WORLD

【WORLD】2012年シーズンは悲劇の応酬

2012/12/26 12:25

Golf World(2012年12月4日号)texted by Bill Fields

最終日、最終ホールのグリーンで今季は何度うつむいたことか・・・J.フューリックの悲劇のシーズンはライダーカップが締めくくりに。(Jamie Squire/Getty Images)

話は「全英オープン」に移る。プレーオフに持ち込むという展開こそ、スコットにとって最悪のシナリオになってしまっていたのかもしれない。ロイヤルリザムでの最終日、15番ホールのティに立っていた時点で2位と4打差の首位。初のメジャータイトル獲得が間近に迫っていた。愛想の良い32歳のオーストラリア人は、3日目まで64、67、68と絶好調。ウッズも最終ラウンドでパットミスを連発して順位を落としていた為、チャンスは十分にあった。

15番のティショットも成功し、スコットはメジャー勝利の歓喜に近付いていたのだが、計画は崩壊を始めていく。15、16番ホールを連続ボギーとし、あれだけ余裕のあった状態から一転し始めた。そして17番ホールでは、6番アイアンで放ったショットが大きく、左に外れてしまう。結果3連続ボギーとなり、アーニー・エルスが18番をバーディでフィニッシュ。スコットがプレーオフに持ち込む為には、パーでフィニッシュする必要があった。しかし、迎えたティショットをバンカーに入れてしまい失速。決して起こらないような筋書が仕上がっていたかのように、2.7mほどのパーパットはカップに吸い寄せられず。クラレット・ジャグは、好機を逃さなかったエルスの手に渡った。

厳しい試練に打ち勝ち、メジャー勝利を目前にしたが、何も得られずに終了。16番ホールまでリードを保ち、最高峰の大会で頂点に近づいた。力強いスイング、そして魔法の杖でパットをするかのようにスコアを伸ばし、終盤までリードを保てていたことを考えても、大きな勝利を手にする運命にあったと誰もが思っただろう。だが、期待が高かったことの代償も大きく、ゴルフでは頻繁に見られる終盤の連続ボギーで失速したのだった。

イングランドでスコットが経験した苦境は、他のシーズンと比較しても、男子ゴルフツアー史に残る敗戦となったかもしれない。そしてまた、フューリックにとっての2012年も、十分過ぎるほどの悲しいストーリーにまみれていた。変則ながら効果的なスイングを持つ、ペンシルバニア出身のストイックな42歳は、チャンスのあったすべてのゲームで勝てていれば“ドリームシーズン”となっていたに違いなかった。「全米オープン」、「WGCブリヂストンインビテーショナル」、そして「ライダーカップ」。それぞれ終盤にミスしていなければ、3大会で勝利という結果となっていたかもしれなかったのだ。

オリンピッククラブでの全米オープン最終日、残り3ホールとした時点で首位タイをキープしていたフューリックは9年ぶりの同大会優勝の可能性が見えていた。しかし16番ホールのティショットで3番ウッドを選択すると、フックしたショットは、1966年の全米オープンでアーノルド・パーマーが放ち、犠牲となった一打に酷似していた。17番パー5でバーディを取れていれば、連続ボギーを相殺できたものを、それも失敗。首位に並ぶには絶対に18番でバーディを取らなければいけない状況の中、ウェッジでのショットをミスし、万事休すとなった。

また、ブリヂストンでの失墜は突然の出来事だった。ファイヤーストーンCCでの最終日最終ホール。パーで優勝が決まるところだったが、なんと痛恨のダブルボギーを叩き、優勝はキーガン・ブラッドリーのものに。

「冷酷な結果だった」と後に語ったフューリックだったが、さらにその翌月にはライダーカップで辛酸を舐めることになる。アメリカ代表の中でも、追い上げを見せる欧州勢を食い止められる数少ない選手とみられていたが、メダイナカントリークラブでの最終日、セルヒオ・ガルシア(スペイン)とのシングルマッチプレーではボギーを続けて1アップで敗戦。最後のパットをミスした直後、あまりのフラストレーションに頭を垂れ下げて悔しさを露にした。その光景は、アクロンで勝利を逃した瞬間と重なって見えた。

Golf World(2012年12月4日号)texted by Bill Fields≫
1 2 3 4