグ蝉川泰果の驚異的な“嗅覚” 目の前で見た大親友・岩田寛V

「中日クラウンズ」で久しぶりに男子ツアーのキャディを務めました。国内男子は2018年「ダンロップフェニックス」、和合も10年前の13年以来ですから、時の流れを実感しますね。バッグを担いでロープの中を歩くのは懐かしさと同時に刺激にあふれていて、選手と一緒に応援してもらえるこの仕事の素晴らしさを改めて実感しました。

本当に久々だったので、書きたいこと、伝えたいことが山ほどあります(笑)。まずは予選ラウンドで一緒に回った石川遼選手について。いまもプレー映像はチェックしていますが、“対戦相手”として見たのは松山英樹選手と予選同組だった18年のフェニックスが最後だったと記憶しています。

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印象としてゴルフが洗練され、シャープになった感じを受けました。1Wを振り回すのではなく、リスク管理を徹底してムダなボギーを減らしていく。ゲームの組み立てを重要視していることが、傍から見ても伝わってきました。ラウンド後に何時間も打つこともあった以前に比べ、自分のスイングをコーチとタブレットで確認しながらポイントを絞って修正しようとする姿もひとつの変化。余分なものがそぎ落とされているという言い方ができるかもしれません。

初日18番で長いパーパットを沈めてガッツポーズを見せたときは驚きました。予選の段階から惜しい場面を大きなアクションで悔しがったり、人間味あふれる素に近い姿は、それだけリラックスしてゴルフに臨めている証しではないでしょうか。

次に優勝した岩田寛選手。東北福祉大の同期である大親友と、まさか最終日最終組でタイトルを争うことになるとは…。前夜に「あしたは恨みっこなしだね」というやり取りをして臨んだ日曜日は敵ながら本当に素晴らしいプレーをしていました。

優勝争いを意識してくる後半に抑えていた感情が出てきてしまうのでは、僕らとしてはそこに勝機があるのでは、と思っていましたが、やはり彼を支えているパッティングですよね。13番のパーパット、14番、15番のロングパット…。つけ入るスキがありませんでした。

17番のバンカーショットも驚異的。左のニアサイドに比べれば幾分“マシ”ですが、それでも非常に難しい左手前からの寄せです。2位の星野陸也選手がバーディチャンスにつけていたので、トラブルになれば逆転まであるかもしれないと思ったほど。“保険”をかけてピン奥3m弱に打ってくると予想していたら、土手でクッションを入れて「OK」に寄せるなんて…。星野選手もあ然としていました。

そして、何といっても今回初めてコンビを組んだ蝉川泰果選手です。実際にバッグを担いで、これからの日本ゴルフ界を背負っていく存在になると再認識しました。アイアンの球の高さとスピン量、アプローチやバンカーの技術…。勝負どころを見極める“嗅覚”も鋭い。

ボギーが先行した3日目の6番。セカンドの直前で彼が「ここ、勝負ですよね。絶対バーディを獲りに行きます」と言ったんです。実際にピンそば2mにチャンスメークして、難しい下りのスライスを決めきった。一気に集中力を高め、気持ちをスコアにつなげていくゴルフ。アマチュアで「日本オープン」を制した蝉川選手の底力を垣間見た瞬間でした。

日々の努力を怠らない姿勢もあっぱれ。毎日練習場がクローズするまで調整して、軽く夕食をとってからジムに行くんです。それでも、自分の目指す場所に対して、まだまだ足りないと必死に頑張っている。松山選手に通ずる部分を感じました。

勝てなかった悔しさでいっぱいですが、18番グリーンで岩田選手とハグしたときはこんな不思議な巡り合わせもあるのだと感慨深い気持ちにもなりました。今回オファーをくれた蝉川選手、キャディである僕にまで声援を送ってくれたギャラリーの皆さまに改めて感謝を伝えさせてください。7月には「全英オープン」を含めて海外で一緒に戦う予定ですから、もっともっと彼をサポートできるように僕自身も精進していきます。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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