【WORLD】メジャーにドライバーは必要ないのか
Golf World (2012年6月11日号) texted by Goeff Shackelford
1998年の大会でペイン・スチュワートを下して優勝したジャンセンは、フェアウェイキープ率で3位タイだった。ジャンセンは最近になって、オリンピックではうねるフェアウェイにボールを置くため、両サイドのラフから2、3ヤードくらいのところを狙っていたと語ってくれた。
「以前の4番ホールでは、左のラフまで2ヤードくらいのところに持っていくと、フェアウェイ右サイドで止まった。その感覚を掴む為に、毎日2ヤードの細長い場所に打つ練習をしていたものだ」。
今年の全米オープンでは、この4番ホールでのドライバーの使い方が重要になるとみられている。アーウィンが語っていたように、左にシャープなドッグレッグのこのホールは、リスクを選択することで得られるものも大きいからだ。仮に飛距離の出るドローを打つことが出来れば、ティからは見えないグリーンに近い位置にまで持っていける。しかしそれを保守的に3番ウッドで打てば、このホールはモンスターとなってプレーヤーに襲いかかってくるだろう。しかしアーウィンの予想では、「今年は恐らく、ティの位置を変えなければ、プレーヤー達は3番ウッドすら打つことはないだろう。ハイブリッドなどが多くなるかもしれない」としている。
チャンピオンシップ委員会に属するトム・オツールとジェフ・ホールの推薦もあって、全米オープンのコースのスーパーバイザーを務めているデイビスも、昨今ドライバーを使用する選手が減少している問題を気にかけている1人だ。
「これは、パーシモン、それにバラタボールの時代からトピックの1つになっている。大型ヘッドドライバーのときも同様だ。問題点は、いかにしてロングホール攻略の術を組み立てるかということ。その戦略の中にドライバーが入っているかも大事だね。例えばショートヒッターがドライバーを使い、ロングヒッターだと飛びすぎるというホールが数ホールであれば問題ないだろうが、ロングヒッターが何の恩恵も受けないということが続くようであれば、選手を試すという視点がずれていると思う」。
デイビスがオリンピックの中でも特にエキサイティングとしているのは、新たに設置されたティを使用した670ヤードの16番ホールで、最低でも2回はそのティグラウンドが使われることになる。16番は、オリンピックの中でも大会を左右すると言われている為、見物になりそう。しかし、ティを追加したことで、大会中に選手たちが混雑をきたすことが避けられそうにないなどのマイナス面も心配される。こうした問題が大会管理者にとって、クラシックなコースにおける現代のメジャー大会開催を難しくさせている要因でもある。
それでもアーウィンは、昨今の大会でドライバーの使用度が低くなっている現状を憂い、「ボールがどれだけ遠くに飛ぶかというシーンが最近の大会では失われてしまっている」、「何かを変えなければ」と危惧している。
一方、デイビスはアーウィンのように現在の潮流を不安視するのではなく、オリンピックでも昨年の王者ロリー・マキロイが取ったスタイルのように、今後は多くのホールでドライバーが使われるようになると予想。メンテナンスオペレーションディレクターであるパット・フィンレンが言うように、一般的にレイクサイドのコースは固く、速いコースになるだろうが、デイビスは最近2大会のような展開にはならないだろうとしている。何故なら、フェアウェイにライグラスを多く使用し、ストレスの原因ともなるポアナを減らしたから。ライの方が全米オープン時期に排水効果を発揮し、葉により多くの水分が含まれるからだ。こうした変化、そしてフェアウェイの外形により、6、7ホールはドライバーを使用するのに適したものになるだろうと語っている。
14ホールはドライバー使用に値するホールがあった当時と比べれば物足りなく聞こえるだろうが、2013年大会が開催されるメリオンと比較すれば数は多い。メリオンを知っている者であれば、ランディングエリアが著しく狭く、最低でも3ホールは、ドライバーを使うことがリスクになるというプレッシャーに苛まれることを知っているはず。こうした傾向は、とてつもない強風という気象条件を除き、全英オープンが開催されるロイヤルリザムでも共通して見られるだろう。
「メリオンで全米オープンが開催されると知って、選手権委員会に問題提起した」と語ったデイビスは、未だにUSGAはその気になれば、ロングホールはさらに長く、短いホールはより短くできると信じている。
デイビスはメリオンが選手を試すコースとしてふさわしいことを擁護しながらも、段階的に深さが変わるラフと、最近の哲学であるランディングエリアを広くすることで、プレーヤー達がリスクを取ってプレーするアイデアを捨てていると指摘する。そして断言はしないが、やはり距離不足のメリオンは、現在の大会を開催するには特別な措置が必要であると認めている。