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進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

オーガスタで見た馬場咲希の恐るべきポテンシャル

◇女子アマチュア◇オーガスタナショナル女子アマチュア 最終日(1日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇6310yd(パー72)

久しぶりのキャディ“復帰”ですごいプレーを見せてもらいました。「オーガスタナショナル女子アマチュア」でバッグを担いだ馬場咲希選手(東京・代々木高)が5位フィニッシュ。「マスターズ」直前のオーガスタナショナルGCで行われた最終ラウンドをベストスコアに並ぶ「70」で回りました。

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オーガスタ近郊のチャンピオンズリトリートで行われた予選ラウンド36ホールはショットの不調に苦しんでいました。悪いときほど成功体験で上書きしようとムキになり、さらに調子を崩していく選手も少なくありません。しかし、馬場選手は練習の打ち方ひとつとっても、イメージが悪くなりそうだったら、そのやり方をスパッとやめてしまえる決断力がある。自分を客観視した上でのゴルフに対する思考の“柔軟性”は、17歳とは思えないものがありました。

同行している父・哲也さんのサポートも大きいと感じます。技術面の助言とともに、「『100』を打ってもいいから一打一打、全部楽しもう。せっかくオーガスタを回れるんだから、へこんでる時間がもったいないよ」と声をかけていました。昨年「全米女子アマ」優勝で一気にハードルが上がり、周囲は常に結果を求めてしまいがちになるもの。一番身近な存在がそう言ってくれることで、本人も少し気持ちが軽くなったのではないでしょうか。

インスタートから最初のバーディを奪った11番は、池と隣り合わせの左のグリーンエッジから持ち球のフェードで攻めたバーディ。予選ラウンドでは、なかなか打つことができていなかった球です。続く12番は風が舞って読みづらく、オナーでは打ちたくないクリーク越えの難関パー3。8Iでもいい距離なのですが、アゲンストにぶつかれば最悪の結果もあり得ます。7Iで距離感をしっかり合わせた素晴らしいショットでした。

左サイドに池が広がる16番(パー3)、実はタイガー・ウッズが2005年のマスターズ最終日に奇跡のチップインを決めたときと同じピン位置だったのです。8Iのフェードを右からの風にぶつけ、ピン右の傾斜を使って数十センチにピタリ。前日だけの練習ラウンド、まさに一発勝負で狙い通りの一打を見せてくれたのですから、胸が熱くなりましたね。

1Wのティショットは、ほぼノーミス。ティが前に出されても、やっぱりマスターズ同様に狙いどころが狭い18番や難しい7番も完ぺきです。飛距離は予選ラウンドから“1割増し”で、ひと番手分は飛んでいました。予選の調子を考えれば、むしろ末恐ろしくもあります。

飛距離や球の高さといったショット力は、かねて注目されてきた馬場選手のストロングポイントでしょう。一方でキャディとして一緒に戦って実感したのはアプローチのレベルの高さです。予選のチャンピオンズリトリートも、スティンプメーターで13フィートという高速グリーン。2日目の17番(パー3)では右手前ピンのニアサイドに外し、上って下る非常に難しい寄せを残しましたが、しっかりとパーを拾いました。日本とは芝も異なる中で適応できる打ち方をしているのは、世界中で戦える彼女の土台といえるかもしれません。

いずれメジャーを獲って“世界のババ”になっていくポテンシャルを見せつけてくれた3日間。オーガスタという最高の舞台だからこそ、技術に限らず、ゴルフの幅も含めた総合力の高さを堪能することができました。

僕にとっては、靴擦れを起こし、肩がショルダーベルトに真っ赤になり、朝目覚めても疲れが抜けずに栄養ドリンクが欠かせない3日間。自分の“ブランク”、キャディの仕事の大変さを改めて実感しつつ、そんな疲れも吹き飛ぶような馬場選手のスーパープレーを目撃できたことに感謝しかありません。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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